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秋華賞 2023 回顧


【レース展開】

S(スロー)後半型 瞬発型 61.9-59.2
12.2-11.1-13.1-13.0-12.5-12.9-12.3-11.6-11.0-11.4

緩い流れからの直線瞬発力勝負の展開。強力な先行馬がいなかったという事はあったが、それでも前半61.9秒という京都2000mとしてはかなり遅い流れ。動き出しの位置も遅くて4角から直線に向けての極端な加速勝負になった。

リバティアイランド 1着

【決め手】4角先頭の横綱の競馬で押し切る・Sペースでも明確な違い見せ

発馬五分からある程度行き脚がつく形で前に行って、1角まで少し外に持ち出しつつ結局中団前目の位置を確保。道中は終始中団中目でレースを進めて、3角までに中団前目の外に持ち出す形。4角手前で外目から持ったままの手応えで動き出して、4角でジワッと外からスッと動き出していくと直線入口で先頭に立ってそのまま直線へ。直線入口からの勢いそのままに直線序盤で加速を引き出して、最後1Fで後続を突き放して独走態勢。ゴール前で2着馬(マスクトディーヴァ)の猛追はあったものの、すでに大勢は決した後で最後は流す感じでゴール。最終的に2着馬との差は1馬身だったが、内容的には完勝だった。

序盤で前目の位置を取れたし、向こう正面で外目に持ち出して3角で中団前目の外という絶好位を確保。展開的に超スローという形になっての加速勝負となったが、3角までのレース運びの完璧さと4角で動き出してからの後半要素で力の違いを見せて、まさしく横綱の競馬で完勝。最後は2着馬(マスクトディーヴァ)に猛追されてはいるものの、すでに大勢は決していたし自身も流しにかかっていた。まぁ内容的には2着馬は4角から進路取りで噛み合わなかった事が大きく影響しているので、2着馬の進路が真面だったら結構な好勝負になっていた可能性はある。ただこちらは4角で外から勝ちに行っているし、後方で脚を貯める形になった2着馬とは内容的にはそこそこ差のある形だと思う。後は元々の馬の適性面(こちらはMH2型、2着馬はSM2型)があったと思われる。

今後は牡馬相手の戦いになる可能性が高い。本質的には平均以上で流れる展開の中で高いレベルで後半要素を引き出せるタイプだが、今回は同世代の牝馬相手と言えどもスローの流れでも高いレベルの後半要素を見せたのは大きい。目一杯後半要素を引き出せる長い直線向きの印象が強いので、東京コースで古馬相手のハイレベルの舞台でも十分に戦えそうな感じはする。

【レース後関係者コメント】
(川田将雅騎手)
「心から感動しています。(単勝1.1倍という人気だったが)そういう馬ですので、それを皆さんに楽しんでいただくためにリバティはいますから、いつも通り競馬を迎えようというところでした。事前にレースプランは作らず、ゲートを出てから、雰囲気を見ながら、並びを見ながら考えていこうというところで、本当にとてもいい内容で走ってくれていたと思います。直線に向けては進路を作ることだけでしたので、いい形で道中運びながら、スムーズに進路を作れる形になって、ペースも緩かったですし、彼女も行く気になりましたので、ならばこのまま強気に押し切ってしまおうと選択しました。 無事に自分の能力さえ発揮すれば同世代ではこうやって圧倒的なパフォーマンスが出来る馬ですので、こうして三冠をとったことによって日本の歴史にも名を残すことができることになりましたから、ますます彼女が背負うものは大きくはなりましたが、それにふさわしい馬だと思っています。(最高の誕生日になりましたね、という質問に)ジョッキー生活20年目で、競馬の神様がくれた最大のプレゼントだなと思っています」

(中内田充正調教師)
「ホッとしたのと、やっと目指していた3冠をとれて、関係者には感謝の気持ちで一杯です。競馬場に着いて、テンションが高く心配していましたが、装鞍所、パドックで、いつものリバティアイランドに戻りました。京都のこのコースはトリッキーで、展開に左右される面がありますが、ジョッキーを信じて、彼に一任しようと思いました。外に出した時、さすが将雅だと思いました。ゴールした時は、ホッとした気持ちの方が大きかったです。今後についてはオーナーサイドと相談して決めたいと思います」

