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愛希れいかさん初大河記念 『青天を衝け』ダイジェストと井上馨の妻・武子について

愛希れいかさんの大河ドラマ『青天を衝け』出演のニュースが、突然入ってきた。

ミュージカルをあまり観ない方のために補足しておくと、愛希れいかさんはミュージカル界では、それなりに名の知れた女優さんである。宝塚歌劇団月組のトップ娘役を長く務め、退団後は『ファントム』、『エリザベート』、『イリュージョニスト』、『マタ・ハリ』など数々のミュージカルにヒロイン役として出演されている。

愛希れいかさんにこの場で私が触れたのは、おそらく『イリュージョニスト』の話を書いたとき1度きりで、しかも海宝さんとのデュエットが云々、としか書いていないはずだ。では、いまなぜ私が突如このnoteを書いているのか。

明日海りおさんのためである。

愛希れいかさんと明日海りおさんは、同じ宝塚歌劇団月組に在籍していたことがあり、相手役として共演したこともある。そして詳細は書かないが、この二人の間にはそれなりの絆があるのだ。

明日海さんは今『マドモアゼル・モーツァルト』の公演中だから、そのことで頭がいっぱいに違いない。だが、時間が出来たらおそらく、愛希れいかさんの出演箇所だけでも大河ドラマをご覧になるだろうと思うのだ。明日海さんはお忙しいので、これまで放送された全31回(2021年10月19日現在)を観る暇はないだろう。

そこで、ここまでの『青天を衝け』を振り返るとともに、愛希れいかさんの演じる井上馨の妻・武子の人物像と、彼女への期待についてここに書いておこうと思う。

なお、そういう趣旨なので今までの『青天を衝け』出演者のお芝居については、一切触れない。あのシーンのあそこが凄い、というようなことは書かないのでご了承願いたい。

『青天を衝け』 ダイジェスト

【栄一の実業家としての下地と理想】

第1話から第10話前後までは、豪農として現在の埼玉県深谷市あたりに生まれた渋沢栄一の「実業家としてのセンス」、そして不穏な時代にどんな情報を得て、どんな思想を深めていったかが描かれる。

藍染の商売をしていた渋沢家では、藍の買い付け、藍玉作り、職人をたくさん使っての藍染など、工程ごとに人を使ってものを完成させ、売るということを経験していた。このことが栄一の商売人としての基礎を築いたのは疑いようがない。

彼がこのまま、地方で豪農として一生を終えることにならず、実業家として活躍することになった背景には、強情で理想主義的な生来の性格と、従兄である尾高惇忠(田辺誠一さん)から受けた尊王攘夷思想がある。

尊王攘夷思想(そんのうじょういしそう)とは、平たく言えば「外国人を追い返して、天皇中心の世の中にしよう!」という考え方だ。考えてもみてほしい。見たこともないほどの大きな黒い船が突然4隻も、地元の海に出現した(ペリー来航)ときのことを。乗っている人の見た目を。見たこともない顔の造作、聞いたことのない言葉。住民が不安になるのが当然ではないだろうか。しかも、当時の施政者である幕府の人間は全く役に立たなかったのだ。幕府に期待するのは止めて、天皇に何とかしてもらおう。で、怪しい奴らは追い返そう。
至極自然な流れである。

当時、ちょっと勉強のできた人間なら、こういう考え方になるだろうなと言う思想だ。この考え方は国内の知識人の間に広く浸透することになる。栄一も例外ではなかった。

【理想に燃える栄一と突き付けられた現実】

11話以降、尊王攘夷思想に傾倒していた栄一は、江戸で尊王攘夷運動に参加しようとする様子が描かれる。そんな栄一が危機に陥った時、徳川慶喜(草彅剛さん)の側近である平岡円四郎(堤真一さん)が助ける。なんで幕府側の人間である平岡が、尊王攘夷運動に参加する栄一を助けたのかについては、「平岡円四郎の人を見る目が素晴らしいから」ということでざっくりまとめておく。

