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砂漠とGRと漫画と

ベトナム中部にあるダナンという街は、韓国人観光客がたくさんいる。

日本人観光客が少ないこともあってか、街を歩いていると客引きのベトナム人から「アニョハセヨ」と声をかけられるぐらいだ。

ダナン滞在中のある夜、ベトナム対韓国のサッカー試合があり、街は興奮と熱気に包まれていた。ぼくは夜市でバーバーバーを飲みながら街の喧騒にカメラを向けていた。

試合が終わるとベトナム人グループとぼくの近くにいた韓国人グループがトラブルになった。

ベトナム人グループは棒を手に持ち、韓国人グループはイスを持ち一触即発状態だった。

日本だと「なんだコラ」「やんのかコラ」「やってみろよコラ」「あぁ?なんだコラ」のループじゃないですか。ですます調がコラ調になる。

ぼくはバーバーバーを飲みながらコーラ&レスポンスとは違うなぁと思いながら眺めていたのだけど「あれっ?オレも韓国人に見えるんじゃね?」とふと気がついた。

なんならこの店も「アニョハセヨ」と声をかけられて入店している。

バーバーバーの酔いがさめて、冷や汗がでてきた。心拍数も上がっている。これはヤバい。シャッター押してる場合じゃねえ。

ぼくの英語力では「アイムジャパニーズ」がたぶんベトナム人に通じない。義務教育訛りの英語と、ベトナム訛りの英語はまったく別物だ。

こちらはI'm fine thank you. And you?の国からきたのだ。

And you?っていつ使うんだ。
逆に使っちゃいけないだろうSit down.を習う国からきたのだ。

ぼくは店の向かいにあった観光客向けのTシャツ屋に飛び込んで「I ♡ VIETNAM」と書かれたTシャツを買った。世界中の観光地で売ってるアレだ。たしか10万ドン(日本円で500円ぐらい)だったと思う。

50万ドン紙幣を渡してお釣りを受け取るより先に、着ていた服を脱ぎワンパックやわらかめに育て上げたお腹と背中の和彫りを見せつけてI ♡ VIETNAM Tシャツに着替えた。

下手な英語で日本人アピールするよりも、ベトナムへの愛を表現したほうがいいと考えた。

我ながらいい判断だ。だけどあわてていたのか、ちいさいサイズのTシャツを選んでしまった。

I ♡ VIETNAMピチTシャツを着て、逃げるようにホテルに戻りピンチを乗り越えた。九死に一生のピチTだ。

トラブルになっていた韓国人グループがどうなったかわからない。

伊豆大島のお土産屋さんでI ♡ OshimaTシャツを見かけて、ダナンの夜を思い出した。東京の離島、伊豆大島にきた。とくに目的はない。

やわらかめのお腹は本当だけど、本当は背中に和彫りはない。

写真がにじむ。

どこのお店もエアコンが効いていない。冷室育ちの軟弱者にはつらい。離島ならではの感染症対策なのか、窓をあけて扇風機で換気しているお店ばかりだ。

そういう習慣なのか電気代の節約なのか、高齢者が多く暑さを感じないのか、エアコンを使っていても弱くてとにかく暑い。

暑いとストラップを肩にかけてカメラを持ち歩くことすらウザったいけど、今回はRICOHのGRiiixを持ってきたので正解だった。

GRiiixを40mmっていう人がたくさんいるけど、これは26.1mmだ。焦点距離を0.1mm単位でまでカメラに表記しちゃうぐらい本気の26.1mmだ。

40mmはフルサイズに換算したときの画角だ。画角は写真が写る範囲で、焦点距離は写真の写り方だ。写る範囲の画角はトリミングしたらいくらでも変わるけど、写真の写り方の焦点距離は変えられない。

iPhoneは広告で26mmっていってるけどiPhoneの焦点距離はせいぜい6mmぐらい。だってiPhoneの厚み8mmもないやろ。本当に26mmあったら物理的に2.6cmの厚みは必要になる。

iPhoneの26mmとGRiiixの26.1mmは全然違う。焦点距離の差が写真に反映される。簡単にいえばGRはiPhoneよりも圧倒的に写真がいい感じに写る。

このへんを理解してない人がスマホのカメラをレビューすると「85mmの望遠で撮れます!!」みたいなことをいって誤解を招く。

GRiiixは26.1mmあるけどコンパクトさからスマホ並の運用ができる。ここがGRの最大の強みだと思う。最大の弱みはピントが合わん。ピントはあきらめよう。カメラはすべて一長一短なのだ。

伊豆大島にはGRの新製品のHDFをもってきた。

HDFはHighlight Diffusion Filterの略で、写真の中の明るいハイライトのところを拡散させるディフィーズフィルターがカメラ内に搭載されている。だから写真の明るいところがにじむ。