マスクトディーヴァ 2着

【決め手】4角からの進路取り噛み合わず・G前猛追も差し届かず惜敗の感

若干出負け気味から序盤で行き脚が付き切らずで中団後方中目という位置取り。道中は中団後方で控えるような感じから3角手前から中目を通してジワジワと押し上げの態勢。3~4角をそのまま中団馬群の中から押し上げに掛って、4角で外目へと誘導を試みるも外が壁で持ち出せず。その後再び中目を狙うなど進路取りが上手く噛み合わないまま4角から直線へ。直線は序盤で思い切って大外に持ち出して追い出しを開始。半ばから最後の1Fにかけて強烈な伸び脚を見せてアッサリ2番手に浮上すると、ゴール前にかけて勝ち馬(リバティアイランド)を猛追するも1馬身差に詰め寄るのが精一杯の2着まで。

4角からの進路取りが噛み合わなかったので、ちょっと悔やまれる内容になったと思う。特に4角で外目へ持ち出そうとした際に壁になって一旦諦めているのだが、その間に勝ち馬は外から動き出して一気に先頭付近まで押し上げている。ここでついた差が大きすぎて、最後1Fで猛追を見せても1馬身届かなかったという最大の理由だろう。まぁ勝ち馬はゴール前で流す余裕を見せていたので何とも言えない面はあるが、4角でスムーズさがあれば勝ち馬に対して結構な好勝負が望めた可能性はあるかもしれない。

ただ元々使える脚そのものが短いというタイプの馬で、4角で包まれて追い出しを待たされる形になったが奏功しているという可能性も考慮しておきたい。勝ち馬のように4角から外々を回って押し上げた場合、ゴール前で末脚を持続させられたかどうかはちょっと微妙なラインという可能性である。展開的にもスローの流れで後半3Fで11.6-11.0-11.4の加速勝負であり、展開面では勝ち馬以上に向いたという事も考えられる。今後高い次元での後半SP持続力勝負となった場合、リバティアイランドに肉薄できるかどうかが注目になる。

【レース後関係者コメント】
(岩田望来騎手)
「スタンド前のゲートインで盛り上がってしまって緊張した状態でスタートがもう一つになりました。いつも通りに出られていたら、もっとポジションが取れていたと思います。思ったよりも後ろの位置どりになって、このペースでしたから動きたい時に動けませんでした」

ハーパー 3着

【決め手】ワンテンポ仕掛け遅れ、直線キレ負け・スローの加速勝負に?

発馬五分からある程度前を伺っていく形で、1角までに好位内目の位置を確保。道中は終始好位内目で追走して、3~4角で中目からジワッと進出の構えを見せるが4角で若干前が壁になって包まれ気味。それでも直線入口から直線に向けて仕掛けられると、半ば以降でグンと加速を見せる。最後1Fも内からしぶとく伸びきってゴール前100mで単独2番手に浮上したが、そこからゴール前にかけて外から来た2着馬(マスクトディーヴァ)にアッサリ交わされてしまう。最後は自身の脚色も少し鈍る感じを見せて、ゴール前で4着馬(ドゥーラ)の追撃に遭うも何とか凌いで3着を死守。

終始好位内目~中団前目のインという絶好位で運んだが、4角で動き出したいところで包まれ気味になって勝ち馬(リバティアイランド)に対して仕掛けがワンテンポ以上遅れた感あり。直線入口で何とか外に持ち出して直線もそれなりの加速を見せてはいるのだが、最後1Fで少し脚色が鈍る感じを見せていて、最後の最後で4着馬(ドゥーラ)に詰め寄られるなどちょっと案外な内容になったと思う。まぁこの辺りに関してはスローの流れからの極端な加速勝負になって最終的にキレ負けした感は強いし、直線半ばで目一杯の加速を引き出した影響で最後は甘くなったという見方もできる。どちらにせよこの馬向きのレース展開であったとは言い難く、その中で3着(それでも0.5秒も離されたが)はむしろこのメンバー内で地力上位だったからだろう。

