デンマークで入院した

いろいろなことが起きて、noteを開くのも5年ぶりだからいろいろ説明しないといけないことが多いが、とりあえず自分の記録のために書いていく。

わたし:2020年3月からデンマークに留学中。このコロナ禍でなんとか出国はできたものの、留学先の学校(フォルケホイスコーレ、全寮制)はわずか1週間と3日でコロナの影響で閉鎖。家に帰れる人は家に帰され、留学生と家に帰れない事情がある人たちのみが学校滞在を許可される。3月中旬から5月初旬まで2ヶ月弱、10人だけの隔離生活。学校再開の見通しが立たない悶々とした生活を脱すべく、わたしは学校をやめてファームステイ を開始することを決意。労働力を提供するボランティア、労働力の対価として経験・宿泊を提供してくれるホストをマッチングさせてくれるWWOOFというシステムを使ってファームステイ を開始。ステイ先はユトランド半島から船で1時間の小さな離島。持続可能エネルギーが有名な島で島の各所に風力発電が並び立ち、美しい自然景観を見に多くの観光客も訪れる。その島の農場圏ビール醸造所(農場でとれる野菜やお肉、そして手作りのビールを提供するカフェも併設)で働くこととなった。

ヤギや豚に餌と水をやりに丘を登り、野菜を収穫し、カフェで使うために洗って下準備をし、ビールのラベルを貼り、ときにはカフェの厨房で料理を作りウェイターまでやらせてもらったりと充実した日々を過ごしていた。

ホストマザーのStinne(スティーネ)はとても親切で、英語ではなくデンマーク語を勉強したい私のためにゆっくり説明してくれたり、本を貸してくれたりした。

そんな生活がはじまって1週間経って、腹痛がはじまった。腰も重く鈍い痛みがあった。

心当たりはいろいろあった。

ここのところずっと便秘気味だ、昨日久しぶりに4kmのジョギングをしたから筋肉痛かな、一昨日はとても忙しくてデンマーク人相手に店員対応しなければならなくて少しストレスだった、寒い倉庫で立ち仕事を3時間した、今まで感じたことなかったけど排卵痛かもしれない、など。

スティーネにも「なんか今日疲れてる?ケーキ食べなよ」と休憩を促されて「もしかしたら便秘かも、お腹が痛い」と打ち明ける。

スティーネは「ここ最近忙しかったからお腹にストレスかかったかな」「食物繊維と牛乳とヨーグルトあとで届けるね」「今日はつらそうだから今日はもう終わり、休んでいいよ」と言ってくれてわたしもほっとして家でゆっくりする。

日本にいる母親にも相談すると、「排卵痛かなあ、忘れてたけどママも若い頃そういえばひどかったな、あったかくして痛み止め飲めば?」とアドバイスをいただく。

たしかに、ちょうど排卵期だしそうなのかもしれない、そういうとき女性は便秘になりやすいし。

痛み止めと大量の牛乳(2リットルももらって焦った)とでなんとかなって、便秘も若干改善されて、仕事も復帰した。

排卵痛は1日〜4日続く、とインターネットで読んだけど、痛みは日に日に強くなって終わる気配がない。腰もどんどん重苦しくなっていて、婦人科系の腹痛だと思った。スティーネに便秘は良くなったけど、まだ痛いから病院に行く、と伝えてお休みをもらう。

デンマークは、病院に行くためにまずかかりつけ医に電話で予約をとらなければならない。まず事務の人に事情を説明し、そこでOKが出てからかかりつけ医に直接電話する。スティーネとわたしでかわりばんこに説明し、島のバスとの兼ね合いで「じゃあ11:00に病院来てね」ということになった。

スティーネがバスの路線図にチェックをつけてくれて、帰りはこれで帰ってくるのよ、帰ってきたら農場に寄ってどうだったか教えてね、とはじめてのおつかいのようにお世話をしてくれる。

