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在庫処分はカレーで。

「おいしーごはんが食べたいなー。あー、」

冷蔵庫を覗き込めば、目ぼしいものはなく、暗闇を照らすあかりがいつもより明るく感じた。
いつのかわからないソースは腐らないという謎の自信をもってドリンクホルダーに鎮座している。
牛乳パックは空。空なんかい。捨てろ。

「んぇー?」

ガラゴロっとあけた冷凍庫には霜が降りそうな豚こまを発見。

「お肉みっけー。」

記憶を頼りに引き出しを開けると未開封のカレールーを発見。
賞味期限も問題ない。先日お迎えしたばかりだもんなー。
ゴロゴロとカゴにおさまっていたにんじんとじゃがいもと玉ねぎを無造作にシンクに放り込む。

「お、さつまいもも入れちゃおー。」

いいじゃんいいじゃん、と玉ねぎの皮を剥いて、芯を取り、適当に櫛形切りにした。
早々に油を引いたうちで一番でかい鍋に放り込んで火にかけた。最初は鍋も冷たいし強火でいい。

にんじんと芋達は亀の子タワシで遠慮なく洗ってやる。
芋の芽は毒なので、こちらは怪しいと思ったら全部くり抜く。
おかげで月も笑うくらいクレーターまみれである。
てきとうに乱切りにしたニンジンを、温野菜ができる容器につっこんで電子レンジに入れたらつまみを適当に捻った。適当はよくないが、こんなもん慣れだ、慣れ。

鍋の中をその辺の木べらで混ぜて、中火に落としてやる。ちょっと焦げるくらいは個性だ。4割までなら焦げはコクだと思う。自論だから世論はしらねぇ。

まな板に放っていた芋をにんじんと同じくらいの大きさにする。溶けるから半分でも半分の半分でもいいけど。うちは、時間があるときはピンポン玉くらいのゴロゴロ。面倒で早く食べたいときは丁半なサイコロくらい小さくなる、、次の日には存在はない、ドリアにすると最高。
切ったら切ったで水を張ったボウルの中に飛び込ませていく。
全部終わったら愛情を持ってひと混ぜふた混ぜ。……しなくてもよい。

玉ねぎの炒め具合はお好みで。全然炒めてなくても煮込むので生でもいい。ただちょっと茶色い方が甘い気がする。コクとかある気がする。
なんかちょっと時間をかけた方が自分へ愛情をかけてる気がするから、食べたとき美味しいかもしれない。これもひとそれぞれ。

レンチンしたニンジンを鍋にぶち込み、レンジには選手交代で芋を突っ込む。これはもう早く食べたいからレンジに突っ込んでるだけで、別に生のままにんじんもじゃがいももつっこんでいい。

解凍不完全な板の肉をちょっと大きいこま肉だし、固まったまま包丁で8当分してみた。遠慮なく鍋に突っ込んで、芋を待つまで炒めてみる。

こだわりがあれば香辛料を入れてもいい。
意外とシナモンもいける、なんかちょっとオシャレな味になる。
うちはシナモンにおかしな信頼を置いているが、好みは分かれるだろう。

芯まで熱くなったっぽい芋達を、解凍もままならない肉のいる鍋に突っ込んだ。
それから遠慮なく水を入れた。500mlらしいビールグラス2杯ほどいれて、具が浸ったら火を強火にして灰汁を取りながら肉が解けて火が通るのを待った。

あまの袖は変わらないらしいが、肉は美味しそうな色に変わった。
火を止めるらしいが、面倒なのでパキパキ割ったルーを遠慮なく鍋に入れた。
冷蔵庫にあとちょっとだけ残っていた不老不死のソースも突っ込む。
トマト缶だろうが、ジャムだろうが、ワインだろうが、カレールーは最強なので何を入れても出来上がるもんはカレーである。

カレーにならなかったカレーなんか見たことない。

冷凍ご飯を贅沢に2つ電子レンジに入れてワルツでも踊ってもらう。
とろみが出てきたカレーを見てやっと火を止めた。
お気に入りの器は全然カレー皿じゃない。丼は丼でもラーメン丼である。それももやし一袋盛っても、チャーシュー5枚乗せてもこぼれなさそうな器。

器がでかいってのはいい事だ。食いっぱぐれなさそう。生涯。

「あちっ、あっちっちっちっち」

ラップを解いて丼に乗せ、これから使うスプーンでお情け程度にほぐしてやり、スプーンを咥えた。

「んー、しゃいこぉ(最高)。」

たっぷり、遠慮なく米の上にかけていく。
ルーより具を多めに、ゴロゴロと。ちょーっとお肉多め。

「えへ、神は8日後にはカレーを作ったに違いねぇ。」

作業台の上を適当に物を寄せて、カレーを供える。
ついでに冷たいお水も用意。

「いただきまーす。」

1人明るい声がちょっと広い8畳間に溶けていく。
口に含んだ芋がほっくり甘く、どうやらさつまいもを当てたらしい。
柔らかいにんじんも甘く、肉は細かいながらにも主張してくれる。
じゃがいもはホクホクしながらも食べ応えがあってよい。
米は冷凍していたが新米だったからか、こちらも甘いし、遠慮ない二つ分なので口いっぱいに頬張れる幸せが胸いっぱいである。

「えへえへ、おいしい。」

1人ご飯はちょっと寂しい。
日当たりのいい土曜日。誰かがいればと思いながらも、お手軽で誰にも迷惑をかけない料理がとんでもなく楽で美味しいので、結局はもうしばらく1人でもいいかなと思うのだった。

材料(2日か3日分)

玉ねぎ 1個(リンゴくらいの大きいやつ。2日目には溶けるので2個でもいい)
にんじん 1本(赤ちゃんの腕くらいの可愛いサイズ。大きくてもいい。)
じゃがいも 2個(野球ボールくらいの大きさのやつ。)
さつまいも 1個(にんじんと同じくらいの大きさ。おまけ)
豚こま肉 1パック(500g カレーの肉なんてなんでもいい。ステーキでもいい)
水 1リットルあるかないか(困ったらカレールーの箱に書いてる)
カレールー甘口 1箱(お好みの味、メーカーでよき)
不老不死のソース 大さじ2くらい(お好み焼きソースだった模様)

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