【レース後関係者コメント】
(C.ルメール騎手)
「すごくいい競馬をしてくれました。3番手、良いポジションでした。この位置から速い脚は使えず、ジワジワ伸びていました。精一杯走っての3着、仕方ないですね」

ドゥーラ 4着

【決め手】4角置かれ気味も直線しぶとく伸びる・Sの加速勝負で対応苦労

発馬五分から中団中目の位置取り。道中は中団中目で勝ち馬(リバティアイランド)の直後につけて、これをマークするような形で追走。3角では外に持ち出した勝ち馬に対して、自身はそのまま中目を通して3角過ぎで勝ち馬に先んじる形でジワッと進出を開始。しかし4角で外に持ち出した勝ち馬がスッと加速して一気に押し上げて行ったのに対して、自身は中目から動き出すも反応が鈍くて若干置かれ気味。直線は中目からじぶとく伸びを見せるも、勝ち馬は完全抜け出してしまってこの時点で勝負あり。それでも自身は最後までしぶとく伸び続けてゴール前で3着馬に肉薄したものの、差し切るには至らずに4着止まり。

3角から積極的に動き出す意図は見られたものの、極端なスローの加速勝負という形になってコーナー区間で速いラップを問われて苦戦した形。勝ち馬に対しても反応と4角での加速に対応しきれずに全くついて行けなかった。まぁコーナーで他馬との違いを作り切れなかったのは案外だが、スローの加速勝負という展開そのものがこの馬に向いていたとは思えず、それでもこの展開の中で0.5秒もの差がついたとは言え4着を確保できた事自体を評価するべきなのかもしれない。

【レース後関係者コメント】
(斎藤新騎手)
「内枠でしたし最後勝ちに行く競馬をしました。いつもと違うリズムで勝ちにいった分甘くなりました。この経験は次に生きてくると思います。それでも走ってくれているのは、この馬の地力だと思います」

モリアーナ 5着

【決め手】後方待機の直線勝負もキレ負けの感・Sペース加速勝負で見劣り

若干出負け気味から序盤は控える形を取って後方内目の位置取り。ただ1~2角で内々を回って中団後方のインまで位置を上げ追走。3~4角はそのまま内々から馬なりで回す形から直線入口で最内を衝いて一気に伸びを見せる。最後1Fでは最内で狭くなったところを他馬を弾き飛ばすようにして強引に進路を抉じ開け、さらに伸び続けたが最終的に5着まで。

後方待機策から直線勝負に徹する形の競馬。直線は最初から最内を狙うつもりだったかもしれないが、最後1F区間で狭くなる場面を無理矢理間を割り込んで(他馬に迷惑が掛かったような…)まで伸びたものの0.6秒差の5着が限界という感じ。まぁなにせスローの加速勝負の展開で後方待機策だから、展開面で泣いた面はあると思う。最後1Fで狭くなった件については自身の強引な進路取りのせいだし、結果的に0.6秒もの差がつくとあまり言い訳は出来ない内容。勝ち馬に対しては純粋に力負けだし、同じく後方で進めた2着相手にもちょっとキレ負けの感は強い。まぁスローの加速勝負ではこの辺りが限界という事なのだろう。

マラキナイア 6着

【決め手】中団内目追走・3~4角内通す、直線キレ負け・Sペース加速勝負に?
【レース後関係者コメント】
(池添謙一騎手)
「返し馬でもすごく落ち着いていて状態の良さが伝わってきましたし、調教のときからいい感じでした。二の脚がつかず中団からになりましたが、ペースが遅く、この枠でしたから包まれて動くに動けず展開がしんどかったですが、ジリジリ脚を使ってくれています。今のところ1800mの方が力を発揮できると思いますが、今後、すごく良くなると思います」

エミュー 7着

【決め手】出負け、最後方待機・4角大外、直線伸びきれず・位置取り、コース取り?
【レース後関係者コメント】
(M.デムーロ騎手)
「前に行って内へ入れてという指示でしたが、それが出来ず、切り替えていつもの競馬になりました。競馬自体は良かったと思います。3、4コーナーではいい手応えでしたし、直線では他の馬とぶつかる場面もありましたが、すごく頑張ってくれました」

