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10年前に気づいた『アフリカ』の不思議な力の話

『アフリカ』最新号(vol.29/2019年7月号)、いつも直接、買っていただいている方々、「読みたい」と(今日までに)ご連絡いただいた方々へは全て発送をすませたところです。数日たっても届かないということは何かのトラブルですから、お手数ですがご連絡を。──なんてことは、ここで言っても仕方ないか?

発送をすませた足で、また障害のある人を"支援"する仕事に出て(自分が一方的に支えているというふうには思ってませんが)、その仕事をすませて家に戻ったら、新しい本づくりの仕事を進めたり、『アフリカ』をあともう少し遠くまで届けられるように工夫することも続けよう。

さて、今週はもう少し、『アフリカ』の話を続けます。今年はここに毎日書くと決めて書いているので、どんなに内容が薄くたって書かなきゃならない。そう決めているのは自分なのだけれど。へんな奴でしょう?(でも2日に1回とか、3日に1回とかよりは毎日書くほうが自分には楽なんです)

『アフリカ』には、だいたい同じようなメンバーが書いている、そんなふうに見えるかもしれない。

しかし、それは決まっているわけではなくて、なんとなくそうなっているだけのことだ。『アフリカ』には同人制度みたいなものもない(同人雑誌ではないという意味はそういうこと)。ただ、ぼくが編集している雑誌なので、書いたものをぼくに読ませたいという人なら、誰でも書ける(載せるかどうかは編集人次第だ──というより、『アフリカ』編集人との"セッション"に参加したいと思える人でないと載せられない)。

今回、「月と車椅子」という文章を寄せてくれた中村広子さんがブログで、『アフリカ』のことを書いているのを先ほど読んだ。

「アフリカにチベットのこと書いてええのん?」
ほろ酔いで言った、くだらない冗談から始まったのだ。
インド、ネパールのチベットエリアをひとりで周って帰ってきたばかり、人に伝えたい、と、強く思うことがあった私の前に、赤い表紙が目を惹くその雑誌が現れた。

2009年、春の話だ。

その前年だったか、某県の職員の方から、大阪である方のトーク・イベントをやるのだが、写真やアートに関心のある若い人に伝えるにはどういったところでチラシを置いてもらうのがいいと思うかという相談が、どういうわけか、まわりまわって来た(ぼくは当時大阪に住んで大阪で仕事していた)。

そのイベントに招待されて、打ち上げの席にまで参加していたのだが、その日の主役に『アフリカ』をプレゼントしたら、「こんな雑誌をいただきました。面白そうですね」みたいなことを皆の前で言われて、その時、テーブルを挟んでぼくの目の前に座っていたのが、中村広子さんだった──らしい。

その時、最新号だったのは、赤い木の『アフリカ』だった(「ブロッコリー?」と言う人もいた)。最近になって聞いたことだが、じつは、その表紙のインパクトも、かなり大きかったらしい。

たぶんぼくは中村さんと話して、当時おふざけ半分でつくっていた『アフリカ』編集人の名刺を渡したんだろう(覚えてないのだが)。数日後にメールが来て、書こうと思うのだが、マックで原稿を書くなら何がいいか、といった妙な相談だった。その時は、そんなことおれにきくなよと思ったが…

まさかその人が、その後の『アフリカ』で連載をもち、連載をするならもっと発行頻度をあげて出したほうがいいねという話になって(1年間だけ、だったけれど)隔月で『アフリカ』を出すようなことになろうとは想像もできなかった。

『ゴゥワの実る庭』という、旅の記録みたいな話なのだが、なんか、そんな言い方ではあの原稿の面白さは伝わらない。たとえば「祈る」とはどういうことなのか、あれを読むとたくさんのことが感じられる。──そういう作品なのだ。

ぼくはいま、次の、次の、そのまた次のアフリカキカクの本として『ゴゥワの実る庭』を出したいと考えている。でも中村さん自身は、そういったことにそれほど興味があるわけではないらしい。それがまたぼくには興味深いのだけれど!

中村さんが初めて書いてくれた「大通りから一歩その街に入る」は、ちょうど10年前の、2009年7月号の、表紙をひらいた1ページ目に載っている。

(ひらいたら扉ページがあったり、写真のページがあったり、というのに飽きていたぼくは、表紙をひらいたらいきなり文章が始まる、という雑誌づくりを意図してやっていた。)

その号の前後では、『アフリカ』は見違えるほど、変わっている。

それまでぼくは『アフリカ』を同人雑誌の延長でしか考えていなかった。じつはその頃、それまで書いていた人がひとり、ふたりと去って行き、『アフリカ』は終わってもおかしくなかったような気もするのだ。が、ひとり去ればひとり、ふたり去ればふたり、「書きたいことがある」という人がやって来た。とても「終える」ような気分ではなくなった。

そんなことは、それ以前のぼくには予想もつかないことだった。

(つづき)

「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"、1日めくって、7月12日。 今日は、珈琲焙煎舎(府中市)で出会える道草の家の個人的な雑誌『アフリカ』とひなた工房のちいさなマットたちのことを。

明日は、珈琲焙煎舎のお隣サン、府中の知る人ぞ知る肉屋の名店・市川精肉店の話みたいですよ。ぜひチェックしてみてくださいね。

※"日めくりカレンダー"は、毎日だいたい朝に更新しています。

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