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20.03.21石井慧介vs岩崎孝樹/ナメられないガンプロとは。

 石井慧介が持つインディペンデント・ワールド世界Jr.ヘビー級王座への挑戦を表明すると、岩崎孝樹はDDTの“大社長”高木三四郎に「試合を見に来い」と噛み付いた。
 高木はインタビューで「DDT、ノア、東京女子プロレスを大きくする」と語っていた。なぜかそこに、石井と岩崎が所属するガンバレ☆プロレスの名前が入っていない。東京女子と同じDDTグループのブランドなのに。興行数や観客動員では東京女子の方が上ではあるけれども、名前も出してもらえないとは。
 実は筆者が高木にインタビューした際もガンプロの名前が抜けていて、原稿にする時に書き足したことがある。それはそれでゲラチェックでOKだったので、意図的に無視してるわけでもないのか。いや「うっかり」なら、それはそれでガンプロ勢とそのファンは気分が悪い。結局、以前からの「ガンプロ、大家健、今成夢人はナメてかかっても構わない」みたいなノリは変わっていないのか。そう思ってしまう。
 そういうムードも含めて、岩崎は噛み付いたのだと思う。彼と石井はガンプロ移籍以降、常に「他団体にナメられたくない」と言ってきた。「DDTにだってナメられたくないんですよ」と岩崎。
 岩崎の地元・北海道での師匠は、かつてUWFインターナショナルやリングスに所属したヤマケンこと山本喧一だ。UFC-JAPANのトーナメントで優勝した時、ヤマケンは先輩である田村潔司にケンカを売った。筆者はその様子を記事にして、本人にインタビューもした。
 それから21年経って、今度はヤマケンの弟子が「上」に噛み付く姿を取材している。そんなところに感慨もあった。岩崎にそれを伝えると「向こうっ気の強さは師匠譲りですから」と言った。
 3月21日のガンプロ板橋グリーンホール大会。石井と岩崎の試合は、彼らならではの激しいものになった。タッグを組んできた2人の信頼感がもたらす激しさだ。岩崎は思い切り蹴り、石井はやはり、人を人とも思わない攻撃を繰り出した。
 場外、エプロン、会場のステージでも闘いは続き、最後は石井が両腕極めドライバーの新バージョン「両腕極めドライバーTURBO」で3カウントを奪った。敗れた岩崎は「勝つまでいきたい」と悔しさを露わにしたが、手応えもあったようだ。
「俺たちが門番っていうか、どんなヤツが来ても弾き返してやるっていうのが常にありますんで」
 ガンプロの若大将を名乗る岩崎だが「大将にならなきゃいけない」とも。そして高木三四郎には、あらためて「俺らの熱を生で感じてほしい」。もっと発言していけるシチュエーションを自分で作っていきたいという言葉もあった。「凄く頼もしい後輩になった」というのは、勝った石井のコメントだ。
 その石井は、大会のエンディングで大家にマイクを渡す際「そろそろガンプロ、勝っていきましょうよ。うだつを上げましょうよ」と訴えている。この日のセミでは坂口征夫率いるEruptionとの対抗戦もあった。ナメられてはいけないし、勝たなくてはいけない。その思いは常に変わらない。
 また石井は「(岩崎戦は)ガンプロユニバースとの闘いという意味もありました」と言う。「思い入れという部分では(自分たちは)大家、今成、勝村に劣っている。僕は自分がガンプロのエースだと思ってやっているので」
 石井、岩崎、勝村周一朗、翔太、今成夢人。彼らの闘いが生み出す熱は、それこそどこに出しても恥ずかしくないものだ。もはやガンプロは大家健だけのものではなく“それぞれのガンプロ”がある。
 弱くて、うだつが上がらなくて、ナメられて。それでも泣きながらあがく。いつか勝ってやると叫ぶ。それがガンプロだった。しかし旗揚げから7年。「あきらめない」のはいいが、初期のガンプロイズムを貫くのは負け続け、うだつが上がらないままだということ。冷たく言ってしまけば、何にも成長していないことになる。それじゃダメだろうと石井や岩崎は言っている。かつて勝村が反旗を翻した理由も同じだ。藤田ミノルもそうだった。
 じゃあどうする。変わるのか変わらないのか。勝てるガンプロ、ナメられないガンプロに変わると、これまでの愛すべき“ガンプロらしさ”とは決別しなければいけない。変化した上で残る(残さなければいけない)“ガンプロらしさ”がどんなものかも考えなくては。
 いや、これメンドくさい作業だとは思うのである。でもメンドくさいことをやるほうが、たぶん未来がある。どうするガンプロ。興行再開を待つ。
 
 

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