コナコースト 8着

【決め手】好発、主導権握る・最後1F脚色鈍る・Sペース加速勝負で見劣り
【レース後関係者コメント】
(鮫島克駿騎手)
「スタートは決まりましたし、スローになった上での馬群一団の競馬で、紛れがあればと思って乗っていました。こちらも理想的な競馬でしたが、勝った馬もスムーズでしたし、一気にのみ込まれてしまい、それで気持ちも体力も一気に奪われてしまいました」

ヒップホップソウル 9着

【決め手】後方外目追走・3~4角外回す、直線伸びきれず・Sペース加速勝負に?
【レース後関係者コメント】
(横山武史騎手)
「返し馬から力んでいて、競馬でもそんな感じでした。スローペースになり、力を出し切れませんでした」

ドゥアイズ 10着

【決め手】中団中目追走・4角外から動く、直線伸びきれず・加速勝負で見劣り

ラヴェル 11着

【決め手】好位追走・最後1F脚止まる・後半余力残せず、距離的要因?
【レース後関係者コメント】
(坂井瑠星騎手)
「ゲートを五分以上に出たらいいポジションを取って折り合いをつける作戦でした。ペースが遅い中、折り合いがついて4コーナーまで雰囲気良く運べました。勝ち馬には一瞬で交わされてしまいましたが、良く頑張ってくれたと思います」

キタウイング12着

【決め手】後方待機・3~4角内通す・最後1F前詰まるも、伸びきれずの感

ミシシッピテソーロ 13着

【決め手】好位追走・直線半ばで余力ナシ、後退・前半型の競馬に?

ピピオラ 14着

【決め手】中団外目追走・4角大外回す、最後1F脚止まる・加速勝負で見劣り
【レース後関係者コメント】
(藤岡康太騎手)
「スタートを出て前に壁が無い中での追走も、しっかり我慢してくれました。4コーナーで勝ち馬についていけそうな感じもありましたが、最後は苦しくなってしまいました。これが良い経験になると思います」

グランベルナデット 15着

【決め手】後方待機・直線伸びきれず、最後1Fヤメ・後半要素で見劣り
【レース後関係者コメント】
(松山弘平騎手)
「今日はポジションにこだわらず、リズム重視で行きました。手応え良く、前も開いてくれましたが、思った以上に伸び切れませんでした」

フェステスバント 16着

【決め手】好位追走・最後1Fで不利有、ヤメ・直線キレ負けも不利の影響大?
【レース後関係者コメント】
(酒井学騎手)
「行ければハナにということでしたが主張してきた馬がいたのでその後ろで運びました。ただ(ハナを)取りに行こうとした分向正面まで収まりきれない感じでした。その後はリズム良く運べて手応え良く直線に向かいました。最後、内の狙っていたところを他馬に入られて窮屈になりましたが、それでもこのメンバーの中ジリジリと脚を使っています。自己条件では力は上位です」

ソレイユヴィータ 17着

【決め手】好発、中団前目追走・直線半ばで余力ナシ、ヤメ・Sペース適性?
【レース後関係者コメント】
(武豊騎手)
「一生懸命走ってくれましたが、ここではまだ荷が重かったです。勝った馬は強かったですね」

コンクシェル 18着

【決め手】中団外目追走・直線半ばで余力ナシ、ヤメ・後半要素で見劣り

【見直しの余地アリ】

マスクトディーヴァ 2着
(4角から直線に向けての進路取りでかなり手間取っており、その間に勝ち馬との差を一気に広げられたのが致命傷という感じ。最後は勝ち馬に対して1馬身まで肉薄する末脚を披露しており、4角の進路取りでスムーズさがあれば…という感は強い)

フェステスバント 16着
(好位追走から直線のラチ沿いでしぶとく粘り見せるも、最後100mで他馬(モリアーナ)の強引な割り込みで大きく態勢を崩す不利あり。最後100mでそこまで余力が無かった感じはあるが、それでも真面なら1.5秒差の16着という事は無いように思える。真面でも掲示板すら無かったと推定されるも、数字ほどの大敗では無いという認識が合っていいと思う)


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