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岡山市民会館の今後と岡山城主要部跡地整備について

瀬戸内国際芸術祭の春会期やら出版イベント、実家立ち寄りやらで1週間ほど瀬戸内に滞在していたのですが、行方が気になっていた岡山市民会館や旧内山下小学校を含む岡山城主要部跡地整備の方向性というものが岡山市から出ていて、岡山拠点の建築家・弥田俊男さんと相談して知人中心のカジュアルな勉強会をしました。それを受けて、自分もやっと意見を整理することができそうな気がしてきたので、メモがてらまとめてみます(たぶん随時加筆・修正)。

ちなみに、瀬戸内対岸の高松では丹下建築の船の体育館再生の会の展覧会やトークもちょうど行われていて、現地見学&これにも参加してきました。

丹下健三らによる設計の旧香川県立体育館(通称:船の体育館)

建物単体の話にしない

岡山市民会館は佐藤武夫による設計。岡山芸術創造劇場の会館(2023年9月)に伴い取り壊しの方針になっています。仕事で関わっている文化芸術交流実験室でも取り上げたことがありますので、詳しくご存知ない方はそのレポートもご覧ください。

岡山市民開館(設計:佐藤武夫)

このイベントをやった頃から、もちろん建築やこの建物が例え一部でも(ロビーのステンドグラスとか)好きな方は今後を案じていたし、ここでの何かしらの思い出がある方も多いと思うのですが、現状では取り壊しに対する大きな反対運動とかが起こっているわけではないんですよね。建物としても、県外の様々な歴史的建造物と比較してものすごく貴重で素晴らしいか、と言われるとそうでもないかもしれない。再活用にもお金がかかるんだろうし「しょうがないのかな」という感覚を自分ですら持っていました。

しかし中心市街地につまらない建物が増えてきてしまっているなかで、跡地整備の方向性でも明示されている都市のクロスポイントに立地するこの建物が、他の歴史的建造物と文化施設をつなぐポテンシャルを持っていることを合わせて考えるべきなのではないかというのが、弥田さんの問題提起でした。

城下筋から岡山城方面が感じられるのはわずかに禁酒開館脇のここくらい

確かにこれはおっしゃる通り。岡山の中心市街地って、駅前と表町がその中心をになってきましたが、観光資源ともなる後楽園や岡山城のある旭川沿いのつながりが薄い。市が掲げている「芸術文化ゾーン」やそこにある文化施設、いくつかの歴史的建造物がそれをつなげるといいのでしょうか、それぞれが孤立してしまっている。岡山城や残っている石垣の多くも新しい建物とかに阻まれてしまっているよねと。

城下筋をシネマ・クレールから入っていくと立派な石垣や旧RSKが見えてくる

今回は旧内山下小学校や旧RSK岡山放送会館跡地も含むということで、非常に影響が大きい。建物単体でなく、この対象となる敷地はもちろんのこと、周囲の景観のつくり方なども含めて戦略的に検討するまたとないチャンスなのです。

岡山城側から旧内山下小、奥にはシンフォニーホールが見える=まちが近い

この前提にたった時に、この建物の活用についてのアイデアがたくさん出てくるし、当然これに興味を持つ人も増えるに違いありません。高松の船の体育館は、なるほど面白い建物だということは分かったのですが、それ故なのか今の市街地から少し離れてしまっているからか建物単体の話になっている気がしていて、それでは多様な市民やステークホルダーを巻き込むのも難しいのだろうなぁ、ということも実感してきました。

アートセンターではなく、広場+小規模多機能型レストハウスはどうか

当たり前の議論ですが、どのような方向性であれ整備して終わりではありません。私の立場からすれば、勉強会では秋田の例を話しましたが、フリースペースも備えつつ、市民も活動できる小規模多機能型アートセンターにするのがいいのではなどと言うのは簡単ですが、既存の施設とは差別化した柔軟な運営が仕組みづくりや資金面も含めて可能なのか。市民活動が盛んなまちなので単に利用者ということでは貸出ニーズなんかはあるのでしょうが、それがネックになりそうです。秋田はたまたま気運と政策化のタイミング、担い手の存在などがうまくはまった感じがある。

そうなるとまずは石山公園の整備の延長で、岡山城や旭川などを含めた景観、散漫になっている史跡要素の活かし方を意識しながら公園や公開空地的な整備を入れる。加えて、そこがイベントごとでもしっかり使いやすいあり方にできるよう考えていく。市民が普段使いしたり(高校生がデートでとか、子育て世代が遊びにとか)、観光客が流れてきた時に機能するようなイメージ。

市民会館前の石山公園からの眺望、旭川越しに後楽園も見える

施設を入れるのであれば文化に特化した機能というよりも、レストハウスを兼ね備えたようなものの方がいいのではないか。横浜の「象の鼻テラス/パーク」みたいなイメージ。そういえば横浜はまさに、景観整備を進めてきた都市軸でもある日本大通りから旧横浜港に抜けた一帯を開港150周年に合わせて仕上げていくという話だった気がします。

旧市民会館を再活用するのであれば、現実的な改修や運営コストを考え建物単体で全てそれを担わなくてもいい。減築したり、シンボル的に残すやり方もある。文化施設としてきちんと機能させるのであれば、岡山駅前のシティミュージアムを移転とともに機能強化ないし見直しするくらいの気概がリソース的にも必要な気がします。

在るものを活かし、無いものを創る

福武財団の福武總一郎さんが(よく言っていることですが)「在るものを活かし、無いものを創る」ということを5/8に行われた旭川しろうちアライアンスのシンポジウムでも言ってくださっていたようです。福武さんがプレーヤーとして出てくることはないでしょうが、影響を受けてきたまちとしては、このビジョンをどう引き継げるのかをまさに考えるべきではないでしょうか。

芸術交流などの発信力あるイベントも出てきましたが、岡山市内のわかりやすい常設的な観光資源が、そもそも後楽園と岡山城しかないんですよね。石川文化振興財団さんが福岡醤油の現代美術ギャラリー化も進めていますがまだ知られていない。目的地へピンポイントで行き、市内には泊まらず倉敷や瀬戸内に流れてしまう流れができてしまっていないか。あるいは建築やアート好きな人に後楽園や岡山城を感じてもらうチャンスを逃していないか。

まずは歩いてもらいやすいようにという話もありました。車道も石舗装にするとか。

「あそこにも寄ってみよう」と思わせたり、まちとのつながりをしっかりつくっていくことが、今後の岡山にとって必要だと思います。段階的にでもいい。景観的な話もありますが、夜のコンテンツづくりという視点もあるでしょうし、そこに自分の専門分野がどう活かせるのか。それは引き続き考えていきたいと思います。

勉強会は、変に政治的な活動にしたくないので現状は組織化したり次を計画しているわけではないですが、各々がまわりと考えていこう。サウンディングやワークショップがはじまったらアリバイ的なものにならないよう、きちんと参加しようという話になりました。今回は建築&まちづくり系の方が中心になったので、文化コンテンツに関わられている皆さんともまたお話しできる機会をつくりたいです。

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