ピアノの音が聞こえる【小説】

音を奏でるものは沢山ある。代表例で言うと楽器とか。音楽とは音を楽しむと書く。有名な楽器といえばギターやピアノ。

女子高生の恋愛物語でもある。音楽を楽しむ彼女に新しい繋がりが出来る。楽譜の音符みたいに途切れないように。時間の流れを感じさせる。特にクラッシック音を聞いていると時間の流れがゆっくりになる感じがする。

日に日に上手になるのが嬉しかった。ピアノの先生の母からピアノの素晴らしさを教えられていた。初めて楽器に触れたのは小学生の時だった。得体のしれない大きなグランドピアノを見たとき、包み込まれそうな感触になった。初めてしっかりと母の演奏を聞いたときに、子供ながら感激した。音楽の神秘に触れた気がした。

楽譜などを覚えるのは大変だった。物覚えの悪い私は、言われたことを忘れてしまう。母は呆れていた。日に日に無理してすることではないと思ってきた。楽しくしたい派。次第にピアノの前にすら座ることはなくなった。

母からのお叱りを受けても。音楽のように聞き流すだけだった。自分が本気で取り組みたいと思う事が出来ればいいが、あいにくそれがなかった。だからもう一度、ピアノを弾こうかなと心の中では思っていた。

挫折したときに感じていた、もう一度戻る決断力。簡単そうで難しい悩みを抱えていた。本気で取り組んでいこうと心の中では思っている。変なレッテルを母に思われたくない。

何年経ったのだろうか?音楽室で今日もピアノを奏でてる。時間の流れが早く感じてしまう。あっという間に高校生になった。この古びた音楽室で放課後の優雅な時間を過ごすのが日課。

クラッシックの楽譜を見ながら演奏している自分に惚れていた。得意げに奏でている。ピアノという友達はいるが、学校では一人だった。比較的、誰かと共存する訳タイプでもない。いわゆる一匹狼の部類に入るのかな?

でも、好きな人は居る。友達というか、私が一方的に気になる人。でも、片思いかどうかは分からない。だって・・・

ドアが開く音とともに一人の男性が入ってきた。私の好きな人は毎日のように私の演奏を聞きに来てくれる男子。弾き終わったら拍手をしてくれる。些細な拍手でも、嬉しさはしっかりと伝わってきた。

でも、会話をすることは無かった。いや、出来なかった。前回も前々回も。気まずい空気が流れた。だけど、今日は違った。

私が立ち上がると、彼はピアノの椅子に座った。深呼吸を置いて弾き始めた。この曲、私の好きな曲。彼の弾く姿を初めて見た。これまでの感情が爆発しそうになる。

曲はサビに差し掛かった。

「好き」

私の言葉はピアノの音で掻き消された。だけど、彼の手は動揺しているのが分かった。それでも動揺を隠して、間違えずに弾き終わった。曲の上手さよりも私の言葉が伝わっているのかが気になった。

「二人で曲を弾こう」

と言ってきた。予想もしない展開が短時間で起きている。私は承諾した。初めての共同演奏。彼が近くにいる。でも、心の距離は近づけないな。

「好き」

隣で二回目の愛を伝えてみた。

「私も」

ピアノの音から微かに聞こえた一言で私の恋愛が始まった。この時だけ、音楽が止まって欲しくない。このまま隣で一緒に弾き続けたい。何度でも、何度でも。

〜作者からのメッセージ〜
音楽って素晴らしい。今回の楽器はピアノ。楽器×恋愛をテーマに書いた。物語の演出効果は様々だが、本気で考えた結果が物語の構成に表れています。この話も続きが書ければ書きたいが、難しそうだ。

植田晴人
偽名。趣味でショートショートや物語小説を書いています。音楽好き。