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風、東京

東京は何にでもなれる街だと思った。
ぼやけたままの夢を持って上京し、視界が澄み渡る事を信じていた。
イヤホンからはお気に入りのアーティストが私の世界にBGMを付ける。
満員電車でぼーっと窓の外を見ながら東京に浸る朝。

混雑した街では何者でもない自分でいられる気がした。
大勢の人が行き交い、自分の役割をまっとうしている。
1人くらい何もしていなくたってバレない街。都会。
音漏れに気づかない女の子を睨みながら電車に揺られる朝。

東京に憧れる人の気が知れない。
夢の国は千葉県にあるし、東京は何も与えてくれない。
一度は住んでみたい、なんて皆言うけれど何が変わるのだろう。
東京で産まれ東京で育った僕は、外の世界の方が羨ましい。
だって東京の電車は音漏れしている子を怖い顔で睨む人ばかりだ。
「音漏れしてますよ」の一言が言えない朝。

東京には朝がない。
暖かい朝日やカーテンを揺らす朝の風は吹かない。
忙しなく人々がすれ違い、他人の渦に呑まれ街の風景となる。
地元の朝が恋しくなるけれど、戻れない。
私は一体何に執着しているのだろうか。

夜が好きだ。
あんなに騒がしかった街も眠り、世界で一人になった気分だ。
昔の自分に戻りたくなるが、東京が起きればまた世界は動き出す。
星の見えないベランダでビールを飲む夜。

夜が怖い。
嫌なことを忘れるかのように必死に飲んだ人達。
ふらふら歩く人や座り込んでいる人。透明人間かのように誰も干渉しない。
疲労とアルコールが充満した夜の駅。

風が吹いた。
東京の風は深夜1時に。

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