ソラマメ好きな妹のために八百屋さんに文句を言いに行った祖母の話
ひと月前のまぼろしの枝豆から豆つながりで思い出した祖母の話。
祖母は孫を大変可愛がっていたため、
「美味しいね」
と喜ぶ顔見たさに大量調理をしてしまう。
天ぷらではバトルを繰り広げた妹にも、それは例外ではなく妹が「ソラマメ」が好きと言えば、八百屋さんで大量に買い込んでくる。
大皿にドンと盛られた塩味のソラマメは美味しいが、夕飯が食べられなくなるほどの量を茹でてしまうのだ。
母は見えないようにそっとため息をつき、「出来立ては美味しいわねぇ」と心から喜んでいるかのようにパクパクと食べる。
その後に本当の夕飯が出されるため、食べるのが本当に辛そうだった。
じゃあ、食べなければいいのにと後でいうと
「これが上手なおばあちゃんの操縦方法なの」
と母は自画自賛していた。母の発言も大量買いと大量の料理へとつながっていたので、間違った操縦方法だったのではないだろうか?
うちの家族は自画自賛しあいながら楽しく暮らしてきたのだと、noteでネタにする度に実感している。
ソラマメが大量に茹で上がった時の妹の反応に話を戻そう。
「うわぁ~い!やったぁ」
素直に喜ぶ妹に祖母はホクホクだ。
私は小学校高学年から人並みの食欲となり、中学以降は人並み以上の食欲を発揮するようになったが、妹は赤ん坊の頃から食欲旺盛だった。
そのため、妹が過剰に食べてしまうことを誰もおかしいと考えず、ソラマメの時も「たくさん食べられて良かったね」と夢中で食べる姿を微笑ましく眺めていたのだが。
ソラマメの食べ過ぎで妹は腹を壊した。
腹を壊すまで食べるなんてバカだな、と思ったことをうっすら覚えている。
しかし祖母は、
「こんなに大量にソラマメを売った八百屋が悪い!」
とカンカンになり、次の日に、
「大事な孫にどうしてくれるんだよ!」
と怒りをぶちまけに行ったのだ😨
意気揚々とその様子を話す祖母を見て、母と孫2人は恥ずかしさで穴に入りたい気持ちでいっぱいになった。
母は「恥ずかしくて八百屋に買い物に行けない」
私は「小学校の帰りに八百屋の前を通れない」
妹は「お腹のこと言ったら八百屋さんに行けない」
と文句を言った。しかし祖母は、
「なに言ってんだよ!プロなんだから加減して売るのが当たり前じゃないのかい」
と一歩も譲らない。
今考えてもおかしな論理である。
腹を壊したことを他人に知られた妹が本当に気の毒だった。事実、妹は祖母と買い物に行くとしばらくの間「ソラマメで腹を壊した子」と呼ばれていた。
あのソラマメ事件以降、妹も私も腹八分を実家にいる間は守るようになった。祖母が無茶苦茶な怒りを商店街に向けないために必要な配慮だった。
さて、そんな無理無体な文句を受けた八百屋さんだが、祖母と絶縁したかというと。
向こうが一枚上手で、祖母の怒りをしっかりと受け止めたことから気に入られ、最後まで長い付き合いを続けた。
困難の中にもビジネスのヒントあり。あっぱれ。
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