チーズナンに夢中

自戒を込めて　by 私

ある既婚者の先輩が、ある種の気の迷いのことを「そいういうのはもう病気だと思っている」と頭を指さし神妙な顔で語り、私は大いにうなずいた

私もかつて恋に落ちたものがある

それは、インドカレーについてくるナン

インドカレーに「ついてくる」なんて言い方をして、いいえ主役はカレーのほうですよという含みをもたせることで、密かな恋心が別に上手く隠せないくらいには奥手な私です

幼少期からカレーは好物ではなく、給食でカレーのおかわりを賭けたじゃんけん大会が始まったときも、仲間が集まりココイチカレーの好きなトッピングのランキングが発表されているときも、「え、唐揚げのほうがうまくね？」と冷めた目が悟られないように別の景色に目を泳がせた

食卓に並んだ夜ごはんがカレーだったとき、あからさまにがっかりした顔をして「嫌なら食べるな」と何度も母親に言わせたことは少し反省している

そんな私がインドカレーと出会ったのは大学生の頃

何となく「家の近くにあるけど1度も行ったことない」という私の一言のために、仲良くなり始めのまだ微妙な距離感の友人と訪れることになったインドカレー屋

一目見て好感が持てた

食卓カレーにありがちな、ゴロゴロした人参やじゃがいも、硬そうな肉が入っていない

一口食べて理解した

これが！みんなが好きな！カレーか！！！

ほぼ液体のカレーに申し訳程度に数個入ったホロホロほどける小ぶりなチキン（ここは鶏肉と言わずにメニューに書いてある通りにチキンと言いたい）、ほんのり甘くふわふわした薄い生地の焼きたてあつあつナンとの出会い

秒で虜になった

カレーは！ナンを食べるためにある、、！！

それなのに、そうなのに、カレーとナンのセットで1000円を軽く超えるインドカレー屋へ、学生のお財布事情では再び訪問することはなく、数年間は丸亀製麺ばかりに通い詰めることになる

恋も食にも不器用なのだ

ところが数年後、外出する気力も体力もない昼下がりに、気になるあの子と再会してしまうのである

事のはじまりはいつだってある日常の昼下がりなのだ

なんとか食事にありつきたいとインストールした宅配アプリに、なんとも懐かしいあの子達の写真が多いこと多いこと

タピオカの次はインドカレーなの？！マリトッツォじゃないの！？

流行りの情報源がLINEニュースの私は戸惑った

「30％割引キャンペーン中」

割引キャンペーンに誘われて、ランチセットをポチりとし、数年越しの再開が果たされた

バターチキンカレーとナンのランチセット

記憶の片隅にあった強烈なあの日の思い出の再燃と、成熟した魅惑の味にずっぷりとのめりこむのにそう時間はかからなかった

そうして遂に出会ってしまった禁断の味

チーズナン

悪魔的なビジュアルに期待を裏切らない甘じょっぱい甘美味さ

禁断の果実よ、、悪魔の実よ、、ドラゴンボールよ、、、

あぁ、、許しておくれ

私は、そう、あのときからずっと

そうずっと、、今も

ダイエット中なんだよ、、、、、