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ラブレターのはなし

夏目漱石がI Love youを「月が綺麗ですね」と訳したという有名な逸話がある。なんて素敵でロマンチックなんだろう。ちなみにこの言葉への返答は、「私死んでもいいわ」だそうで、なんだかそちらも非常に素敵。

貴方の隣で見る月が美しいのか、貴方を思いながら見る月が美しいのか。それとも、月という当たり前の存在も、貴方と出会って美しいと感じるようになったのか、月が綺麗という当たり前の会話を貴方とするというのが史上の幸せであるという心持ちなのか。
色々考えちゃうよね。

私だったら何がいいだろう、何を言われたら愛を感じて私死んでもいいわなんて答えちゃうのかしら、ふわふわ微睡む頭で想像してみた。

「昨日あなたの夢を見ました。」

なんて言われたら、まぶたの内側がチカチカするようなむず痒い気持ちになりそうだ。意識のない夢の中に出てきたなんてアイラブユーじゃないか。いつかとても好きな人に言ってやろう。決めたぞ。

私はこういうのが大好きで、好きな歌でもILoveYouを使わずに愛を伝える(愛を感じる)ワンフレーズに痺れまくっている。

例えば、カネコアヤノさんの「祝日」という歌の

「あなたが振り返らなくても 姿が見えなくなるまで 気づかれないように見送る」

という一節。
生活の中の愛情という感じでとても好きなフレーズ。遠ざかる背中を、この先幸せしか降り注がなければいいのに、願わくばそこに自分もいればいいのに、と思いながら眺めているように感じる。

奥華子さんの「はなびら」という歌の

「あなたに出会えなければ この空の青さも知らないまま」
という一節。
この歌は過ぎた大切な時間の歌で、現在進行形で恋ではないかもしれないけれど、その日々を丸ごと愛するような、そこにあった疑いようもない愛を大切に抱えてひとり進んでいくような歌だと思う。すき。

あとBUMP OF CHICKENの「宇宙飛行士への手紙」とか「ゼロ」とか、挙げだしたらキリがないな。

多分、恋に憧れがあるとかそういうことではなく、大切な人や好きな人のことを思いながら過ごす時間を丁寧に描いているものが好きなんだと思う。

今泉力哉監督の「mellow」という映画のエンドロールがものすごく美しく感じたように。
勿論本編も大好きで、すごく上質で純粋な優しい炭酸水を飲んでいるような感覚に陥る作品だった。

主人公はお花屋さんで、好きな女性(ラーメン屋さんの二代目)が父から受け継いだ店を畳んで自分の夢の為に行動することを決めたため、その店の最後の日にお客さんひとりひとりにバラの花をプレゼントするというシーンがある。
エンドロールでは、明け方まで主人公がひたすら、その花を一輪一輪丁寧に剪定し透明なフィルムで包みリボンを結ぶという作業の様子が延々と流れる。とにかくその姿がとても、言いようもなく美しいなと感じた。
派手ではないけれど、自分の好きな人のことを考えながら、その人が少しでも喜んでくれるかもしれないことのために使う時間の尊さ。本当に、あの映画はエンドロールで立って出てっちゃ勿体なさすぎる。本当に美しい時間が流れていたように感じた。

恋愛だけじゃなくて、友愛でもその尊い時間を感じるとえも言われない気持ちになる。
大好きなBUMP OF CHICKENの「友達の唄」という歌がまさにそれだ。

「今私が 泣いていても あなたの記憶の中では
どうかあなたと同じ笑顔で 時々でいいから 思い出してね

〜中略〜

信じたままで 会えないままで どんどん僕は大人になる
それでも君と 笑っているよ ずっと友達でしょう」

私は今、小学生の頃の友人たちの連絡先をほとんど持っていない。たくさんの時間と人の流れの中で、お互いの優先順位がどんどん変わって、今一番大事な友達じゃなくなっていったんだと思う。新しい出会いと別れと、それ以外のコミュ二ティ。あの頃、唯一絶対無二だと思っていた子達にも、別の親友ができて、別な環境で、別の考えを持つようになっていく。

でも、当時一緒に秘密基地を作ったことも、同じ帰り道を帰ったことも、中学に入って距離感が上手く掴めなくなったことも、きっと全部込みで、また会えたら楽しくおしゃべりが出来たらいいなと思う。今どこにいるのか分からない子も沢山いるし、二度と会えないかもしれない子も沢山いる、仲違いしたわけじゃないのに距離と共に自然とお互いのことを忘れていった。街ですれ違ってももしかしたら分からないかもしれない。
でも、あの時私たちは本当に友達だったし。
だから、友達として覚えておきたいのかな。


同じ環境にいたはずなのに、別に距離が離れたわけじゃないのに、ゆっくりと友達じゃ無くなっていった人が沢山いる。

逆に、距離も離れたし何年もあってないけど、友達だと思いたい人もいる。


初恋の人が今どこで何をしているか知らないけれど、思い出はどんどん美化されてぼかされて、気づかないうちに私の中で尊い黒歴史になってるような。

という日記。

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