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【北欧:教育の旅⑤-1】先生も子どもも、いち個人 ~フィンランドの小中一貫校にて~ | 2018/05/02

いよいよ教育現場の見学・視察に伺います!

路上では朝から、オーケストラの生演奏が。優雅...!

地下鉄改札までの道のりは、まるでフランス・ラスコーの洞窟みたい。

これは地下鉄。
そして、地下鉄カード販売機。


今日の訪問先は、ヘルシンキから地下鉄、バスで1時間ほどにある、小中一貫校です。

前回記事:【北欧:教育の旅④-2】世界遺産の島、スオメンリンナ | 2018/05/01 はこちら!要塞、文化遺産、行楽地、そして人々の生活の場でもあるスオメンリンナ。戦いの歴史を伺うことができる、そんな場所です。

Kuoppanimmen koulukeskus(クオッパヌンミ小中一貫校)。

なんだか大学や、図書館みたいな感じがします。

校舎の壁には、至るところに生徒たちの作品や掲示物が飾られており、とても自由な雰囲気。

フィンランドでは、就学前のプレスクール(2000年から開始/4時間制)、
小学校・中学校の9年制(=義務教育)が行われており、場合によっては、10年生として1年間勉強をすることもできるのだとか。
勉強が足りないと思ったから、もう1年やってみる。日本だと、「留年」というネガティブイメージを持たれがちだと思いますが、フィンランドはそうではない。
「自立」に至るまで、「個」を尊重するのです。

教育施設は、みんなに開かれている存在であり、だから「教育」は無償で受けられる。それが権利。プールや体育館も学校ごとに作るのは税金がもったいない!ならば、大きいものを作ってみんなでShareしましょう!というか考え方だそうです。教科書も基本的にShareです。(書き込みをするWorkbookは自分専用で持ちますが)

駄目な子なんて、いない。競争ではないのだから、絶対評価であるし、順位がつけられるテストも行わない。
他人と比べることに目を向けるのではなく、自分自身との戦い、「学ぶ」ことの本質を徹底して考えさせるような、そんな教育。

ちなみに、高校生の年齢(=18歳)になると、彼らは「成人」とみなされ、親は子どもの銀行の通帳・口座すら見られなくなるそうです。
それは、子どもを「個」として認めている証拠。


「個」を尊重されているのは、子どもたちだけではありません。
こちらは、いったい何の部屋でしょう?


正解は、職員室。
生徒は通常、個々には入ることは出来ません。

北欧の方は、みんなソファと珈琲が大好きだそう。リラックスして、様々なことを共有する時間が持てるから。珈琲のおともに、ケーキなんかも用意されたりするそうで、とてもあたたかい時間が流れていました。


このような空間が作られている理由として、先生も「個」である、ということ。先生同士がリラックスして交流できる場を持つことが、先生にとっても子どもたち、その先の保護者にとっても、BESTという考え方なのだ。
時に、この空間でも話しにくい、外に出て話したい、なんて時には、外のカフェに出て会話を楽しむ、なんてこともあるみたい。

職員室内部には、会議室もいくつかあります。

会議室の前、みんなの目に触れやすいところにある貼り紙が。


大樹の絵。教育学のメソッドを示した図だそうです。
根本の部分には、根本となる大切な事柄を。葉っぱの部分には、根本を護るために”何をするか”という答えを。
教育において大事なこと、が根本にあるならば
葉っぱの部分に当たるのは
・授業の組み立て方
・「多様性」を評価すること
・保護者も参加できるように(バザーの開催など)
・学校と家庭の連携を
・・・ということ。根本は一緒だけど、それに絡む課題や事象は、枝分かれしている。その分育つ葉っぱもさまざま。
そういった大事な事柄をいつでも分かち合えるように、職員室に貼られているのです。

ちなみに、先生の悩みを聴いてくれるカウンセリングの方もいるらしい。
その悩みは、保護者にも漏らさない、それもまた先生の「個」を尊重しています。

悩み、といえば、VERSOの取り組みが印象的でした。

平たく言えば、外部の組織が、もめ事を無くしたいと思っている選ばれた中の子どもたちに対し授業を行い、その指導を受けた子どもたちが実際に行動を起こす、というもの。
外部から先生を呼び込み、人間関係の育成を支援するのだ。なんて柔軟な考え方だろう。

VERSOの他にも、様々な掲示物が。


子どもたちの無邪気な笑顔に癒される。
身の回りの物、すべてが教材なのだろう。みんなでルールを決めて、授業を進めていく。

ちなみに、千葉大学教育学部研究紀要 第64巻 213~227頁(2016)に、
今回訪れた小中一貫校が視察先として掲載されておりました。

フィンランドのヘルスプロモーティングスクールの現状とコミュニティ形成への役割 ―2015年フィンランド・ヘルシンキ周辺の視察を中心として
※参考として、リンクを掲載させて頂きます。


