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サバイバーからの伝言

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虐待被害に合い、生き辛さを感じてもがき苦しむ人たちへ。 私があなた達に伝えたいことは、2つだけ。 『あなたは、悪くない』『生きて』
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#エッセイ

【ここでエッセイを書く前に、あなたにはほかに、やるべきことがあるはずです】

【ここでエッセイを書く前に、あなたにはほかに、やるべきことがあるはずです】

助けて、助けて、助けて。

頭のなかで、誰にともなく呟きながら、ぐるぐると旅先の寺を歩き続けた。縁もゆかりもない寺の神様が助けてくれるわけもないのに、ほかにすがれるものがなく、ひとり泣きながら新緑とツツジが彩る庭園を徘徊した。
2022年4月6日、私は、損なわれた。

ひとり旅をしよう。
そう思い立ったのは、今年の3月頃だった。解離の症状が軽快し、経済基盤が整ったことが決断を後押しした。何より、「

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【こんな世界は、もうたくさんだ】

【こんな世界は、もうたくさんだ】

物事も人も多面体で、誰がどの角度から見るかで捉え方は大きく変わる。どこを切り取り、どこに焦点を当てたのか、何が事実で、何が虚像か、本当のところなんて、当人にしか分からない。だからこそ、時々思う。公にされていない事実の中に真実が隠されていたとしたら、「正しいもの」として表に出たものが「誤り」だったとしたら、一側面だけを見て感情任せに吐いた言葉は、一体どこに向かうのだろう、と。



映画『流浪の月

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【“それくらいで”なんて、そんな言葉で他者の痛みを片づけていいわけがなかった】

【“それくらいで”なんて、そんな言葉で他者の痛みを片づけていいわけがなかった】

自分以外の人間の痛みに、ひどく鈍感だった。

誰かの痛みに躊躇いなく「No」を突きつける。過去、私はそういう人間だった。他者の悲鳴を耳にするたび、「これくらいで」と思っていた。10代の終わり頃、私は自分の痛みを武器に、無意識で人を殴っていた。



虐待サバイバーである私は、過酷な原体験ゆえに心身に数多くの支障を抱えている。主にメンタル面がうまくコントロールできず、時々欠ける記憶にも振り回され、

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【今日この日まで命を繋いできた事実を、どうか、否定しないでほしい】~メンタリストDaiGo氏の差別発言により、希死念慮と格闘したサバイバーのひとりとして。

【今日この日まで命を繋いできた事実を、どうか、否定しないでほしい】~メンタリストDaiGo氏の差別発言により、希死念慮と格闘したサバイバーのひとりとして。

日々さまざまな人たちが、自身の価値観を元に多種多様な発言をしている。「個人の感性」では済ませられない発言を目にするたび、ぐらりと眩暈がする。Twitterのタイムラインに流れてくる情報は、振り幅があまりにも大きい。正しいもの、有益なもの、心休まるもの、笑顔になれるもの、美しいもの。それらに混ざって、この世の絶望を煮詰めたような台詞や主張、事件などが容赦なく流れ込んでくる。

メンタリストDaiGo

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【“いつか”じゃなくて“今”、助けてほしいんだよ】

【“いつか”じゃなくて“今”、助けてほしいんだよ】

頭のなかに溢れる思考を書いて表に出す。私にとってそれは一種の儀式であり、書くことによってバラバラだったそれらが整理されていく場合も往々にしてある。

疲れたときほど、苦しいときほど、私の両手は止まらない。時間を忘れて書き続け、ふと気づくと日を跨いでいる。そんな夜は特に珍しくもなく、あぁそろそろ寝ないとなぁ…とぼんやり思いながらも、最終ピリオドを打つまで私の手は止まらない。

Twitterの140

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【cotreeアンバサダーを辞退します】~性虐待サバイバーである、私が今思うこと。

【cotreeアンバサダーを辞退します】~性虐待サバイバーである、私が今思うこと。

この記事は、cotreeアンバサダーとして活動してきた経緯から伝えたいと感じたこと、また、性虐待を含む虐待被害、性被害を訴え続けてきた私個人の想いを綴ったものです。
この記事の内容が被害にあわれた方々の心情にそぐわない、もしくは傷つけるものであった場合、直ちに加筆、修正いたしますので、お声がけいただければ幸いです。
(※2021年5月11日、追記)

自身が過去に受けた被害と同様のものに触れると、

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【余力があるときだけでいい。どうか、一緒に考えてほしい】

