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秒速5センチメートル

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2007年の日本映画。ひとりの少年・貴樹(タカキ)を軸にした、3つの短編からなる連作アニメーション。その後の彼の人生にまで大きな影響を与えることになる小学生時代の初恋から始まり、高校時代、社会人になってからの姿――を抒情的に描いた作品です。

英題 "5 Centimeters per Second - a chain of short stories about their distance"。

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監督は、『言の葉の庭』、『君の名は。』、『天気の子』などで人気のアニメーション作家、新海誠(しんかい・まこと)。

とにかく超絶美麗! 作画が美しい。

スタジオジブリの宮崎駿監督に続き、次の時代の日本アニメーションを担うクリエイターとして、今や押しも押されぬ人気の新海誠監督。わたしにとって、はじめての新海作品は『言の葉の庭』でした。

美しい繊細な作風に惹かれ、次に観てみたのが本作『秒速5センチメートル』。鑑賞当時のツイートには、こんなふうに書いています。

はぁぁぁ、もう、風景描画の美しいこと美しいこと! そしてキュンと切ない! さすがの新海誠。

たとえば、こんなワンシーン。ご覧いただきましょうか。

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光……!! ああ、美しい……。

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うわぁ、エモいエモい!(あまりの美しさに圧倒され、アホっぽい言葉しか出てこなくて、すみません。笑)この画像1枚だけで、チャイムの音や、チョークの匂いまで感じますよね。

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風景だけでなく静物の描写も、ものすごく精緻

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『言の葉の庭』(2013年)では「雨」の描写がとても印象的でしたが、それよりも前の作品にあたる本作(2007年)においても、光、風、舞い散る桜、雪――など、実世界の日常にある風景の描き方が本当に綺麗です。

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新海誠監督 フィルモグラフィ
○ ほしのこえ(2002年)
○ 雲のむこう、約束の場所(2004年)
○ 秒速5センチメートル(2007年)
○ 星を追う子ども(2011年)
○ 言の葉の庭(2013年)
○ 君の名は。(2016年)
○ 天気の子(2019年)

『秒速5センチメートル』の作品公式サイトでは、新海誠監督ご自身が、このような言葉を添えていらっしゃいます。

この作品には、他の多くのアニメーション作品に見られるような SF やファンタジーなどの架空の要素は登場しません。そのかわり徹底したロケハンを行い、今この現実をアニメーション表現の中にすくい取ろうと試みています。

我々の日常には波瀾はらんに満ちたドラマも劇的な変節も突然の天啓もほとんどありませんが、それでも結局のところ、世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここにたたえています。

現実のそういう側面をフィルムの中に切り取り観終わった後に見慣れた風景がいつもより輝いて見えるようなそんな日常によりそった作品を目指しています。

世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここに湛えている
とても素敵な言葉だなぁ……と思います♩

だが、しかし。だが、しかーし!

本作は「連作短編アニメーション」と題されているように、次の3つの短編で構成されています。

○ 第一話「桜花抄」(おうかしょう)
○ 第二話「コスモナウト
○ 第三話「秒速5センチメートル

・・・

○ 第一話「桜花抄

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東京の小学生の貴樹(タカキ)と明里(アカリ)は、特別な想いを抱きあう仲。しかし卒業と同時に、明里の引越しにより離れ離れになってしまう。中学生になり、東京と栃木で文通を重ねる二人だが、今度は貴樹も鹿児島への転校が決まる。引越す前に明里に会おうと、大雪の中、貴樹は明里の元へ向かうが――。

主人公・貴樹の初恋を描いたエピソード。初恋の相手である明里とのやりとり、内省的な貴樹の心情などが、小説のように綴られます。

「ねえ、秒速5センチなんだって。桜の花の落ちるスピード秒速5センチメートル。」

作品タイトルにもなっている明里のこのセリフ、とても象徴的で惹きつけられますよね。

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中学生男子と中学生女子―― 今は大人になっているわたしたちも、かつて経験したはずの、あの頼りなくて、甘酸っぱくて、先の見えない感覚。観ていて、キュンと切ない気分になります。

そう。ここまでは良かった!笑

・・・

○ 第二話「コスモナウト

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時は過ぎ、種子島で高校3年生になった貴樹は、同じクラスの花苗(カナエ)に好意を寄せられながらも、ずっと遠くを見つめていた。花苗にとって貴樹は、一番身近で、遠い憧れだった――。

