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「てにをは辞典」

「てにをは辞典」をご存知でしょうか。

辞典のはしがきには、「より適切な言葉を選びたい、表現を工夫したい、そう思ったときに役に立つ、いわば、”文章を書くときに頼りになる相棒”といったところでしょうか」とあります。ある言葉の意味や解説ではなく、その言葉が助詞、「てにをは」を介して他の言葉とどう結びつくかが載っている辞典です。要するに、コロケーション(語と語のつながり方)ですね。

例えば、「動き」をひくと、「▲が あわただしい。一服する。大きくなる。遅くなる。加速する。、、、、」と延々と続き、また「▲を 跡づける。合わせる。維持する。うかがう。浮かべる。映し出す。、、」「▲に 合わせる。感嘆する。気づく。幻惑される。」「▼あいまいな。鮮やかな。一連の。表立った。確実な。、、」と上下に付く語の用例が載っています。

翻訳の仕事をするときは必ず手元に置いています。ある言葉につながる動詞で、原文の意味にふさわしい日本語を見つけたいときにヒントにしたり、ある語を形容する言葉はこれで正しいのかを確認したりするときによく使います。頻度は「多い」か「高い」か、公算は「大きい」か「高い」か、などです。

仕事の時にその余裕はありませんが、たまにランダムにページを開き、読み物のように読むこともあります。私には、「知っている」けれど「使えない、使ったことのない」言葉がたくさんあると痛感していて、そのギャップを埋めたいと常々思っています。そのために、本や新聞などを読んで「知っているけど使わない、使えない」と思う表現をノートに書き、英語のどの単語に使えるかを考えたりしていますが、この「てにをは辞典」はそうした表現の宝庫でもあります。

以前、高校のクラス会に参加した時、私が翻訳の仕事をしていると話すと、「そういえば高校の頃、英和辞典を読むのが楽しいって言ってたね」と言われてものすごくびっくりしたことがあります。そんな話をした記憶も、そう思っていた記憶さえなかったからです。でも、まんざらあり得ない話でもないなぁ、とは思っています。

「言葉の海」という表現がありますが、その海は本当に広く、深いものだと思います。途方もない広さと深さに溺れそうになりますね。「言葉は人を励ましもするし、傷つけもする」ともよく言われます。書いたり、発したりした言葉は2度と回収することはできません。また、「ことばには降りつもる」という性質がある、とも聞いたことがあります。そんなことを言われたら、いい意味でも、悪い意味でも、身が引き締まります。だって、「降り積もる」んですから。

だから、言葉を書いたり、発したりすることにはとても慎重でありたいし、美しい言葉を選び、間違っても人を傷つけたり、揶揄したりする言葉は使わないように、と心がけたいです。

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