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「幸せって当たり前すぎると分からない“青い鳥”。 それくらい当たり前に安全な暮らしを未来に届けたい。」


創業46年 新潟県を拠点とする総合建設コンサルタント企業 株式会社キタックで2代目社長を務める中山さん
新潟の上場企業38社の中で唯一の女性社長が仕事に傾ける思いを伺ってみました。

中山さんプロフィール
出身地 新潟
経歴 大学卒業後、グラフィックデザイン等の仕事を経て、2006年キタック入社。総務部長、専務取締役等を経て、2017年代表取締役社長就任。

Q1 どんな心の在り方や認識の変化が今の活躍に繋がっていますか?

中山さん   私は社長になるために、この会社に入ったわけではありません。最初はCGソリューションセンター長として、グラフィックデザインの部署を担っていました。40歳になる年に取締役になり、それから総務部を担当するようになりました。総務部長になる時に「総務部長って何するの?そんなのできないよ」と思ったのが本心です。その時に、私の前任者である当時の総務部長の一言が私を動かしました。「役が人を育てますよ」と。「その役になれば人は必ずそのようになるんだから、あなたも素直に育ちなさい」と言われました。その言葉が強く胸に響きました。 総務を担当すると、会社の全体像がしっかりと見えてきます。良いところはもちろんですが、欠点も見える。総務部長在任の4年間は、その欠点を改善していくことに専念して、随分と改革をしたと思っています。 


社長になる時も、当時の社長から「娘だから社長にするというのはおかしいと思っている。本気で会社を率いていく気持ちがあるのか」と問われました。
専務として働いていた私には「社長なんて無理だよ」という気持ちがなかったわけではありません。それでも、総務部長になる時の「役が人を育てる」という言葉と、他の役員の皆さんから「一人じゃない。私たちも一緒に会社を育てる」と応援してもらったことが、大きな励みとなり心を決めました。社長になってからは、ベテラン社員はもちろん、若手社員にもしょっちゅう励まされていて、日々頑張ろうという気持ちを新たにしています。

記者 今はどんな思いで社長をされていますか?

中山さん  長く続く企業であって欲しいと思っています。
ただ長く続けば良いのではなく、社員とその家族が「ここで働いていてよかった」と思える企業になるといいですね。
キタックは社会に貢献するためにある会社であり、私たちの仕事はインフラ整備の根幹に携わっています。家を一歩出たら、インフラと無縁な人はいません。だって、道路を歩かない人っていないでしょう?誰もが当たり前に使っている道路、橋、トンネル。洪水にならないための堤防やダム等々、その全てに私たちの仕事が関わっています。
また、大きな使命のひとつには、防災・減災など、自然災害を防ぐことがあります。かつて社員から「自然災害で人が死ぬことのない社会をつくりたい」と言われたことがあります。「うちが目指すべきところはそこなんだ」とはっきりと感じました。安全・安心が当たり前、その当たり前を支えていくキタックでありたいと常に思っています。

Q2 AIが活躍する時代に必要とされるニーズとは?

中山さん 建設業に関してはAIがかなり進出しはじめていますが、私どもの業である建設コンサルタントは、あまりにもニッチで開発が難しい面があります。
まず、業種についてご説明しますね。建設業と建設コンサルタント業は、同じ「建設」という言葉がつくので、よく勘違いされますが、コンサルタントは「施工」はしません。ですので、建設コンサルタント業は「サービス業」です。経営コンサルタントなどと同じく、建設に関わることについてコンサルタント(相談役)になるのが仕事です。分かりやすくいえば、建設業の成果品は「建設した建物」で、建設コンサルタント業の成果品は「報告書」。ただの書類や図面のファイルしかありません。 

記者  そうなんですね!

中山さん そういう仕事の中で、ボーリングなどを行う地質調査も長年の経験があってこそ、わかることが多くあります。そういう勘どころをAIに展開するのは、絶対的な需要量が限られているため、今はまだ時間もお金もかかりすぎると思います。
AIの活用はまだまだですが、人手、いわゆる担い手不足という現状は否めません。それでも、若い人が「ここで働きたい」と思える業界にしたいですね。「コンクリートから人へ」と政府が打ち出していた時期に、業界がどんどん小さくなりました。それに合わせて理系離れも進んでいきました。さらに全国の大学では土木関連の学科が減っていて、業界そのものが小さくなると技術レベルが上がらなくなります。より新しい技術を生み出すだけの競争力が衰退しないようにしなければなりません。

中山さん そうですね。働き方改革を進めるうえで、時間外労働を減らしたいと思ってはいますが、なかなか厳しい面もあります。効率化をどうやって上げるかが今の課題です。
我が社は残業がいやだと思わない人たちが多いのです。本心では残業がいやでも、良いサービスを提供するためには時間が足りない、納得する技術を提供したいという心意気が強いのかもしれません。「これだけの成果をあげなかったら帰るわけに行かない」という責任感を持っている人が多いように感じます。

記者 すごい責任感ですね!

中山さん 若手社員に無記名でアンケートを取るんですが、「自分のやった仕事に一生涯責任を取らなければならないのに、仕事が中途半端になってしまう。残業をさせてくれないのは困ります」というような回答がありました。公共事業は確かに一生涯残るものがほとんどです。「いったい誰がこんなすごいことを書いたんだろう?」と嬉しくなりました 笑
そんな責任を持てる仕事を誇らしく思える人材が、これからの時代に必要とされるのではないでしょうか。

記者 そんな素晴らしい人材を育てるためにどんな教育をされているのかも気になります。

中山さん 社長になって2年ですから、まだ「私が育てた」と言える人材ではありません。脈々と続く会社のDNAで育っていると思います。
ただし、私が常日頃思っているのは、自分がトップではなく、みんながトップなんです。会社の組織図は上から社長、部長、課長というようなツリーになっていますが、あれは逆ではないかと思っています。木(ツリー)は下から大きくなるものですよね、根っこがあって上に伸びます。社長は一番下で、太い幹の幹部社員、そして枝葉があって花が咲き、実を結ぶのです。会社は常に社員ファースト。一方的な片思いかもしれませんが、私は社員が大好きなので、社長室にこもることなく社員と机を並べて仕事しています 笑

Q3 どんな新しい時代をつくっていきたいですか?

中山さん 自然災害で人が亡くなることが無い時代を創りたいです。先ほど、今は私どもの業界では遅れていると話していたAI技術が進み、それくらいのことがやれるようになるといいですね。もちろん災害は起こりますが、家族や友人を失って悲しむことがない社会づくりの一助になりたいと思っています。防災のキタックなので。保守って目立たないけれど莫大なお金をかけないとなりません。コンクリートも老朽化していきますからね。
そのためにも、社員一人ひとりとその家族が、ここに勤めていてよかったなぁと思える会社にしていくこと。これが私の責務であり、新しい時代づくりの礎になると考えています。
「青い鳥」が、誰の家にもずうっと住んでいる時代が来ると良いですね。

株式会社キタック https://kitac.co.jp

編集後記
40年以上続く地域企業を女性が引き継ぐということは生半可な苦労ではなかったのではないかと思うのですが、それを感じさせないくらい軽やかに「自分は何もしていない」とおっしゃる中山さん。ですが、当たり前のように人を愛し、感謝し、日々責任感を持って勉強されている努力を感じました。日本の建設業界の方たちの地道な努力のおかげで、道路が崩れる心配なく生活できていること、そんな当たり前のようで当たり前でない幸せを届けてくださっていることに気付かせていただきました。中山さん貴重なお話をありがとうございました!

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