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【取材報告】地域からの風 石巻篇 是恒さくら「ありふれたくじら」展 +石巻ブックフェア

【取材報告】カテゴリでは、アートプロジェクトラボのメンバーが取材・参加したアートプロジェクト・イベントの様子をクラウドファンディングや本の制作とは直接関係がないものも含めて、ご紹介していきます。

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宮城県石巻市を中心に開催されている「Reborn-Art Festival 2019(RAF)」へ足を運ぶ前に、石巻のことを様々な形で知っておきたい。そんな時に、RAFへも参加している是恒さくらさんの作品展示と、石巻に関係するブックフェア&トークが行われるということで、足を運んできました。

会場は、築地にある小さなビルの2階にある、「コミュニケーションギャラリー」を名乗るブックショップ・ふげん社。足を運んだ日は、ISHINOMAKI2.0の拠点運営マネージャーを務め、「石巻まちの本棚」の設計から運営までを行う勝邦義さんと、石巻市出身の作家で、震災後に地域誌『石巻学』を発行する大島幹雄さんによるトークが行われました。

トーク「いま、石巻で起こっていること」

2019年8月8日(木)19:00~

ゲスト:勝邦義(石巻まちの本棚)×大島幹雄(『石巻学』発行人)

司会:南陀楼綾繁(ライター・編集者)

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トークはライター・編集者で、2005年から谷中・根津・千駄木で「一箱古本市」を開催する不忍ブックストリートの代表でもある南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)さんの丁寧な進行ではじまりました。会場には石巻まちの本棚&南陀楼綾繁さんによる石巻に関するおすすめ本のコーナーもできていました。

ブックフェア+トーク「地域からの風」は、これまでにも北九州、新潟、山形県・置賜など様々な地域をテーマに開催されてきているシリーズ企画だそうです。

大島さん(写真左、右は南陀楼綾繁さん)からはまず、父が捕鯨などを行う大洋漁業に務めていたこと、ロシアアバンギャルドを勉強していたこと、仕事としては長らくサーカスの巡業で全国を旅していたことなどの生い立ち。そして震災後に知人の消息をたどり石巻入りして、土蔵の再生や、『石巻学』の発行、かつての石巻の様子が写っている映画『鯨と斗う男』の上映プロジェクト(原盤のデジタル化等)などに携わってきたというお話を聞くことができました。

石巻は、まちの規模の割にはライブハウスが3件あったりと音楽が盛んだったり、日和山にはそうそうたる文人の文学碑が建っていたり、『石巻学』を制作していると原稿を提供したいという方が次々と現れるなど、文化的に少しマニアックな活動が根づいているのではないか、と見ているようでした。

勝さん(写真左)からは、震災後ISHINOMAKI2.0が手がけてきたフリーペーパー『VOICE』や冊子『浜日和』などまちのメディアや、復興バーや「IRORI石巻」など小さな場所づくりに関する紹介。そして「石巻まちの本棚」の立ち上げから今にいたるまでのお話を聞くことができました。

きっかけは、2012年に復興イベントとして「一箱古本市」を行ったことだったそうです。まちなかに出店者が点在し、マップを片手に、あるいはふらりと歩きながら訪れた人々が本を手に取る様は、いわゆるお祭り的な復興イベントとは異なり、静かだけどもにぎわいを感じる、欲しい日常と繋がる可能性を感じられたそうです。

また中心市街地には、震災前から本屋さんが無くなってしまっていたそうです。そういったこともあり、小さくても本に親しむことのできるスペースを志して設立、運営されているそうです。

機能としては、貸本と新刊・中古本の販売。土日と平日1日のオープンを基本に、不定期で本に関わる仕事について知ることのできる「本の教室」というトークやワークショップイベントも開催しているそうです。企画によっては、市内はもちろん、市外、県外からも参加者がいらっしゃるとか。

運営には苦労が多い様子でしたが、本に関わるコミュニティとまちをつなぐスペースとして、一定の方々にとって必要とされる存在になっている様子をうかがい知ることができました。RAFの会期中は、関連するものやアートブックの取り扱いも増やし、平日は金曜の夜もオープンして、アートに興味のあるお客さんにもぜひ来て欲しいということでした。

トーク後には勝さんと名刺交換をお願いし、RAFのリサーチに合わせてまちの本棚にもお邪魔させていただくことに。

会場で行われていた是恒さくらさんの展示ももちろん拝見。是恒さんは、牡鹿半島など各地をフィールドワークして鯨にまつわる文化や物語を集めたリトルプレス『ありふれたくじら』も制作されています。『石巻学』最新号と合わせて購入させていただきました。

他にも、石巻の今の風景がそのまま登場するマンガ、たなか亜希夫『リバーエンド・カフェ』(双葉社、たなか亜希夫はRAFにも参加)や、1933年の三陸大津波のあと、集落移動を分析した民俗学の本・山口弥一郎『津波と村』(三弥井書店)、石巻の郷土料理や地元食材の調理方法を紹介する『たべるつくる石巻(春夏編)』(日本家政学会)など、石巻に関する本やリトルプレスをたくさん知ることのできるイベントでした。

EDIT LOCAL LABORATORY 橋本誠

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