グランメゾン第十話の急展開。菊之助 GAKUを去る。

 最終話を前にして大きな展開があった。

 丹後学(菊之助)がシェフを勤めるGAKUに内紛があった。まず、スーシェフの 平古祥平(玉森裕太)がGAKUからグランメゾン東京へと移る。祥平を頼りにしていた丹後は、精気を失ったという理由で、オーナーの江藤(手塚とおる)は、丹後を首にして、他のシェフと契約する。

 今回の見どころは、この裏切りを告げられたときの菊之助の受けの芝居にある。
 歌舞伎には、「肚を割らない」という原則がある。

 当然、役者はあらゆる結末を知っている。なぜなら、台本を事前に読んでいるからだ。けれども、突然起こるこうした事件は、それまでの演技に織り込んではいけない。

 今回の菊之助も、まったくのポーカーフェイスでこの件りを演じている。 厨房のスタッフに、このシェフ交代劇を知っていたのか、と一言、言葉を投げつけるだけだ。
 人間の世界はこうした裏切りに満ちている。
 知らない間に、こうした交代劇が仕組まれている。
 その残酷さがこの場面に込められていた。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。