出口の目線・27

最後の最後で棺桶の蓋を閉める時、生前最後の誕生日プレゼントした クオカードを私は手提げから取り出した。

父は急に入院し、亡くなってから気が付いたそれを代わりに母に使ってと言ったところ、お父さんにあげたものだからそれはお父さんにあの世に持っていってもらいなさいと言われた。

紙幣を燃やすことは法律に触れるのでやらないが、このような物は許されるだろうと解釈した。

結果論ではあるが、入院時の院内のコンビニで新聞やら何やら買っていたので、現実的にはその時使えばよかったのだ。

しかしあげた当時は 父が入院するとは思っていなかったので、このようになった。

『お父さん、天国でコンビニとか有るかわかんないけど お酒とか新聞とか買うのに使って…』

啜り泣きしながら私はそう言って、カードを父の枕元に置いた。

参列の方々が棺桶の中の父に最後の声を掛けて、家族はじめ全ての人が納得のいくタイミングで蓋を閉める。

火葬炉にストレッチャーで運ばれた。参列の方々もそれについていく。

座る場所も無く僧侶も居ずなので読経も無いようなひととき…

ここの人たちは…そしてまさに死人に口無しである、父はこの光景をどう思っているのだろうか。

私がお節介に気にすることではないのだが、気になって気になって仕方無い思いで、次の場所に歩いた。

【【続く】】

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