拝啓、くらすばスタッフの皆様へ。(2022.12)

くらすばを5月(準備期間は4月~)から開業して12月末で8月が経ちました。本当に利用者さんが来るのだろうか?と不安を感じながらも正解を模索しながら邁進してきました。

たった1名の利用者さんから始まり、今では毎日10名程度来てくださるところまでくることができています。皆さんのおかげでしかありません。

くらすば(暮らり)では介護っぽくない取り組みもしていますが、丁寧に理由をお伝えする機会もなかなかありませんでした。今回の記事では、年末の振り返りとともに、スタッフの皆様へ伝えたいことをしたためておこうと思います。


まずは感謝

皆さん、本当にありがとうございます。介護や医療の現場で働いてきて思うことがあったり、自分自身のキャリアのタイミングも相まって、デイサービスの独立・開業に踏み切りました。当時は今ほど、何をしていくのか、何をしていくべきなのかもブレブレの中のスタートだったと思います。そんな状況で一緒に働くという選択をしてくださった方々には、本当に感謝しかありません。教育制度もマニュアルもない。すべてがゼロからのスタートでした。不安な中、できるところから一生懸命に地道に業務を積み重ねてきたからこそ、今があると思っています。

7月以降、立ち上げスタッフ以外の方も入職してくださり今では9名の方々と働くことができています。皆さんそれぞれ家族がいたり、これからも人生がある方です。皆さんの人生の一部をともにすることができてとても幸せだと思っています。と同時に、しっかりと給与含め処遇をよりよくしていく責任も感じています。

皆さんの仕事へ取り組む姿勢、パフォーマンス、倫理感にとても救われて、仕組化できていない組織にも関わらず、利用者さんやご家族、地域の方々にとても良い声をいただけています。本当に感謝です。ただ、皆さんに甘えることなく組織化、仕組化をしていきたいと考えています。

まだまだ粗削りで出来損ないの経営者ではありますが、根気よく付き合ってもらえると大変うれしいです。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

1年を思い返してみて

冒頭にも記述しましたが、本当に利用者さんが来るのかな?と不安ばかりでした。当然ながら、今まで利用者さんがいるのが当たり前の環境でしか働いたことがありません。1人の利用者さんに来てもらうためにどれだけの企業努力が必要なのかということを1年を通して痛感しました。

また、介護現場のことだけでなく、営業(利用者獲得)、人事・労務(採用、契約、シフト作成)、経理(日々の仕分け、給与計算等)などなど今までやったことのない作業に取り組まないといけないため思ったよりも大変でした。管理者をはじめ現場を最初からある程度お任せすることができるスタッフがいたのもあり、経営部分もなんとかやりきることはできています。本当にありがたいことです。

1人の利用者さんを大切にケアしていきながら、くらすば自体の認知度を高めるために営業をしていった結果、当初の計画よりも早いスピードで利用者さんが増えていっているのだと思います。

利用者さんの中には、現状の私たちの能力だけでは受けきることのできない人もいらっしゃり、契約を打ち切った事例もあります。本当に私の力不足を痛感しています。私たちだけで抱えようとし過ぎていたり、個人因子の深堀ができていなかったことが原因の一つです。そういった方と対峙して、大変だったのは間違いないと思いますが、後ろ向きな言葉ではなくなんとかやり切ろうとしてくれていた姿勢には感服していました。

対峙している時はしんどいかもしれませんが、利用者さんや家族さんにも成長させてもらいながら、対応できる利用者さんの幅も広がっていくのかもしれないと感じました。

現在は利用者もスタッフも増えてきて、どのように丁寧にかつ効率的に運営していくかが課題です。ただ、今は会社自体を存続発展させるために、売上を伸ばすことが最優先です。今年度(3月末)は、どこまで売り上げを伸ばせるかに注力していきます。大変だと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。

起こってきたこと

一年を通して起こってきたことをまとめてみます。

契約率(契約者数/体験者数×100)

