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今週の読書録

ほろよい読書 おかわり

お酒にまつわるアンソロジーの第二弾。

朱野帰子さんの「オイスター・ウォーズ」を楽しみに購入。
短編というにはややボリュームがありますが、テンポよく進むので楽しく読める作品。

牡蠣好きならずとも、読むとお店を探したくなるほど、登場人物二人はとにかくよく食べる、そして飲む。
ここまで1つの食材を調理方法を変えて、多数摂取できるのは牡蠣の魅力のひとつかもしれません。
フードファイトのような空気を漂わせつつ、食への熱意と内包した思いの発露が絡み合うさまは、読んでいるだけでおなか一杯に…
タイプは異なるものの、読んでいる途中でなぜか「駅物語」の主人公のことを思い出しました。

読了後は、noteで朱野さんがまとめられた執筆過程の記録を読むと、楽しみが倍増するかもしれません。

一穂ミチさんの「ホンサイホンベー」は、年齢の近い義母とともに亡くなった父の弔いをする中で、過去を振り返る。

「愛はかなしみ」
ホアンの言葉になぜか切なくなる。
クラフトジンと香水瓶、香りや情景も思い浮かぶような描写。

どうやら愛という言葉が日本で成立したのは近代以降、日本の愛に相当する感情はもっとあいまいで時には情念を感じさせる多様性があったらしい。
「愛し(かなし)」は、愛おしい、かわいいと思う気持ちや、守りたいという思いを抱く表現なのだそうです。

現代のジェンダー意識高めのハリウッド作品のように男女平等に強いパートナー同士で支えあう関係や、風と共に去りぬのスカーレットのような守られる時代の直情型の女傑とも違う。
恋ふ、慕ふという湿度を感じさせる思い、焦がれるという熱量のある思い、慈しむという思いまで。
源氏物語の根底にある明確に言語化されていない雰囲気のように、発信者側も受け手側も目に見えない何かを感じ取るスキルが必要そうな印象なので、決して「私たち付き合っているのよね?!」と強気で迫る女子からは漂わないウェットな空気感を感じさせます。

「ホンサイホンベー」にも明確にラベル付けできないような雰囲気が漂っています。

同じお酒をテーマにした作品でも表現者によって、湿度や気温まで異なるような「ほろよい読書」。
前作に続き、全作品購入している作家さんに加えて、新たに好みの作家さんとの出会いがあり、お得感のある短編集。
ほろよい読書第三弾も楽しみです。

今夜は癒やしの一杯で、自分にお疲れ様を。
麗しい女性バーテンダーと下戸の青年の想いを繫ぐカクテル、本音を隠した男女のオイスターバーでの飲み食い対決、父の死後に継母と飲み交わす香り高いジン、少女の高潔な恋と極上のテキーラ、不思議な赤提灯の店で味わう日本酒……。
大注目の5名の作家が「お酒」をテーマに描いた、心満たされる短編小説集第2弾!

Amazon紹介より

江戸のキャリアウーマン

江戸時代の女性の働き方が興味深い。
伊達家の奥女中として奉公した女性たちの記録など、江戸時代の奥勤めの方の資料をもとにまとめられた作品だそうです。

現代よりも定年までの年数が長かったのは意外。
江戸時代後半は平均年齢も上がり、現代よりも勤続年数の長い方もいた様子。
生涯現役として活躍するような女中は、豊かな経験と知識から大事にされ、老後も安泰。
運もあろうが、女性一人でも才覚次第で一生食べるに困らない職場が大奥。

家柄に関係なく器量次第で出世できた

書籍紹介より

ドラマなどでは家柄によって奉公時のスタート地点が異なるため、背景情報に関係なく本人次第であるという見解には驚きました。
嫁入り前の行儀見習い以外にも終身雇用を見据えた働き方もできるなど、多様性もありそう。

最近のドラマで人気の題材のため、読んでみると時代背景がより理解でき、楽しさ倍増かもしれません。

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