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【映画感想】愛なき森で叫べ(2019)

園子温の集大成? ダイジェスト? 混乱する作品

賞レースも視野に入れてという噂のNETFLIXの園子温監督の『愛なき森で叫べ』を視聴しました。

園子温は未見もいくつかあるのですが、ほぼ見ていて、本作は『自殺サークル』『地獄で何故悪い』『愛のむき出し』『冷たい熱帯魚』などを想起させるシーンが多々出てきます。これをオトクと取るか、園子温のきっついところ詰め合わせセットかー……と取るかで賛否両論わかれそうな気がします。

私が詰め合わせセットだなーと特に思ったのが、全員が小劇場的な言い回しの芝居をする(地獄で何故悪いが顕著)、自主映画の制作と殺戮がセット(地獄で何故悪い)、死体を解体し、味噌や醤油でまとめる(冷たい熱帯魚)、女子高生が一緒に飛び降り(自殺サークル)このあたりですかね。こういうグロさがだめであればまずこの作品は見ないほうがいいかな。

結構色々見てる割にはいつも、園子温ってなんだろうな? って印象で終わってしまうわけです。インタビューとか見ててもすごいわかる、共感できるって言葉上では思うんですけど、作品見るとたしかに言ってることにずれはないんだけど、なんだろう、理解できないみたいなところがどうしても感じてしまう。

園子温作品はソコがわからなくてついつい作品を見続けてしまうような魔力があるんですよね。

伏線なにそれ? 目的は?

本作を見ていて強烈に思ったのは伏線も、登場人物への共感も、彼らの目的も本気でわからないというか描いていない点です。

まず椎名桔平演ずる村田(監督の投影とも言われているし、冷たい熱帯魚のでんでんが演じた男も村田で殺人者を指示する男の記号なのかしら?とおもいました)は、ある女子校の卒業アルバムの女生徒一人一人にに×マークを書いていくシーンがあります。

こういうのをみると普通は、何か目的があってこの女子校の卒業生を狙ってるのかな? と思っちゃうわけですが、それについては何も説明はありません。(なんとなくお金持ちの女生徒達の家を狙うために手に入れたんだろうか?とおもいました)

満島真之介演じるシン(sinってすでに意味深ですよね。罪って意味に掛けてるんだろうなぁ)もなぜそんなことをするのか? と言うことは全くわからないんですよね。

ロミオが支配していく

本作でとても重要な役割を持っているんだけど、それについて最後の方までわからないのがロミオ。ヒロインたちの高校時代の憧れの女生徒であり、芝居のロミオとジュリエットのロミオを演じた女生徒。事故で亡くなったのにヒロインたちを精神的にいまだに支配する不思議な女性なわけですが、彼女がいつのまにかシンも村田の心にも入り込んでいたというのがラストのほうでとても重要な話になってきます。

そのときに思ったのが、この作品は男側の視点で見てはいけなかったのかもしれないなということです。結果として、村田のやることを利用していたのはヒロイン側であって彼女の意図、憎しみ、そしてマウンティングという事を基軸で考えるとその昏さがはっきりとわかってビックリするほどです。

モチーフとした北九州殺人事件はあんまり関係ないかなぁ〜。これは『恋の罪』でも感じましたが、シチュエーションの一部は使用しているけど、それぞれの事件の真ん中にあると思われるモノはモチーフとしていないかんじがします。

脚本・監督・編集:園子温

村田丈:椎名桔平
シン:満島真之介
水島妙子:日南響子

4/1000

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