一年を通して、84.8%でした。
この数値は事業所の質を表しているのではないかと考えています。初めての人のアセスメントから、実際のケアなどその場での適応能力が求められます。くらすばを開所してから事前に利用者さんや家族のことをもっと知っておく必要があると実感し、「体験前訪問」を必ず行うようにしました。

なぜデイサービスを使おうと思ったのか等、表層の思い(ウォンツ)だけでなく、本当は何を得たい(ニーズ)のかを探っています。

例えば、夫にリハビリしてほしい(ウォンツ)という妻の訴えでも、夫の元気な姿をもう一度見たいなのか、夫が身体を悪くせず家族に迷惑をかけて欲しくないなのかでは、こちらがとるべき行動(ケアは情報提供)が変わってきます。

来年からも、契約率は80%の維持ができるように、実践を積み重ねていきましょう。

CS-30の変化(30秒間立ち上がりテスト)

利用開始して3か月後には平均で4.7回増加していました。

くらすばでは、利用開始してから3か月ごとに立ち上がりがどのように変化していっているか定点評価をしています。日常型で作業中心のデイサービスでどのような身体機能の変化が起こるかをみるためです。

今回の数値が全国の施設と比較してどうなのかまではまだ分かりません。しかし、身体機能を維持・向上させるというのは、利用者の生活の選択肢を広げていくための土台のようなものです。引き続き、作業を中心としながらも身体機能の評価はしていきます。利用者さんには、楽しい(作業)を感じてもらいながらも、裏側に強さ(身体機能)を作っていってもらいたいと思っています。

利用者とのファーストコンタクト(チャネル)

ケアマネから50%、その他(知人、他機関、家族)から50%でした。

この数字はどこで(誰から)くらすばを知ったか把握していくためのものです。基本的にデイサービスは、ケアマネさんから家族に紹介をしているため、本人・家族はケアマネさんから情報提供を受けることが多いです。

しかし、本当に本人・家族は行きたい(行ってほしい)と思う場所に行けているかは少し疑問をもつこともあります。本人・家族が意思決定していくためには、「ケアマネ→本人・家族→くらすば」だけでなく「本人・家族→くらすば→ケアマネ」となるような経路が大切だと考えています。そのために日々の情報発信や口コミがとても重要なのです。

インスタグラムなどのSNSやホームページは、利用者本人につながらなくとも、子ども世代・孫世代から利用者本人に情報が届きます。これからの時代、両親や祖父母がデイサービスに行くとなると家族はほぼ必ずネット検索するでしょう。その時にちゃんと情報がネットにあるという状況は安心感につながるはずです。

ただし、もっとも大切なことは口コミによる広がりです。日々のケアや地域の方々への接し方がどれだけ丁寧かどうかが口コミに反映されています。8か月運営してきて感じるのは思いのほか自分たちの知らないところまで情報が届き始めているということです。実際に、くらすばとは違うエリアの民生委員さんから紹介があったり、父親の水道営業の際に「知っているよ」と声をかけられていたりします。

1人の人が口コミ(噂)をどんどん広げてくださいます。法人全体としても、もっといろんな人に関わっていくことは必要なのかもしれません。
その一つの取り組みが八百屋さんです。

週に1回でもいいので、地域の方々と野菜や果物をきっかけに会話を交わしお互いの顔が見える関係を作っています。また地域の方々以外でも、くらすば(暮らり)に来たかったけど、行くタイミングを探していたという方からのきっかけとしても機能しています。

八百屋を通して薄くつながりをつくることができます。さらに濃い関係性にしていくためにはくらすば(暮らり)に足を運んでもらう必要があるのではないかと考えています。
今年開催した、カレーイベント(まいまいのお別れ会)のようなことが大切なのかもしれません。

いずれにせよ、様々な方々と自分たちの方から接点を持ちにいき、ケアマネ以外からのチャネルをもつことは、事業所の持続可能性の観点からも取り組みを継続していきます。くらすばのことを良いと思ってくださるケアマネさんも退職されたり異動されたりすることもあります。そのため色々な経路から相談がくるような状態をつくっておく必要ががあるのです。

