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後継経営者が押さえておきたい「ヒト」問題

さて。今回は「ヒト」をテーマにお話ししていこうと思います。

私は「アタックス社長塾」という主に後継経営者向けの経営塾の企画・運営をしているのですが、先日行われた研修が「人事・組織・マネジメント」についてでした。

その中で、受講生の皆さまの話が印象的で、

「若い社員との世代間ギャップに悩まされている」

というのです。参加されている後継経営者は40代の方が多く、若手社員の方は20代。確かに、昭和生まれと平成生まれでは違うというのは私も分かります(私は36歳)。

事業承継のご相談では現経営者の方と話をさせていただくことも多く、現経営者と後継経営者との世代間ギャップによる価値観の違いについては認識はしておりましたが…。そういう面でも後継経営者の悩みは存在しているんだな、と気づきを得ることができました。

そこで、今回はコンサルタントが使う人事マネジメントのフレームワークをご紹介しながら「ヒト」問題について一緒に考えていこうと思います。

1.マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説は、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローによって考案された人間の欲求を5段階のピラミッド構造で表す心理学理論です。

その5つの欲求とは、下から

①生理的欲求
②安全欲求
③社会的欲求
④承認欲求
⑤自己実現欲求

であり、上に上がるにつれて「高次元」な欲求という表現をします。それぞれについて、少し説明をしますと、

①生理的欲求・・・生きていくために必要な基本的、本能的な欲求(例えば、食欲や睡眠欲など)
②安全欲求・・・心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求
③社会的欲求・・・何らかの社会や集団(家庭や友人、会社など)に所属して安心感を得たいという欲求
④承認欲求・・・他者から尊敬されたい、認められたいという欲求
⑤自己実現欲求・・・「あるべき自分」になりたいと願う欲求

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96

となります。このマズローの欲求5段階説のポイントは、低次元の欲求から順番に満たされていくということです。つまり、いきなり⑤自己実現欲求について対応しようとしても③社会的欲求が満たされていない状態では受け入れてもらえない、ということになります。

現代において、①②の欲求についてはある程度満たされているので、着目すべきは③~⑤です。特に、コロナ禍においてはリモートワークの促進などによる物理的な孤立により③社会的欲求への対応は重要かな、と思います。

「理念経営」を掲げて経営されている方々も多くいらっしゃいますが、それは⑤自己実現欲求にかかわる話ですので、先ほどにもお伝えしましたが③④の欲求が満たされて初めて受け入れてもらえる(浸透していく)話です。まずは、現状を把握して適切に対応していく必要があると思います。

2.GRPIモデル

GRPIモデル

GRPIモデルは、組織開発コンサルタントのベックハード氏が提唱した組織の健全性を考えるフレームワークです。上から順に目標(GOAL)→役割(ROLE)→手順(PROCESS)→関係性(INTERACTION)の頭文字を取って「GRPI」と名付けられており、上にあるものほど重要度が高いです。

また、上から順に対処(確認や合意形成)していきます。組織の状態が良くないときは「人間関係が悪くなっているのではないか?」などと考えがちです。しかし、関係性を見直す前に「組織の目標はお互いに擦り合わせで来ているか?」「各々の役割について認識できているか?」など上から順に確認することで真因を見誤らないようにすることができます。

なお、この目標→役割→手順→関係性の順に確認するために、実は「対話」が重要である、ということも見逃してはいけません。

なかなか集まれないこのご時世では、自然と対話の回数も減りがちです。対話の回数を増やすことにより、組織の状態を確認・適切に合意形成を取ることで組織を健全な状態に保つことが必要になってくると思います。

3.1on1コミュニケーション

「1on1」はバズワードになっておりますが、つまるところ「1対1」の話です。この場合は、上司と部下のコミュニケーション手段として行うものを取り上げます。

先の話ともつながってくるのですが、従来のミーティングのやり方とは少し異なり、①上司と部下が「1対1」で行うこと、②1回あたりの時間よりも短く回数を多くとる(例えば、毎週30分程度行う)こと、③ミーティングの主導権は部下にあること(「傾聴」の姿勢が非常に重要)の3点がポイントになります。

なぜ、この3点がポイントなのかと言いますと、1on1コミュニケーションの主な目的が「部下の抱える問題点を把握」し、「一緒に解決していく」という伴走の姿勢にあるからです。

以前のように、上司が部下に指示することで業務を遂行していくスタイルは現代では難しいです。マズローの欲求5段階説で言うところの「承認欲求」の高い世代が社員に多く見られます。その社員と円滑にコミュニケーションを取っていくためには上下の関係性で押さえつけるのではなく、相手を認めて心理的安全性を高めていく必要がある(これは「社会的欲求」に応えることにもなります)。そこで、1on1コミュニケーションは良い効果を発揮します。

ちなみに、弊社では1on1オンライン導入支援という形でサービス展開をしています。ご参考まで。

4.Z世代との向き合い方

最後に、こちらもバズワードの「Z世代」について触れておきたいと思います。冒頭の社員はまさにこの世代です。

Z世代とは、概ね1990年代半ばから2010年代初頭までに生まれた世代を指しており、年齢では10歳~26歳くらいです。生まれたときからネット環境のある「デジタルネイティブ世代」なんて言い方もしています。

Z世代の特長なのですが、

  • 情報収集はSNSが7割である

  • 周りからどう見られているのか、という面を意識している

  • 間違えたくない、という意識が強い

  • モノよりも体験に感度が高い

  • 共感や共有を大切にしている

  • 社会に対する貢献意欲が高い

といったところがあるようです。このような価値観は後継経営者の皆さまの世代からすると、まさに多様性。どのように受け入れていくのか、がお悩みの事かと思います。

若干私の私見も入ってくるのですが、「そのような考え方もあるんだ」というように捉えるのは一つかと思います。富士山の上り方に静岡側からも山梨側もあるように、人によってインプットの仕方も違えば、当然アウトプットも異なってきます。自分から歩み寄って、話を聞く。そのうえで、「あなたの言っていることはわかるんだけども、〇〇という考え方もない?」とご自身の意見について考えることを促しながら、軌道修正を図るということは良いかと思います。

ちなみに、上記の点については私自身も不十分なところがありますので、頑張って向き合っているところです。一緒に頑張りましょう!

今回はここまで。
少しでも後継経営者の皆さまのお悩み解決のヒントや気づきになれば幸いです。
また、次回も宜しくお願い致します!

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