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エブリスタでプチバズリした

公募に出す原稿は、編集部へ提出してしまうと、しばらく日の目を見ない状態になる(公募によっては、そもそも一度でもウェブに公開したものは受け付けてくれない。ウェブ公開OKのところでも、選考期間中は非公開化が義務付けられる場合が多い)

商品になるかもしれないものだから、権利関係を綺麗にしておきたい、タダで見せちゃったものを後から金取りづらいとか、色々事情があるだろうということは分かっている。とは言え、作家の心境として、見せたがりの私としてはそれが寂しく、第一稿ができた段階で見切り発車でウェブに載せている。(並行して、裏では、公募に出すための推敲・校正を実施している。)

7月13日の夜に完結した中編(5万字弱、全26話)『インターンシップは恋の魔法』が、軽くバズった。以下は、日間トレンドランキング・BLカテゴリでの順位の推移。ネットで小説を公開するようになって三年ほど経つが、これはBLという激戦区では自己ベストだ。なので、なぜこれが起きたかを自分なりにまとめてみた。

  • 7/14(金):31位

  • 7/15(土):9位

  • 7/16(日):3位

  • 7/17(月):4位

バナー画像は「4位」じゃねえか、って?
昨日は終日外出していてスクショが取れなかったんですよ(テヘペロ)


まず前提:他の上位者とはバズリ方のレベルが違う

上位の方は画像ぼかさせていただきましたが、気になる方はエブリスタで直接確認いただけば「ああ」と分かるかと思います。私以外は、エブリスタやウェブのBL小説が好きな人なら誰でも知っている有名作家さんだと私は思います。ブックマーク数:数千、スター数:一桁万個、と、ぶっちゃけた話、私とは桁が違います

とは言えプチバズリした。その理由(自分なりの考察)

  1. タイミング。新規完結作品は、サイトトップで目立つ位置で表示される。人が娯楽を求める三連休前に完結したため、「最近完結したばかりの作品」として多くの人に見てもらえた。ネットの投稿小説は8~9割がエタる(未完結のまま長期放置される)というデータがあるほどなので、完結している作品はネットで価値が高い。なので、完結直後は「完結ブースト」「ご祝儀」でアクセス数やブックマークが急増する。かつ、それが連休と重なると効果がデカいことは経験上知っていた。なので、三連休前に完結することを見計らって連載を開始していた(原稿が大体できてから開始した強みでもある。この辺は、戦略があった)

  2. ジャンル。業界的にファンタジーやオメガバ等の特殊設定モノが大隆盛で、商業公募でもそちらのニーズを感じる今日、多くの作家がそういう作品を書いているが、本作は敢えて現実の現代日本を舞台にした正統派(って自分で言うな)お仕事BLだったことで、根強い「お仕事BLファン」「リーマンもの好き」の注目を集めることができた。今は最先端ではないかもしれないが、こういうのが好きな読者層は根強い。

  3. 読者への訴求点を明確にした。商業BLの公募応募用紙には「端的にこの作品のテーマを書け」という欄がある。そこには「○○な攻め×△△な受けの◇◇ストーリー」といったテンプレを書かなければいけない。当該欄への記載を念頭に置き、ウェブ公開時から、「カリスマゲームベンチャー社長男前攻め×ゲームデザイナー志望の内気な学生インターン受け 秘密のオフィスラブ♡」と書いた。BLポータルサイト「ちるちる」の詳細検索画面(※R18内容含まれますので、このページにはスクショ貼りません)では、細かな攻め・受けの属性を指定できる。すなわち、BLにおいては、攻め・受けの人物像・キャラクターが読者の眼鏡に適うかが大きな役目を果たす。

  4. ネット小説読者層の大半にとって、羽多奈緒という作家が目新しい。ありがたいことに、エブリスタだけで私という作家をフォローしてくださっている方は120人以上います。とは言え、エブリスタの普段のランキング上位って、だいたいいつも同じ顔ぶれなんですよ。それが良いとか悪いを議論する気はありません。そして、そのような作家さんたちには数百人~数千人のフォロワーさんがいます。なので、普段私を応援してくださっている読者さん以外の多くの方に「どんな人なんだろう、どんなお話を書いているんだろう」と興味を持っていただいたのではないかと想像します。特に小説家になろうで話題になった事象として「スコッパー」、まだ世に知られていない良い作家を自らの手で発掘したい、まだ読んだことないけど良い作家がいるなら読みたいという欲求はあると思うので。よって、「いつもと違う見慣れない顔がある」「読んでみよう」となったのではないかと想像しています。

  5. 「7月末までの期間限定公開」だとうたっている。今しか読めない希少感がある。事情通なら、「あっ……、あの公募に出すつもりなのかな」と分かる人もいるだろう。同じ公募勢として、ライバルがどんな作品を書いているのか気になって、読みに来ている例もあるかもしれない。(ただ、現行版を支持くださった読者様の手前、あんまりハッキリは言っていないが、公募に出す原稿は、今掲載しているものからかなり変える予定です)

ネットでウケる小説と商業で評価される小説は違うという説について

樋口美沙緒先生という、投稿者にとっては神々の領域に近い商業BL小説家(最近はBL以外の作品も上梓されている)が書かれたコラムには、下記のようにありました。

ネットで人気の小説、ランキング上位の小説が必ずしも技術的に上手い小説、というわけではない(中略)ネットだと下手に技術がある小説だと、逆に読んでもらえない、なぜか敬遠されることがある気がします。これはなんでかというと、重たいからじゃないか

樋口美沙緒「小説書こうよ!」

これは確かにある一面、そうだろうなあ、と、好きな商業BL小説を写経するまで読み込みながら、ネット作品・ネットから書籍化された作品も読む私も思います。

私自身はネットでバズって書籍化というのは目指してません。
(※ネットでバズって書籍化した方の実力を云々議論する気はありませんし、ネット発の書籍化と、公募受賞でのデビューに優劣をつけるつもりもありません)

ただ、私が求めているのは、実力を付けて息長くやっていけるプロを目指したいということだけなので、「ネットに載せるから」と言ってネット用にウケるように、ネットランキング上位作品を研究して合わせたとかは、一切してないです。(ぶっちゃけ公募に出す作品を磨き上げるのに必死で、それ以外の余力がない

強いて言えば、行明けは、少しウェブでは増やしてます。
紙の公募に出す原稿をそのまんま貼り付けると、画面が黒ーくなって、圧がすごくなるので(笑)

結果として、たまたまいくつかの要因が重なってラッキースケベならぬラッキーパンチでプチバズリはしましたが、それを最初から狙ってはいないです。

しつこいですが、ネット小説でバズるというと、私とは桁の違うレベルのPV・ブクマ・評価が付くものなので、これはあくまでマイナー作家群の中では一時的に脚光を浴びた以外の何物でもないと思っています。そして、ウェブ小説を読む読者さんの中には、「商業も読む」という方もいらっしゃって、なんていうか、ただ軽いだけのものじゃないものが好きだという方、読解力が高い方もいらっしゃることを日々痛感しています。

ただ、私の書くお話が好きだと思ってくださる方が増えるのは嬉しいので、ランク入り作品を読んでいただけるだけでも光栄ですし、さらには、既存の他の作品を読んでいただいたり、作家としてフォローいただける方が増えたのは素直に喜んでおります。

いずれにせよ、まだまだ腕を磨いていきたいと思っておりますので、今後も応援いただけたら嬉しいです。

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