来年以降も、利用者とのファーストコンタクトでその他が50%以上となるよう取り組みを継続していきましょう。

来年(来年度)、実践していきたいこと

くらすば(暮らり)の関係人口を増やしていく

最近、利用者さん(家族含む)に良いケアを届けるには事業所だけのリソース(ヒト・モノ・カネ)だけでは限界があるのではないかと感じています。
デイサービスは利用定員が決まっているため、自ずと売り上げ額の天井も決まってきます。そこから人件費を出すため雇える人員も決まってきます。

くらすばでは利用者3-4人に対して、スタッフ1人を配置できるようにしています。ただ、一対一で接することが必要な利用者さんが多くなった場合、自ずと他の利用者さんへのケアが疎かになってしまいます。では、一対一の対応が必要な利用者を受け入れないのか?と問われるとそれは違うのではないかと思うわけです。自分たち以外のリソースを他から調達してくる必要性があると考えています。

忙しくなってくると、「くらすばを見にきたい、ボランティアしてみたい、手伝ってみたい、何かしてみてみたい」と言ってくださる方々を受け入れることが大変になりつつありました。しかしながら、ある人とお話をして、逆の発想をしなければならないことに気づきました。忙しいからこそ、色んな人の力を借りなければならないのです。

ボランティアさんや何かしら作業(手芸や歌や演奏等)をしてくれている間に、私たちは関りが難しい人のケアに注力することができるかもしれません。

くらすばでは一緒に作業することを大事にしています。来年(来年度)は「一緒に」の幅をもっともっと広げていければと思っています。くらすばでスタッフとして雇用関係のない人たちが、くらすばの運営を一緒にしてくださる未来を想像しています。

組織を整える

現在は現場をなんとか回しきることを優先していることもあり、マニュアル、教育体制、研修、会議などがほとんど整っていません。しかし、来年、再来年と中長期的に考えたときには組織の基盤づくりとしてなくてはならないものたちです。僕一人でなんとかなる部分ではありません。皆さんと協力しながらやっていく必要がありますし、ものによっては外部の人の協力を得る必要もでてきます。ぜひ、自分たちの働く職場をより良くするためにも一緒に関わってもらえると大変うれしいです。

さいごに

今回はくらすばをメインにお伝えしたいことを書きました。僕の根本的な課題感というか取り組みたいことは、空き家や空き地、既存の機能(組織やサービス)が悪くなっている施設や建物のリノベーションです。

人口減少も相まって、地域から飲食店や公共サービス、服飾店、八百屋、働く場などがどんどん減っていきます。一つの店舗が一つの機能だけではやっていけなくなってきています。今の時代に合わせてどのような使われ方をしていくのがその土地に住む人たちのためになるのかを考えていきたいのです。

暮らりを例に挙げます。空き家は分かりやすく言うと、社会からみて機能不全に陥っている状態です。暮らりでいうと、住居機能と診療所機能では運営が難しくなっていました。今回は福祉機能と商業的機能(デザイン事務所と八百屋等)を合わせることで、空き家が社会とのつながりを再び得ることができました。

きっと商業的機能だけではこの地域ではうまくいかなかったでしょう。福祉機能でベース収入をつくりつつ、商業的機能も一部入れ込んでいる状態がこの地域ではよかったのかもしれません(まだ分かりませんが)。

一つの機能だけでは成立しなくとも多機能にしていくことが、いろいろな人の関わる余地をもち、日常的なコミュニケーションを活発化させていくのだと思います。そしてそれが持続可能性を高める一つの回答なのだと思っています。

なので、これからも介護の枠にとらわれず、いろんな挑戦をしていくことのなるかと思われます。またやってんなと思いながら一緒に楽しんでいってもらえると幸せです。

今年は一年本当にありがとうございました。感謝してもしきれません。来年も何卒よろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。


橋本



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