病院についてレセプションに向かうと、デンマークに居住許可をとると必ずもらえるイエローカードをスキャンする機械だけ置いてある。しゅっとカードを通すと自分の名前が出てきて受付終了。「座って待っててね」と画面に表示され、それに従い座って待っているとすぐに名前を呼ばれて診察開始。

外国での診察は不安だったので、自分の症状を図とデンマーク語で説明した紙を書いて持っていっていた。お医者さんもいいアイディアだね、と言ってくれてなんとか問診を進める。自分で婦人科系疾患のなにかだと思う、と主張していたからかいきなり内診される。痛さを確認され、熱を測られ、「何か感染症だと思うのですぐに大きい病院にいってください」と言われる。

「オーフス大学病院の、○棟の△階。予約しておくね」

※オーフスはデンマークでコペンハーゲン の次に大きな二番目の都市

え〜〜〜〜〜〜〜?!そんな?!そんなに悪いですか?感染症って??

それからすぐ家に帰って、スティーネに報告して翌日船に乗って大学病院に向かうことになった。お腹はずっと痛いままだ。痛み止めもらえると思ったのに...!

しかも、「もし帰りの船やバスに間に合わないなら病院に泊まることになるからパジャマとか持っていきなよ」とか言われて完全にビビる。いきなり入院ですか?そんなまさかね。でも言われたので一応準備はして荷物を詰める。

スティーネには5人子供がいて、そのうちの一人がオーフスに住んでいて、ちょうど都合がつくから病院まで付き添いしてくれることになった。本当にありがたかった。

大学病院は、2019年に3つの病院が統合されて完成したものらしく、総従業員を1万人以上擁するかなり大きな病院。敷地もとてもデカい。ヘリポートがある建物がかなり目を引く。どこも広い廊下と自動ドアで、セグウェイみたいな乗り物や自転車で従業員がすごいスピードで移動している。こんなに広かったら歩いてる暇ないよね。

画像1

(公式ページより)

婦人科に案内されて、医学生っぽい女性3人と症状についてお話しする。とてもフレンドリーで、デンマーク語上手だね、日本いったことあるよ、デンマークはどう?なんのご飯がおいしい?とかいろいろ聞いてくる。

ボスみたいな女性医師が入ってきて、内診される。内診してるときにいちいち学生に説明してて恥ずかしかった。

結果、異常なし。でもずっとお腹が痛い。

異常なしなのにお腹痛がってて、わたし変な主張するアジア人だと思われてないかな、とか不安になる。

付き添ってくれてた人は「コロナの影響でこれ以上関係ない人は病院に滞在させられない、付き添えない」と言われて帰らされた。心細かったけど、ここまで来たらもう一人でも大丈夫な気がして、お礼をいってお別れした。

ちょっとここで待ってて、と言われた部屋は明らかに入院する部屋。

画像4

でも異常なしなんだよな、なんなんだろ、腸だったらそっちの検査してほしいのにな、早く痛み止めくれないかなーとぼーっとテレビを見ながら、スティーネに教わった編み物を進める。

時間は15時。船はあるけど、今からまだ待たされるならもう帰れる時間ではない。

16時過ぎにお医者さんが入ってきて「婦人科系ではないけどどっかに異常があると思う」みたいなことを言う。まず、まあ異常はないけどどこか悪いっぽいな、というぼんやりとした認識でふんふん、と話を聞いていた。お医者さんが去って、フレンドリーな看護師のおばさんが入ってきて今日はここで寝ることになるからパジャマ置いておくね、とかご飯食べれる?とか聞いてくる。

「さっきお医者さんがなんていってたかわからなかったんだけどわたしはどこが悪いの?」と思い切って聞くと(最初から聞きなさいよ)、「blindtarm」と言われる。わからないので綴りまで全部聞く。辞書にかけてもわからないのでgoogle検索して画像欄をみる。(わからない単語はこうするとすぐわかるよ!) 

盲腸。虫垂炎。なんか手術いるやつじゃない?知らんけど。

「まあとりあえず待ってて」みたいなこと言われてご飯が出てきて夜になった。

お腹は痛いけど今のところなんでも食べれるのでデザートまでちゃっかりもらってしっかり食べた。

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フリカデラ(デンマーク風ミートボール)かチキンどっちか選べた!