とにかく、平岡円四郎、ひいては徳川慶喜との出会いは栄一の運命を大きく変えることになる。

注目すべきは、栄一の現実を受け入れる柔軟さだ。武家出身ではなく、地方の豪農出身であることが彼の基本的な現実に対する姿勢を形作っていると言える。

徳川慶喜に仕えたことで、栄一は徳川昭武に同行し、フランス・パリへ渡ることになる(第21話以降)。目的はパリ万博視察のためだが、ここである銀行家と出会うことで、栄一の未来は決定づけられたと言ってよい。

西洋の進んだ文明を目の当たりにすることで、尊王はともかく攘夷など非現実的であることを、彼は嫌と言うほど実感することになる。

【栄一・実業家としての道へ】

帰国後の栄一は、駿府に居た徳川慶喜の側で藩財政の再建に尽力する(第27話)。その手腕を買われて政府で活躍することとなるが、武家出身者が幅を利かせる政府の中では、手腕を発揮しづらかったのだろう。栄一は、明治維新当初こそ政府高官として活躍するものの、民間人となり実業家として活躍する道を選ぶ・・・

以上が、第31回(2021年10月19日現在、放送済みの分)までに描かれた『青天を衝け』の内容である。

人物ダイジェスト:井上馨

愛希れいかさんが演じる井上武子の夫は、外務卿井上馨である。

井上馨といえば長州藩出身。藩校明倫館で学び、尊王攘夷思想に傾倒して、江戸でイギリス公使館焼いちゃったりする過激な行動をした人だ。

しかし、長州藩のお金で長州五傑として秘密裏にイギリスへ留学したころぐらいから、思想が一変。イギリスの状況を目の当たりにした井上馨は、長州藩が欧米列強と戦う気満々だというニュースを受け取るや、伊藤博文とともにイギリスからとんぼ返りして、下関戦争(長州藩と欧米列強との衝突)を止めるために尽力する。

つまり、彼は結構早い段階で
・欧米と戦うのは無理
・欧米から技術を盗んで、日本を発展させることを考えなくてはならない
・彼らに対等に扱われるためにはどうしたら良いか

という考え方のもとに動いていた人で、その一環としていわゆる「鹿鳴館外交」があったのだ。鹿鳴館建設の目的などは、以下リンクに分かりやすく説明されている。


私の期待する愛希れいかさんのお芝居

夫を支えるために、いわゆる鹿鳴館外交の中心となって活躍した井上武子。夫の考え方を深く理解し、ともに新しい時代を支えようとする姿を、どのように魅せてくれるのだろうか

結構塩梅が難しいのではないかと思う。現代に寄せすぎてもダメだし、かといって盲目的に夫に従うという感じでもない。鹿鳴館外交自体は、上手く進んで結果を出したというものではないので、夫を信じ支える姿と、世間の批判とのギャップをどのように武子が感じていたのかは、表現されるだろうか。

凛としたドレス姿にも注目している。まるで『エリザベート』のシシィがそこに登場したような華やかさになるのではないだろうか。

もう一つ、渋沢栄一との絡みがどのくらいあるのか、に注目している。

渋沢栄一(経済観念の発達した現実主義者)と井上馨(トップダウンで問題を解決するためにどうしたらよいかを考える、ある種の理想主義者)の考え方の違いに直面したとき、おそらく武子は最終的に夫を信じ、支える方向に動くと思うのだ。栄一ともし接するところがあるのなら、その時の心の動きを愛希れいかさんがどのように表現してくれるのか、楽しみである。

終わりに

このnoteは、明日海りおさんが愛希れいかさんの出演作をチェックするために、大河ドラマを観ることを想定して書いた。大河ドラマを観ていない、愛希れいかさんのファンにとっても、理解の一助となれば幸いである。


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