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digzymeへの新規投資

2021年8月10日のプレスリリースの通り、Plug and Play Japanの投資部門であるPlug and Play Venturesは株式会社digzyme(以下、digzyme)のPre-Series Aラウンドでの出資を発表しました。

Plug and Play Japan、東工大発バイオインフォマティクススタートアップの株式会社digzymeへ出資を決定 (Plug and Play Japan)

AI×バイオ生産で環境と経済の両立を目指す株式会社digzyme、プレシリーズAによる資金調達を実施 (PR TIMES)

新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォームを手がけるdigzymeが約1.5億円のプレシリーズA調達 (TechCrunch Japan)

このたびdigzymeを、我々のPortfolioファミリーに新たにお迎えできることを大変嬉しく思います。本記事では同社の技術紹介をしたいと思います。

digzymeの概要

digzymeは、東京工業大学発のDeepTechスタートアップです。2019年11月に当時博士課程に在学中のCEO渡来直生さんにより設立されました。バイオインフォマティクスを用い、プラスチック、医薬品原料、顔料、香料、燃料など様々な化合物のバイオ生産を加速させる技術を開発しています。

バイオ生産とは、生物が作り出す酵素(enzyme)を化学反応の触媒に用いることで、通常天然資源からの抽出量が非常に限られている有用な化合物を安全・安価に生産できる生産手法のことです。現在の化合物の化学合成は、石油資源を使用したプロセスが主流ですが、経済的・環境的コストが高くなってしまうという課題があることから、今後はバイオ生産を活用した市場の拡大が期待されています。

一方、バイオ生産が可能な化合物の数は限られています。なぜなら、酵素には非常に多くの種類が存在し、これまでに蓄積されてきた基礎研究データだけではすべてを網羅することが難しいからです。

酵素遺伝子は、既知のタンパク質データベースの中だけでも1,200万種類以上も存在すると推定されていますが、既知の酵素触媒機構は1,000程度、反応化合物は1万程度に留まります。また、すべての酵素遺伝子のうち正しく機能分類されているものはわずか10%程度に過ぎないとも言われています。通常、酵素の反応経路を確認するためには1つずつ地道に実験により検証していかなければなりません。しかし、限られたヒューマンリソース、時間、予算の中ですべてを実験するのは不可能です。

そこで、digzymeはバイオ生産のR&Dにおいて、「未知の遺伝子群から目的の酵素遺伝子を掘り当てる技術」を開発し、バイオ生産に取り組む化学・製薬メーカーをサポートすることで、R&Dにかかる時間、コスト、ヒューマンリソースを短縮/削減しようとしています。これにより、最適な合成経路を発見し、化合物の合成コストや環境負荷を抑えることが可能になります。

このように、酵素(enzyme)を掘り当てる(dig)事業であるため、社名はdig enzyme→digzymeと名付けられています。

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ライフサイエンスの分野では、人が細胞などを取り扱って生物的な実験をする部分について「Wet(ウェット)」と呼び、コンピューターのみを利用して解析する部分を「Dry(ドライ)」と呼びます。digzymeの強みは、バイオ合成系開発におけるドライ部分です。ドライの解析はバイオ生産のR&Dにおいて強力なソリューションではありますが、専門家による精緻な解析や解釈が必要であり、依然として人間の経験や勘に頼る部分が多く、人的コストがかかっていました。digzymeでは専門家レベルの解析をAI化することにより、R&Dプロセスのペイン解消に取り組んでいます。

digzymeの技術・サービスにより材料R&Dプロセスが加速し、環境負荷の小さいバイオ生産で、より良い社会になっていくことを願っています。

CEO渡来さんのインタビュー記事もご覧ください。

Portfolio Interview: 酵素の持つ可能性を掘り起こす。株式会社digzyme

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Plug and Play Ventures, Harunori Oiwa (Haru)
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