20時頃に「CT検査をするよ」と告知された。CT検査用の水を21時半までに飲み終えてと言われてペットボトルに入った水を渡される。

22時すぎにうとうとしていたら、「CT検査今からするよ」と言われた。明日かと思ってた。水飲むくらいだしそりゃ今日するのか、あははー。ベッドを乗り物につなげてすごいスピードで院内を走る。楽しい。速い。寒い。腹部のCT初めて撮ったんだけど、点滴みたいのを身体に流されて熱くなって変な感じになるんですね。

23時頃、完全に電気を消して寝ていたらお医者さんが入ってきて起こされる。眠くて適当に話を聞いてしまう。何か深刻っぽいことを言って、確認をとってきている。お医者さんが出ていった後に「あ、私手術受けるんだ」と時差で理解した。言語能力があまり高くないと、時差で理解することって結構ある。あ、あのときああ言ってたんだ、みたいな閃きに近い。閃いたけど、めちゃくちゃ身体がだるくてお腹が痛いのでとりあえず寝た。

かなり寝ていたのに起こされる。スマホみたら3時。何何?と思っていたら、すごいスピードで運ばれる。おじいちゃん看護師が何を言っているのかわからない。けどなんか励まされてる気がする。

ドアには手術室入り口、ってかいてあった。「やっぱりあってた!」と思う。もう何もできないのでベッドに寝転がって「ママやスティーネに手術するって連絡しとけばよかったなあ」と今更思うがしょうがない。

手術用の帽子みたいのをかぶされて、いろんなお医者さんや看護師さんに自己紹介される。「わたし寝れるんだよね?」とアホみたいな確認をする。(麻酔、なんて普段の勉強で習わないでしょ)

「寝れるよ、大丈夫、よく眠ってね、Haruuuna...」と応援されながら麻酔かけられる。麻酔はツンとまわって眠りに落ちて、それで手術は終わり。

起きると他の患者さんもいる音の溢れる部屋で寝かされていて、鼻と腕に管が繋がれていた。腹部はちくちくしてて良くなったのかどうかよくわからない。

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「起きたのね、今日家に帰れるよ」と言われる。

いや、帰れません。

今から船乗って帰れと?無理です。

ご飯たべたり、ママにメッセージ送ったりして落ち着いてから、「わたしの状況を看護師さんからスティーネに説明してほしい、うまくいえないこともあるから」と伝えると、快く引き受けてくれた。

それから「今日は島に帰るのは大変そうだね。患者ホテルに移動して今日はそこでゆっくりしてね」と言われて安心する。患者ホテルって何だろう、まあそういうのもあるんだなー、遠いのはやだなー。

と思ったら、病院内にあった。イメージとしては、看護師さんがつきっきりじゃない病室。ご飯もカフェに自分で食べにいって、夜も自分で電気を消して眠る。

つきっきりじゃないといっても、フロアに毎日看護師さんが1人はいて、部屋の内線でいつでも呼べる。手術の傷跡がずきずき傷んで、歩き方がへんでも、ひとりで生活はできるからとりあえずは退院ってことか!と納得。

日本みたいに「大事をとって」みたいな「なんとなく」入院させることはないんだな。できることは自分でやって、って感じ。

デンマークはこのホテルも含めて医療費は無料だし、高福祉高医療の維持にはこういうメリハリが大事だよなと感じた。

このホテルに1日だけ滞在して、今日島に帰ってきました。

スティーネの二番目の長女の彼氏が車で病院から島まで送ってくれました。

医療スタッフ、スティーネ、スティーネの家族、みんなにお世話になって帰ってまいりました。ありがとうデンマーク!

まだ痛みはあるけど、よくなるでしょう。

すごい経験になりました。医療系の単語もちょっと覚えたな。

基本的にずっとデンマーク語で会話できたのも嬉しかった。

おわり





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