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風立ちぬ

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2013年のスタジオジブリ作品。零戦(零式艦上戦闘機)の設計者として知られる堀越二郎の半生をモチーフに、彼が幼い頃から追い求めた「美しい飛行機を作りたい」という夢、大正時代の関東大震災や戦争、妻との出会いや結婚を描いています。

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宮崎駿、最後の長編作品(公開当時)

本作の公開後、宮崎駿監督が長編映画の制作から引退すると発表し、話題になりましたね。

ただし、後に撤回され、2017年には長編制作への復帰を発表。(思わず心の中で「どっちやねーん!」とツッコミを入れてしまいました。笑)

本作を鑑賞した時点(2014年)では “宮崎駿監督の最後の作品” という位置づけだったので、ジブリ大好きなわたしとしては感慨深い想いで観ていました。

こちらの記事にも書いたように、わたしは『となりのトトロ』、『千と千尋の神隠し』など、宮崎駿さんの生み出す世界が大好きで、数々の作品にワクワクしたり魅了されたりしてきました。

▲ ジブリ作品まとめはこちら ▲

「駿さんの頭の中って、いったいどうなっているんだろう?!」
と、尊敬や驚きを感じたものです。

いつぞやは、東小金井のスタジオジブリ周辺をお散歩しに出かけたことも♩

・・・

ただ、個人的には『崖の上のポニョ』あたりから「あれ? 駿さんの作品、なんだか様子が変わったなぁ……」と思ったのも事実。

なぜか、スッと物語に入り込めない。
純粋に “楽しむ” ことができない。
意味がよくわからない。ピンと来ない。

寂しかったですね~。それまで大好きだったからこそ、余計に――

もちろん、今でも宮崎駿さんのことは唯一無二の偉大なクリエイターだと思っています。

でも、監督の “表現したいこと” と、わたしの “観たいもの” がマッチしなくなってしまった。ただそれだけ。悲しいけれど、仕方ない

ハマれなかったところ、好きなところ。

「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」

と、本作のポスターにも名前を挙げられている堀越二郎のこと。

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堀辰雄のサナトリウム小説のこと。

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飛行機や兵器が大好きなミリタリーマニアでありながら「戦争が大嫌い」という宮崎駿監督のこと。

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議論を呼んだ喫煙描写のこと。トーマス・マンの『魔の山』のこと――。

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本作についての解説はいろんな方がいろんなサイトで書かれているので、割愛しますね。(こちらのページが詳しいです)

ここでは、わたしが観て「ハマれなかったところ」と「好きなところ」を挙げてみたいと思います。

1|ハマれなかったところ

○ 主人公・堀越二郎のキャラクターがよくわからない

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境遇や職業の点で主人公に感情移入できないにしても、せめて、どこか “愛すべき点” がある人物ならば観る側も応援したくなったりするものですが、終始、何を考えているのか見えてこない二郎。飛行機のことしか考えていない。人としての魅力が伝わってこない
声を担当した庵野秀明さんは宮崎監督のお気に入りのようですが、この方の演技力の無さによる部分も大きいと思います。

○ そもそも飛行機に対して、あまり興味が湧かない

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宮崎監督はたぶん「零戦」と聞いただけで気分が上がっちゃう程お好きなのでしょうけれども、古い戦闘機に興味のある女性は少ないと思われ……。笑
同様に、監督のオタク趣味が炸裂していることではタランティーノ作品も有名ですが、タラちゃん作品の場合は「はいはい。わかるよー。好きなのねぇ」と微笑ましい気持ちで受け取れるんですよね。
どうせやるなら、言い訳しながら(下記参照)作るよりも、「俺はコレが好きなんだぜ!」って無邪気に喜びながら作ってくれた方が、観ている側も気持ち良いのかも。

「しかし、この映画は戦争を糾弾しようというものではない。ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。
 自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある。美に傾く代償は少くない。 」
(出典:『風立ちぬ』公式サイト「企画書」より)

○ 妻・菜穂子との愛情描写も理解できない

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議論を呼んだ “結核を患う愛妻のかたわらでプカプカ煙草を吸う” シーンに象徴されるように、二郎の行動を観ていると、どうしても菜穂子を「心から大切にしている」ように思えない。菜穂子も(片時も離れていたくないから)「ここで吸って」と言う。
大正時代のお話ですから、喫煙に対する捉え方も違うし、“健康体ではない女性” が嫁として負い目を感じるような時代だったというのも容易に想像がつきます。

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が!――それを “美しい夫婦愛のように美化して描く宮崎監督のセンスに、どうも違和感が……。
やたらと料理上手な女の子や、自分自身の幸せの追求を後回しにして一家を支える女の子、またはドーラやエボシのように男性までもが頼りたくなるような強い女性だったり、宮崎ジブリ作品に描かれる女性像には “監督自身が追い求める理想の女性像” が透けて見えるような気がして「なんだかなぁ」と気持ちの悪さを感じてしまいます。

ええっと、このくらいにしておこう……。笑

2|好きなところ

○ アニメーション表現が相変わらず凄い

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関東大震災のシーンや、タイトルにもなっている “風” の表現、日本の美しい風景――など、背景やアニメーション表現がとにかく美しくて素敵です!
この部分は本当に「さすがジブリ」「さすが宮崎駿」と、うっとりします♩

○ 「シベリア」が美味しそう♡

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これです。笑
あまりに美味しそうで観ると食べたくなってくる、と定評のある「ジブリ飯」♩
この「シベリア」というお菓子もそのひとつではないでしょうか。

○ 瀧本美織ちゃんの声がイイ♩

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二郎の妻・菜穂子の声を演じた、瀧本美織ちゃんが良いです♩
透明感があって、清廉な感じがして、役柄にピッタリ!
(NHK の朝ドラ『てっぱん』の頃から好きでした。今でも CM などで見かけると、うれしくなってしまう♡)

○ ユーミンの『ひこうき雲』がイイ♩

空に~ 憧れて~♩ 空を~ かけてゆく~♩

やっぱりユーミンはいいですね~!
松任谷由実になってからのアルバム『PEARL PIERCE』、『Delight Slight Light KISS』、『DAWN PURPLE』あたりは、かつて “20代OL” だった頃によく聴いていたので、当時の恋愛事情などを想い出して胸がキュッとなります。笑
今は、さらに前の荒井由実時代の曲が好き。(今も聴きながら書いています)わたしたちの日常の風景も、ユーミンを BGM にしたらどんなシーンも絵になる気がしませんか?

○ クレソン、ウマーイ。

それでも、もう一度観てみたい。

本作の「ハマれなかったところ」と「好きなところ」、個人的な感想をいろいろ書いてきました。

ジブリ映画の中では、どちらかというと “好きではない” 作品ではあるものの、それでも「もう一度観てみたいな」と思います。

今あらためて観たら、違う感じ方をするかもしれない。気づかなかった発見があるかもしれない――。

そう思わせてくれる「力」を本作が持っているのは確かです。宮崎駿監督が、最後のつもりで渾身の想いを注いだ作品なのですから。


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