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イアンさんのお昼ごはんと日常

3月23日に始まったロックダウンがスコットランドでもイングランドより数週間遅れで緩和され、私の仕事もフルタイムに戻りました。ロックダウンが長引けば長引くほど、いつオープンできるかわからない、人のいない植物園で週に数日一人で働きながら気分を上向きに保つのは無意識にしんどかったようで、正直なところ終盤はかなり気持ちがアップダウンしていました。
ようやく7月から植物園もオープンすることができ、ちょっとずつ日常の感覚を取り戻しつつあります。ガーデンチーム、ショップ、カフェのスタッフなど知っている顔を見ることができ、お庭に来てくれる人たちがいて、お庭を楽しむ人たちを思い植物のお世話をする毎日。これまで当たり前のように思っていたけれど決してあたりまえじゃなく、実は奇跡のような日常が、少しずつでも戻りつつあり心底ほっとしています。

さて、日常といえば、この植物園で働きはじめたのはちょうど去年の7月の始めなのですが、まず最初に、え!?すごい斬新!と思ったのが、同僚のイアンさんのお昼ごはん。
けっこう衝撃的だったので、日本に紹介したいからとお願いして、せっかく写真を撮らせてもらったのに、そういえば、そのまままだどこにも紹介していませんでした。勤続1周年ですし、せっかくなのでここで。

その前にイアンさんについて少しお話ししましょう。イアンさんは来年定年する予定の熟練ガーデナーです。ガーデンのメンテナンス以外にもヘッジトリマー、芝刈り機などのガーデニング器機や車両のメンテナンスやいろいろな修理全般を担当しています。
私はナーサリーで働いていて植物に水をあげるのが日課なので、例えばホースの先が劣化してきたら、錆びてこんな風になったネジを緩めてホースはずして、、という作業をするのですが、私は錆びたネジとかこういったことが、とにかく苦手で異常に時間がかるか、もしくは異常に時間がかっていろいろやったあげくにネジの頭をぼろぼろにしてさらにやっかいなことになる傾向があります。

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そこでイアンさんにお願いすると、「わかった、後で見とく。」
といってすぐ見てくれ、そしてササッとパッとできてしまうので、大変お世話になっています。

さて、そんなイアンさんのお昼ごはんは決まってこのサンドイッチ。具はご覧のように、ポテトチップス(イギリスでいうクリスプス)とカシューナッツ。私のサンドイッチの概念には全くなかったタイプです。

パンをトーストするところから始まる流れは、毎日きっちり同じ段取りで行われるので、ちょっとした儀式のよう。

まずパンをトースターに入れ、テーブルの上にペーパータオルを敷きます。トースト出来たら30秒ぐらいあおぎながらさまします。トーストがさめたら、表面にうすく均一にクリームリーズをぬり、半分にカットします。

片方にカシューナッツを隙間なくしきつめ、もう片方にはクリスプスをふんだんに乗せます。

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カシューナッツを手のひらで押し、クリームチーズにしっかり固定させます。そして勢いよくクリスプスが乗ってる片方にホイッとのせます。

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だいたいいつもクリスプスがくずれおちますが、こんなかんじで見事にキツネ色一色に統一されたサンドイッチが完成です。

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オリーブオイル(ライト)につけていただきます。たしかどこかの過程で塩をふっていました。クリームチーズの上かな?オリーブオイルかもしれません。パンは何種類か試してみた結論としてHovisのSeed Sensationがベストだそうです。

イアンさん、そういえば武道が好きで柔道をやっていたそうなんですが、お昼のサンドイッチの一連の流れは作法のように正確に静かに取り行われます。まるでサンドイッチの’かた’のように。

今はソーシャルディスタンシングのために、みんな個別の場所で休憩をとっていますが、イアンさんのお昼のサンドイッチの日常は戻っているようです。
先日イアンさんが、1月に定年することに決めたよと教えてくれました。ササっとパッと助けてくれるイアンさんがいる日常も決してあたりまえではないのです。




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