あとがき

二十代の頃、雨が止まない国の住人が出てくるマンガを読んだことがあります。たしか、主人公がいろいろな国、または星を旅していました。『銀河鉄道999』か『ファイブスター物語』のワンシーンだったのかな。
 暗い色のフードを纏って、雨が止まない国のリーダーたちが手漕ぎの船で現れます。沼のような湖には背の高い葦のような植物が茂っていました。何かの交渉をしに訪れたのだったと思います。そのシーンを読んで、小さな

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ありがとうございます ฅ^•ﻌ•^ฅ ♡
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雨の国のアリス #épilogue

チェシャがねずみ人たちと船を作ること、も
う一度私たちが出会うときのお話は、また別
の本に書きましょう。いままで読んできた本
に書かれていた国は、この湖を漂うだけでは
たどり着けない。島の人は言います。「この
国とは違う時間にあるのだ」。ある日、打ち
上げた風船が消えた雲に、穴が開きました。

誰もが、すぐには気づきませんでした。雨が
、止んでいます。風が雲を千切っていきまし
た。空に青い色が増え

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雨の国のアリス #28

毎朝、球形の計器を打ち上げる。蒸気の発射
音は石造りの天文台の中まで響き、湖を越え
てほかの島に届いた。二人組みの打ち上げ係
は、耳栓をつけた上から手で耳を塞ぐ。発射
後の装置を点検していると、上空から計器が
落ちてくる。それはしぼんだ風船と湖に浮か
んでいる。回収して計器の数値を記録する。

今朝は私が打上げる番。私たちだけ三人組だ
。蒸気が噴出す発射装置に向かう。とても熱
いので作業はクレーン

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よい日を ♡
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雨の国のアリス #27

この島の雨は今にも止みそうで、雲の隙間から光が漏れていた。
「ここでは雨がやむことがあるのね!」
『私が生まれた時、静かな雨が降っていた。その雨はけしてやむことがなかった。』
その人は詩を暗誦するかのように、ここではないどこかを見ていた。
「ここには雨がなかったころの本が残っている」

私は島にとどまり、彼らと一緒に研究を続け
た。彼らというのは、最初に会った彼と二十
七人の人々。二十九人目の私。

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よい日を ♡
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雨の国のアリス #26

チェシャだけ。
ねずみ人の島。
「僕を食べるかい」
「食べないよ」
「でもきみたちは肉を食べるだろ」
「肉は食べないよ。魚は食べるけど」
「魚を食べるの。怖いなあ。魚は友達だよ」
「じゃあこれからは食べないようにするよ」
チェシャはベルトから袋をはずして、ナイフごとねずみ人に差し出した。

船の進行方向からまたあの音が響く。目指す
島の上空を、虹に映っていた風船が昇ってい
くのが見えた。島には、天

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雨の国のアリス #25

彼らの映画に共通していたのは、働くことは誰かのためになり、喜びであるということ。湖を漂い島を渡り歩くだけの私を、助けることができて嬉しいと言う。彼らの家に招待された。一緒に料理をして、一緒に食べた。次の日の朝、窓から音が響く。遠くで、何かが打ち上がるような音。彼らと目を合わせた。

テーブルに地図が広げられた。音が響いてきた方角の島を確認する。地図を受け取った。私は、そこに行くべきなのだろう。彼ら

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雨の国のアリス #24

チェシャよりもずっと年上で、真っ黒な長い
しっぽを持つ人。連れて行かれた広場で映画
を観た。それはその黒い人が作った映画で、
彼の自己紹介になっていた。彼の言葉は分か
らない。だけれど彼のことがよく分かった。
彼は性別も種族も超えた愛に溢れていた。彼
のパートナーが広場の向こうに姿を見せる。

彼のパートナーの言葉も分からなかった。父
と同じくらいの歳だろう。その人が自分で作
った映画が上映された

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いいことありますように ♡
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雨の国のアリス #23

「おかしなやつだろ。そんなに自分の国がいいなら、こんなに遠くまで来なきゃいいのに」止まない強い雨。雨音の間に、知らない国の言葉が流れて、雲は少し明るい。バタフライエフェクト。「どこかで蝶々が一度はばたいただけで、ここに強い風が吹くって話を知ってるかい? この大雨はそういうことさ」

近隣の島を教えてもらう。この辺りでは島同士の交流が盛んなようだ。一人で駆る帆船は、私が思っていたよりも上手い具合に次

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ありがとうございます ⋈ *。
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雨の国のアリス #22

港に降り立つと再び激しい雨が迎える。コー
トを着ていないので全身水浸しだ。息苦しい
ほどの雨。だけれど、これほどまでの雨を肌
で受け止めるのは爽快だ。猫島の宿屋にもら
った服では暑い。港の奥に進み服屋を探した
。交換できそうなものは、巨人の島でもらっ
たブランケットくらいしかなかったけれど。

キャミソールとホットパンツと呼ばれていた
ものに着替えて、暑さから逃れた。少し残っ
ていた木の実と交換し

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雨の国のアリス #21

墜ちて、墜ちて、墜ちて。こんな場面を本で
読んだことがある。見たことがないものが虹
に映っていた。私が読んだ本には、虹に何か
が映るなんて書いてなかったけれど。あの四
角い機械はラジオだ。あの建物は天体観測所
。あの、雲に向かって昇っていく風船はなん
だろう。ひどく長い時間、墜ち続けている。

墜ちる船は次第に速度を落とし、静かに着水
した。滝は豪雨に変わった。もう虹は見えな
い。雲が重く暗い。チ

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よい日を ♡
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