【余力があるときだけでいい。どうか、一緒に考えてほしい】

波の音を聴きながら、ひたすらに沖の水平線を眺めていた。逆巻く感情の嵐が過ぎさるのをじっと待つには、それが一番いい。

昨年11月に精神科の医師から障害年金の申請を勧められた。必要な診断書類を各病院から掻き集め、ようやくそれらが揃ったのは先月の終わりだった。自身で書く申立書が最難関だった。何せ、20年ぶんの既往や生活状況を記さねばならない。しかも申請を通すために、辛かったこと、苦しかったことにフォー

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【書いて、生きる】

【書いて、生きる】

 一人きりで書いていた頃には悩まなかったことで、定期的に頭を抱えている。私は日頃、虐待抑止に繋がってほしいとの想いから、被虐待児であった原体験をnoteに綴っている。故に、どうしてもテーマが重い。過去の体験を書く際、その重さの割合にいつも頭を悩ませている。公開を前提とした文章を書く。それには他者からのあらゆる評価が飛んでくる現実を受けとめる覚悟が要る。

「他人の不幸話なんて聞きたくない」
「不幸

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【それでも私は、この文章をこのまま公開する】

【それでも私は、この文章をこのまま公開する】

 医師との間に信頼関係が築けていたとしても、病院に向かう足取りはいつだって重い。言葉にして話すことで、それが現実に起きたのだと再認識する過程は、とても苦しい。悪い夢であってくれたらよかったのに。そう思いながらも、これが紛れもない現実であると誰よりも知っていた。

「退院後の生活はどうでしたか?」
「何とかやっていました。ただ、酷く疲れていて。記憶が混乱しています。自分以外の誰かが生活している場面を

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幡野広志さんへ。

幡野広志さんへ。

はじめまして。はると申します。
以前、旦那のDVに苦しみ別居を決意したnoteを書いたとき、幡野さんが読みに来てくださりTwitterでシェアをしてくれたおかげで、たくさんの方がnoteを読んでくださり、サポートやコメント、シェアという形で応援してくださったことがありました。別居を決意できたのも幡野さんの書籍の言葉に後押しされた部分が大きかったので、今でもそのことを心から感謝しております。

今回

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「きれいごと」を諦めない大人でいたい。

「きれいごと」を諦めない大人でいたい。

「そのことがずっと不安で、怖かったんですよね?」

返事をしようと思ったのに、うまく声が出なかった。そのぶん、何度も何度も頷いた。
マスクのなかに流れ込む滴を止めることができなかった。そんな私に、白衣を着たその人はそっとティッシュを差し出しながら、私が一番聞きたかった言葉をくれた。

「大丈夫ですよ。だってあなたは、こんなにもお子さんを大切に想われているじゃないですか」



お日様がぎらぎらと

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もう誰にも、こんな思いはしてほしくない。

もう誰にも、こんな思いはしてほしくない。

梅雨が明けた途端、一気に猛暑が襲ってきた。熱中症警戒アラートが鳴るなか、それでも何かとやらねばならないことは尽きなくて、一日中家の中で過ごすわけにもいかない。外に出た途端に熱気が喉を塞ぐ。むせ返るような暑さが、じりじりと内臓を焦がす。

子どもたちのことだけで充電がゼロになる日々が続いている。予備のバッテリーが搭載されていないこの身体は、燃料が切れた途端に上手く動かなくなる。

時間軸が大幅にずれ

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“生かすため”の議論を。

“生かすため”の議論を。

一人暮らしをしながら介護の仕事をしていたとき、無資格で中卒だった私の手取りは、10万円前後だった。そこからアパート代、光熱費、携帯代、保険代、駐車場代含む車の維持費を支払って手元に残った額が、私の食費だった。

擦り切れた下着を履き続け、靴下の穴は小学生の時から使い続けている裁縫セットで縫った。同年代の友人たちが大学へ通い、バイト代で海外旅行の計画を立てている。羨ましいを通り越し、もはや別次元の世

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公平である、ということ。

公平である、ということ。

こちらの記事には虐待、犯罪などのセンシティブな内容が含まれております。読み進めるかどうかのご判断は、各自でお願い致します。

何かしらの犯罪が起きたとき、いつの世も人々は思い思いに声を上げる。その声は、立ち位置によって違う。両極にある考えの人もいれば、似ているけれどすべて同じとは言えない人まで、その様相は様々だ。

プロフィールにもある通り、私は虐待サバイバーだ。傷付けられる側の生活を、長年強いら

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