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大地の芸術祭とギルドの生活

ギルドハウスに居候滞在のようになったボクは仕事探しの他にやらねばと思っていたことがあり、それは人との繋がりをつくることだと思っていました。

出来ることはどんどんして行こう!そう思ったボクはよく街へ出掛けていました。

仕事に関しては焦りもありましたが、何とかなるだろうとの気持ちもあり、と言うのはこの十日町市には豪雪地帯の他にもう一つ、有名になっている場所でもあるのです。

トリエンナーレと呼ばれる3年に1回、開催される巨大な現代アートイベント「大地の芸術祭」がこれから行われることになっていたのです。

その規模は東京23区の大きさにも匹敵すると言われており、作品数は数百点に及ぶもの。そして、今でこそ現代アートで地域活性が増えていますが、その先駆け的なところでもありました。

ちなみに十日町に来てみたかった、もう一つの理由でもあります。そして、その関連のアルバイトなら、何かあるだろうみたいな気持ちもあったのです。

まぁ、結果としてそんなに簡単ではなかったのですが、、

でも、街はその準備で慌ただしく活気だっている空気はドコかワクワクさせるものがありました。

「あ、そういえば!」

十日町に芸術祭で仕事で来ている友人を思い出したのです。

移住するはずだった上野原の隣町の藤野。そこで自営で土建屋をしている人がいて、仕事でこっちに来ているはず。

大きな身体にいつも足袋に法被(はっぴ)を羽織っており、学年がひとつ上なのですが、その風格はとても一つ違いとは思えない貫禄がありました。

友人と言うより、先輩と呼ぶ方がボク的にはピンと来るかも。

そんな訳で早速、連絡してみると今日はいないけど、明日は一日作業しているから来てもよいとのこと。

「絵本と木の実の美術館」

絵本作家の田島征三さんが廃校を利用して学校を丸ごと使い、アート作品にした美術館。

行くと友人が「おぉ、よく来たねぇ。せっかくだから手伝ってってよ。あれ、そっか、中を見てないんだね。じゃあ、作品見てからやってもらおうかな」

通年やっている施設なのですが、大地の芸術祭期間中は多くの作品の中のひとつのスポットになるのです。

そして、その為の工事が急ピッチで進められてました。

手伝いと言えど、作品全体の世界観を把握してから作業に入って欲しいと言われました。

それはまるで絵本が立体に飛び出てきたようなポップでカラフルな可愛いらしい世界。幼い頃の少年の気持ちに戻ったような胸踊るワクワクした気持ちにさせてくれました。

友人は野外にある音楽LIVEなどが出来るステージをつくっており、田んぼや水や木や石。それらを使ったそのステージはアートそのものでした。

、、、書こうかな、

実はここでの仕事を一緒にやらせてもらう話をもらっていました。

自分としては拠点を移したときの日銭が稼げればとアルバイトの軽い気持ちでいたのですが、

「羽柴和也と言う人間に頼んでいるんだ。仕事にアルバイトだからとか、関係ないだろ。オレはリスクも何もかも全て背負って真剣勝負でやっている。ハッシーはこれから個人でやっていくんだろ?そういう気持ちでやって欲しい」

熱い想いを伝えてもらい、自分なんかに出来るのかと正直に言うと尻込みしてしまいました。

カッコ悪いので書きたくなかったけど。

でも、おこがましいかもしれないですが、その現場を見て、生き様が見えたような気がして魂を込めて仕事をしていて素敵だなって。言ってくれたことが少しわかった気がしました。

嫌な仕事を我慢して生きてきたボクもこれからひとりの男として仕事を語れるようになっていこうと思いました。

そうそう、他にも素敵だなと思ったことがあって、この美術館は地域の人たちも関わっていて、普通の町にいるおばあちゃんなんかが、作品の色塗りなんかを手伝いしていたり、地方から手伝い来た人たちが古民家に一緒に下宿のように住み、夜はみんなで宴会なんかしたりして、たくさんの人によって作り上げられる美術館は人々の温もりを感じました。

ギルドでは何にもしないのもなので、自給用の田んぼや畑もあったので、草むしりや食事の手伝いなどを空いた時間にしていました。

オーナーはほとんど家でパソコンに向かっています。

最初、ネットビジネスで稼いでいるのか。だから、ご飯を食べさせてくれるんだな。なんて、カッコいい。なんて思って、本人に。

「なるほど!飯を食わせてもらえるのが分かりました!!ネットビジネスで稼いでるんですね!すごいですねぇ」と言うと

「ん?これは趣味。見てよ〜、新しいアプリつくってみたんだ。ほら」

こんなときはドコか少年のように無邪気。

ときには思いついたように、天気も良いので、庭先でプチバーベキューをしようと始めたりして、「やっぱり、昼ビールは美味いねぇ、ハッシーも遠慮せずに飲んでいいよ〜」と

そんな感じで、住人からの家賃収入はあるもののそれは食費光熱費込みで2万〜2万5千円ほどと信じられない金額(前回、家賃が決まってないと書きましたが、滞在スタイルによって、変動する一応の基準は存在します。)でも、それだけじゃ生活は出来ないだろう。ビールを美味しそうに飲むその姿を見ながら、この人、やっぱり謎が多いな、、と。

つづく。

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