ウルトラカラーの119を照明にかけたときとおなじぐらいハイライトがにじむ。

ブラックミストのフィルターみたいのが好きな人はHDFがいいんじゃない。GRのHDFはボタンひとつで瞬時にオンオフできるし。


GRはピントが合わない。そういうもの。
花がにじむ。

離島にかぎらず旅先にあるスーパーは地元ならではの商品があっておもしろい。くさやはくさい。ほぼウンコの臭いがする。

離島だけど全体的に商品の値段は高くない。ガソリンはレギュラーが203円だった。

郷土資料館や博物館もいい。街の歴史がわかる。パチンコ屋さんはほぼ100%地元の人しかいないからおもしろい。

パチンコには興味がないので1000円だけやる。今回は大勝ちしたけど、よく大勝ちしてる。

海がきれい、光がにじむ。
にじむ。
暑すぎて動物がぐったりしてる。
椿園にきたけど、椿は冬の花だった。
火山の待避壕、ちょっと涼しい。
海が見えた瞬間に気分が上がる。
ニョッキリした岩がある。
旅は単眼鏡を持っていくのがおすすめ。
ニョッキリした岩の近くにサーファーがいた。
ニョッキリした岩まで歩いた。
にじむ。
にじみすぎだ。

カメラを買うとついカメラに便利なモノを買いがちだ。カメラには便利だけど汎用性が低いので、日常品をカメラに流用したほうがいいと思う。

虫メガネや老眼鏡があればマクロ撮影ができる。

望遠レンズを買うなら単眼鏡を持ってたほうが景色が眺めるし、博物館や美術館やコンサートでも使える。

もちろん写真の質は下がるけど、カメラやスマホの画面はドットのデジタルと違い、単眼鏡は光学ガラスなのでクリア感が全然違う。たまに使うと感動する。

カメラの交換バッテリーもモバイルバッテリーでスマホもカメラも充電できたほうが便利だ。

カメラなんて電源切ってる時間のほうが長いんだから充電できるよ。とくにGRみたいなカメラなら。

カメラ関連のモノで3万円って予算としてはちょっと低いんだけど、日用品で3万円ならそれなりのモノが買えますよね。

望遠レンズで3万円だと品質は下がるけど、単眼鏡で3万円だったらかなりいい物が買える。

もちろん仕事の人は別ですよ。だけど旅行にカメラをチョロっと持っていく程度の使い方の場合は日常品をカメラに流用するぐらいでいいと思う。

スーパーでレモンとロックアイスを買う。
旅はいつもよりちょっといいコーラにする。
島のべっこう寿司。ちょっと辛い。
寿司屋の入り口に水中カメラがあった。
店主に聞いたら貰ったらしい。

お土産屋さんでアイスコーヒーを飲んでいたら『これ描いて死ね』という漫画を店主にすすめられた。

女子高生が漫画を描く話なのだけど、伊豆大島が舞台だ。

女子高生×〇〇みたいなものに興味がなかったけど、マンガ大賞を受賞したと店主がたたみかけておすすめしてくる。

せっかく伊豆大島にいるし、店主がそこまでおすすめするなら……とKindleで買って読んでみたらこれが素晴らしくおもしろい。

何かしらの作品をつくる人はみんな読んだほうがいいんじゃないかな。みんなそれぞれ自分の分野に通じる話ばかりだと思う。

写真をやってるとつい写真の勉強しがちだけど『これ描いて死ね』を読んだら「あぁ、漫画も写真と一緒なんだ」って気づけると思うんです。気づけると写真の勉強が広がります。

伊豆大島ロケでおなじみ砂漠にきた。
蜂がたくさんいた。強風で飛べないみたい。
古き良きパワーウインドウが故障したエクストレイル。窓を開けたら閉まらない。
夜になると道がカエルだらけになる。
早朝はキョンと猿とリスだらけになる。
星がよくみえる。冬の新月にまた来たい。
霧が濃くなってきた。

日本で唯一の砂漠が伊豆大島にある。鳥取砂丘は砂丘だ。夕方に砂漠を眺めて、夜に星を眺めて、月明かりで山を眺めた。

伊豆大島にはキョンという子鹿みたいな動物がたくさんいる。月明かりで山を眺めているときにすぐ近くでキョンが叫んだ。

キョンは楳図かずおさんの漫画に出てきそうな叫び声で鳴く。心臓が弱い人は心臓が止まるかも。

翌朝また砂漠にいった。夕方が逆光だったので、朝になれば順光になる。

パチンコで大勝ちしたお金はぜんぶ伊豆大島で椿油にした。お昼すぎにフェリーに乗船する。フェリーで『これ描いて死ね』を読んで泣いた。

椿油であげた天ぷらを極上の天ぷらという意味で金ぷらというらしい。

伊豆大島の人も天ぷらが椿油のいちばん贅沢な使い方だといっていた。実際に金ぷらを食べたのだけど、天ぷらとは別物。金ぷらという名前になるだけある。美味い。

今度は八丈島に行こうかな。GRだけ持って。

サポートされた資金で新しい経験をして、それをまたみなさまに共有したいと考えています。