【論文紹介】30分の運動で脳をすっきりさせられる仕組みとは?
前がき
コロナウィルスの件もあり、家にいることが多くなった昨今の情勢。
家にずっといると身体を動かす時間が減って、頭が休まらない状態になっている方も多いと思います。
時間も沢山あったので、こんな本を読んでいました。
以前、運動することで海馬神経の新生が起こり、パフォーマンスを向上させる記事について書きました。
今日はその内容を発展させ、脳内神経の活動を促進する物質について紹介します。
うつの人は海馬神経の新生が起こりにくい
なんだか気持ちが落ち着かなくて憂鬱な気分になっているときは、脳が適切に機能していない状態にあります。
特に、うつ病を患っている方は、脳内の髄液中セロトニン濃度が低く、海馬の神経新生があまり起きていない報告が多いそうです。
不安や恐れといったストレスが慢性的に続くと、自律神経系の活動が収まらず、ストレスホルモン産生臓器とも言われる副腎からコルチゾールが過剰に分泌され、海馬を酷使してしまいます。
心理的ストレスは海馬を通って扁桃体を通し、不快感情・感覚を体験します。その後に間脳視床下部などを通り、ストレスホルモンが分泌されます。
海馬が感情の統制を司っていることから、酷使すると筋肉と同じように筋肉痛のような機能不全が起きてしまうのです。
現代社会はストレスが多い社会です。いつでも仕事ができる環境にあり、人間関係が多様化し、太陽の光を浴びない生活も多くなってきました。
特にコロナの情勢下で人と会う時間も減ったことや雇用が不安定になったことでよりストレスを感じることが多くなったと思います。
そんなストレス下に置かれている中でいかにストレスに対処していくのか。その一つに運動が不可欠になります。
運動すれば脳内神経活動は活性化できる
運動をすることでカチコチになった脳内神経を活性化できるのです。それに寄与しているのが、脳由来神経栄養因子(Brain-Derived Nutrition Factor, BDNF)という脳内タンパク質です。
BDNFは、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の伝達を活性化する役割を持っていると言われています。
運動もアドレナリンの放出などもあり一種のストレスでもありますが、自発的に運動をすることがセロトニン神経系の活性化、脳内BDNF量の増加に繋がるのです。
畿央大学の研究によれば、30分の自転車こぎ運動の後尿中セロトニン濃度が、運動をしなかった群と比べて高かったそうです。
こちらの研究では抗酸化物質を投与された群で高強度の運動を行うとBDNFの量が増加していたことが分かりました。
運動によってセロトニン神経系が活性化し、脳内のBDNFが増加することにより、不安や緊張状態を軽減することができるのです。
運動をすると気分がよくなる仕組みが、次第に解明されつつあります。
最大心拍数の60~75%を30分運動しましょう!
運動するにあたり、運動強度・時間・頻度をどうすればいいのかが壁になると思います。
多くの科学者が適切な運動レベルは何なのかを研究してきていますが、まだまだ研究途上にあると言えます。
厚生労働省が勧める運動強度は、中等度の運動でした。その中等度の運動をすることによりBDNFの量の増加が認められた研究があります。
これは2017年に発表された研究で、脳卒中の慢性期の患者において最大心拍数の50-63%の群と、64-76%の群に分けて有酸素運動(6分間のウォーキング)を30分してもらったところ、後者の群でBDNF量の有意な増加が認められました。
この研究からは、軽すぎる運動よりも中等度の有酸素運動をするほうが脳内のBDNFの量が増加することが示唆されます。
先述したラットの研究では、12週間の期間の中で30分以上中等度の有酸素運動をし、抗酸化物質を投与されたラットが最も脳内BDNF量の増加が認められました。
運動をどの程度すればいいのかが見えてきましたね。中等度の運動をするにあたって重要なことは、自分の心拍数を測定することです。
理論上の最大心拍数は、「220-自分の年齢」になります。私は23歳なので、最大心拍数は197。その60~70%は118~138ということになります。
心拍数はスマホの運動系のアプリで測定できますので、ぜひ運動する際には心拍数の測定をして、自分がどのくらい運動をすればいいのか知ってみてくださいね。
参考文献
1.うつ病と海馬新生
2.畿央大学ニューロンリハビリテーションセンター 運動によるセロトニンシステムの活性化が不安を軽減する
3.高強度運動時における抗酸化物質投与が海馬脳由来神経栄養因子(BDNF)発現に及ぼす影響
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