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「Aliens」910x1167mm, oil on canvas, 2020

DMに使用した作品。当初、この絵は「Descendants of Flora」というタイトルにしていました。
見ているうちに「この絵の名ではなかった!」と気づいたので「Aliens」というタイトルになりました。(なのでDMは前のタイトルのままでした)
ではまず、タイトルについてのことから書いていきます。

「Descendant」とは、子孫・末裔・門下生・・・などといった意味があります。「Flora」はローマ神話に出てくる花の女神フローラのこと。
直訳だと「フローラの子孫」というような感じです。
「Aliens」はエイリアンズ、異星人や異質なもの、外国のという意味もあります。
当初の「Descendants~」の方は、明日ご紹介する作品のタイトルになったので、そちらで改めて記します。
この「Aliens」の含む”自分とは違う者”という感覚が今回の作品群を作る肝になったため、変更したのでした。

以下ステートメントより、

植物のことを知りたくて、調べるほどにわかってきたのは、如何に「ヒト」とは違う生き物かということだった。体を形成する細胞も、生命を維持するシステムも違う。私はこんなに異質なものと、当たり前に日常を過ごしているのかと気付いた途端、恐ろしくなった。
(中略)
私たちはお互い全く違う時間の流れの中を生きている。体の組成も違えば、必要としているものも違う。そもそも明確に疎通のできない存在同士なのである。

上記のようなことから、”植物”を知るほどに恐ろしさと愛着の間を行き来しながら家中の鉢植えを眺めています。こちらの意図は確実に伝わらない相手です。なのに私は「大事にしよう」と思っている。その不思議な感覚から、キャラクター的に想起されもするし、本来のニュアンスだと排除的にとれる「エイリアン」という言葉になりました。

モチーフのことに移ります。
多分聞かれるだろうなと思っていたことは「背景にはなんと書いてあるのか?」「この花はあるのか?」。

背景にはネオンサインで「CHASING MIRAGE」(蜃気楼を追っている)と描いています。
この花は、かつて存在していた(?)チューリップです。
チューリップは、有名な17世紀オランダのチューリップ熱から着想しました。オランダでチューリップが大流行し、そのうち花が咲く前の球根の取引で大金が動くようになり、庶民まで巻き込んでのバブルとなったものの価格が急落、バブル崩壊となったという話。何年か前に小説から映画化もされていました。

当時のカタログなどに載せられた植物画には、このような二色のチューリップが多く見られます。本作はそういった植物画を多数参考にしました。
これはモザイク病という、球根に感染する病気なのですが、珍しい模様の花だということで人気になった上にバブルも引き起こしてしまった模様です。球根が弱るので、この当時の新品種は絶滅したのだとか。当時の植物画にはいろんな色のチューリップが描かれていて、紺色のようなものもあるのですが、現実的には紫あたりでしょうか。
なので、かつて存在していた(?)花です。

人間の手によって、花が祭り上げられ、また価値を落とす。
その、人間界だけで起こる熱と、自然界の変わらなさが、ヒトと植物の明確な線引きになっているような気がして、このような絵になりました。

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Room1展示風景1

今週は、この部屋の作品群から記録していこうと思います。
明日は左隣の作品「Descendants of Flora」(F80)です。

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