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無防備な彼女

彼女と旅をしている。
二人で外国を巡る旅はこれが初めてだった。前もって計画を立て、ホテルを取り、良い景色を見つければお互いに写真を撮りあう、そんな彼女にとって当たり前の旅行の仕方が、孤独なバックパッカーだった自分にとっては新鮮で、少し面倒なものだったが。

彼女は、ここが日本を遠く離れた外国だというのに、電車に乗ると必ず眠ってしまう。それも熟睡。危機感が無さ過ぎるのではないだろうか。
曰く、体力回復のためとのことだが。彼女が寝るので、僕は降車駅を過ぎないよう起きているはめになる。

電車の窓から見える景色は、のどかな山と里と街の風景。日本にもありそうな景色のようで、建物の形や屋根の色の統一感が、日本とは違う。訪ねていけばこんな外国人でも陽気に受け入れてくれる穏やかな土地のように思えるが、実際はどうなのだろう。とりとめもない事を考えているうちに、外の景色はどんどん変わっていく。

視線を前に戻すと、やはり彼女は眠っている。
電車の中でこんなにしっかり眠れるものなのか。彼女はわかっているだろうか、大げさに言うと今、自分の命をすべて僕に預けている状態だということを。

旅の途中で買ってあげたネックレスをつけながら、彼女は満足そうに眠っている。外の景色をカメラに収め、そのまま目の前の眠る彼女を撮った。

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制作後記

電車内で熟睡する自分の写真が出てきたので、それを元にこの話を書いてみました。俯き加減のこの角度、悪くなくないか。なくなくないか。

新婚旅行でイタリアに行った際、パックツアーではなく個人で行ったのですけど、旅の細かいことは夫に丸投げで自分は旅を楽しむばかりで、帰国後申し訳ない気持ちになりました。はっはっは。

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