時間割も、先生が裁量を持ってある程度自由に決めることができます。
例えば、今日の国語の授業は集中しているから、もう1時間やりましょう、とか。

算数の勉強をするにも、料理のレシピを見て【今は何の食材がある?】【何があと必要?】と順番、必要な項目を知るための読解力を養ったり。


ヘッドホンをして周りの音を遮断したほうが、集中できるという子もいる。もちろん、そうでない子もいる。そういうのも全て受け入れる。

話変わりますが、『ベイカー街の亡霊』のヒロキ君もそうだよね。
日本だと、パソコンおたくの変わった子としか、見られなかった...って。映画の中の話だけれど、現実にもじゅうぶんあり得るよね...って思う。

教室には、子どもたちの作った掲示物がたくさん飾られている。


これは、教室に掲示されているものの一部。

自分の今の気持ちを、自己評価で表して、逐一こうしてアウトプットするために使われる。この表を見ると、その子どもがどんな気持ちなのか、うかがい知ることができ、「どうしたの?」「何かあったの?」と歩み寄ることができる。

掲示物の他にも、みんなが共用して使う鉛筆が教室の隅に準備されていたり。ぶら下がり棒やトランポリン、手が汚れたらすぐに洗えるように洗面所があったり。

でこぼこなクッションがついた椅子もある。人によって好みも様々なように、あえて安定しない椅子を用意してみて、いわば実験をしているそうだ。


自分と名前が似てる。勝手に親近感、Hannaちゃんの席。
今回この学校でお話を伺った先生も、Hanna先生でした。



障がいをもった子どもたちも、ここに通っている。健常者と障がいをもった子ども、同じ学校で学ぶことで、お互いに「近づき方」を学ぶ。

先生1人に、4~6人の子ども達。
言語セラピスト、作業療法士の方もアシスタントのような形で加わる。

こちらでも、五感を大切にした授業に取り組んでいる。
例えば、今日の曜日は何の色?⇒「白色!」 ⇒ 白というと?⇒「牛乳!」⇒ 今日のにおいは「牛乳」だね、みたいな。
「雨」を学ぶために、スプレーで雨を体験してみたり、「あたたかい」ってなんだろうと思ったら、冷蔵庫を使って寒さや雪を体験してみる。
日常のあらゆるものを活用して、スキルや感性を磨いていく。

教室では、「ハンガリー式」と言われる勉強グッズを多くみかけた。




このおでん(笑)みたいな絵が描かれたカード。このカードに記載されている形・色など様々なブロックを、このカードの通りに、時間制限を設けて実際に作る。
数や順列、理解力、集中力...あらゆる物事に通じる学び。
お題は自由に変えることもできるし、このブロックではなく異なるモノを題材にすれば、無限に学ぶ対象は増えるのです。

こちらは学食。ここの子どもたちは大きな長テーブルで、学年関係なく食事をとる。私たちも、一緒に食事をとらせて頂いた。(給食写真撮り損ねたー泣)

ご飯のあと、子どもたちとパシャリ。みんなほんと可愛らしい...


こちらは、キッチンルーム。洗濯機もあるそうな。

フィンランドでは、日常生活における家事は男性女性どちらであってもできるように、学校教育として教える場が提供されている。

靴の修理、窓の拭き方、食洗器の使い方、貨幣の種類まで。こんなこともテキストに載っているの?!と目から鱗。
だけど、こうしたなかなか教えることはないけれど、生きる上で大切なことって、いっぱいあるよね。
家庭と学校、トレーニングを繰り返して、18歳の「成人」を迎える準備をしていくんだなぁ。


こちらの教室では、ポートフォリオの制作をしています。

一年間を通じて学んだことを、作品制作、Googleスライドにまとめ、発表を行うらしい。
モノづくり、個々の表現、クラフトを大切にする精神があふれている。

ちなみに、GoogleのEducation用のアカウントを学校で登録しているようで、これでGoogleスライド等の管理をしているらしいです。

THE ペーパーレス!便利にできるところは徹底して便利に、だけどモノつくりの精神は大切に、その絶妙なバランスが素敵だな、と思いました。


下手に庇護するのではなく、子どもたちに物事の意味を考えさせる。選ばせる。

主体的に動くために、様々な補助を行い見守るこの空間は、みんなの理解あってこそ。

意見を通わせ、良いものはシェアする。誰しもが意見を言える空間をみんなで作る。
当たり前のようなことだけど、改めて気づかせてくれる、そんな空間でした。


北欧旅のダイジェスト記事です。よろしければ、ご覧頂けると嬉しいです...!- 気になるモノに触れる幸せ | 北欧のプロダクト・教育・方法論に触れる旅

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