種子島で高校生になった貴樹を、彼に恋心を寄せるクラスメート・花苗の視点で描いたエピソード。

舞台が種子島ということで、NASDA(*)種子島宇宙センターの「ロケット打ち上げ」なんていう出来事も作中に登場したりして、宇宙大好きなわたしの大好物要素が満載!笑

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○ NASDA(宇宙開発事業団)
現在の「JAXA」の前身機関のひとつ。2003年に、NASDA(宇宙開発事業団)、ISAS(宇宙科学研究所)、NAL(航空宇宙技術研究所)の3機関が統合して JAXA(宇宙航空研究開発機構)になった。

↓ 詳しくは、下記の記事をどうぞ♩

○ 宇宙好き・はるひによる「マメ知識」
第二話「コスモナウト」は 1999年という設定なので、当時の種子島宇宙センターはまだ「NASDA」だった時代。
ちなみに「種子島宇宙センター」は、国産大型ロケット H-IIA(エイチ・ツー・エー)打ち上げなどで使用される日本最大のロケット発射場があり、同じくロケットや衛星の打ち上げが行われる鹿児島県の「内之浦宇宙空間観測所」と並んで宇宙好きには有名なスポット

でも、でも、でもね!

どうも、この第二話から、途端に雲行きが怪しくなってきまして――

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このヒト(貴樹)の考えてること、


おばさん、サッパリわからない!笑

巷では

初恋をこじらせた男子の話

と評されることも多い本作ですが、わたしも観ていて、すご~くモヤモヤモヤモヤ……した気持ちになりました。

過去の恋愛、こと青春時代の初恋を過剰に美化してうっとり酔いしれる傾向は、男性に多いような気がします。(二元的に論ずるのは良くないかもしれませんが、女性はもっと現実的。男性の目には薄情に映るかも。笑)

・・・

○ 第三話「秒速5センチメートル

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やがて東京で社会人になった貴樹は、仕事に追われ、日々輝きを失っていく街並みを前に、忘れかけたあの頃の記憶に想いを巡らせる――。

もう、ここまでくると、主人公の貴樹を「女々しい」「気持ち悪い」と感じてしまう域……。過去の美しい(と自分が思っている)一瞬に囚われて “今” を生きず、ポエミーな言葉ばかりを脳内で紡ぎ続ける貴樹。

途中から、ダッシュで画面の中まで走って行って、自己陶酔している貴樹に往復ビンタを浴びせながら

目ぇぇーをー 覚ーまーせぇぇぇー!!」

と言いたい気分に。笑

(あくまでも、わたし “個人の” 感想です。新海監督ならびに本作がお好きな方には、ごめんなさい! おこらないでね。願)

・・・

昨年(2020年)暮れに本作がテレビ放送された際、こちらの方が Twitter に投稿されていたイラストが、この感覚をすごく端的に表していて秀逸でした。

ぜひ実際の画像をご紹介したかったのですが、既にツイートが削除されてしまっているようなので、「いらすとや」の素材でわたしが再現したものをご覧ください。

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出典: Twitter「しょうに」さん(@sho_ni_555)のイラストより
(ツイート削除済のため現存せず)

わかりみが深すぎる。笑

ほかの新海作品も観てみたい

以前『言の葉の庭』について書いた折に、新海誠監督の恋愛観について、こんなふうに書きました。

新海誠監督の恋愛観については、のちに『秒速5センチメートル』を観て、どうにも女々しい印象が拭えず、

解せぬ!!」

となった(笑)わたしです(それ以来、どうも新海作品には手を出せず、人気作の『君の名は。』も『天気の子』も観ていません……)が、『言の葉の庭』は、もう一度観ても良いなぁ、と思えるくらい、素敵な作品です♩

その後、フォロワーさんからコメントで

“『君の名は。』は『秒速5センチメートル』みたいな女々しい男の鬱展開じゃないので(笑)私は断然楽しめましたよ!”

と教えていただいたので、本作以外の『君の名は。』などは、そんなにモヤモヤ展開(笑)ではない模様。

――というわけで、食わず嫌いせず、また機会があれば新海作品にチャレンジしてみたいな、と思っています♩


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