発酵生活2040

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虹色の2時

カタツムリ息潜め 濡れそぼる手鞠花 廃屋の屋根裏で 白猫が生まれた日 水曜の昼下がり 雨止んで 陽が射せば 今はただ 虹色の2時 ※朗読のための作品 20may

    • ホケキョの7月

      迫り来る太陽の手前 麦わら帽子の自転車が 7時の野川を走っていく 年寄りは木陰を縫って あるものは黙々と あるものはまるで皆同じ姿で 血糖の話をして歩いていく ホーホケキョ 暗く爛れる部屋のなかを 白い陽射しが照らし蒸す 痩せた身体が息絶えていく ホーホケキョ  魂は谷渡り 涼やかな水の薫りを胸に 鳥たちと西へ向かう (202307)

      • きりのない妖精のはなし

        これだけ大勢の人がいるからには 以前は学校か何かだったのだろう 今はその骨格が残るのみ 絡みつく紐を頼りに 私たちは下っていこうとしている 紐は二種類 ひとつはがっしりと太く ひとつはいくつかの繊維を 筒状の薄皮で覆っている この場所はラピュタの島みたい いや、そうかもしれない これは木の根だ それらに更にひっかける 丈夫な二本の紐があれば十分だろう もっと速い方法は 重力のままに落ち 時々木の根につかまり止まってみる… それは危険か (ここは人喰いの館 盗賊の国)

        • 蜜柑

          何度も来るんですという 郵便局の連絡をうけ そのふたりの自宅をたずねた 大工で働き詰めだったという 穏やかで寡黙なMさんが 気持ち悪くなるから飲まないんだ 今は調子がいい、と 指差したアリセプトに加え 大量の胃薬を処方している医者に 代替薬検討の必要を伝えたところ 毎日きて困る、 専門外だしこないでほしいと 昨日は吐いてしまったよ あの先生は依怙贔屓するね 前はそんなじゃなかったよ そうFさんはいって 袋詰めの蜜柑をくれた 短期記憶と注意力に 困難がでていると思われるの

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        虹色の2時

          霙のあと

          霙がしきりに降ったあと 大きく割けた雲間から  確かに空は降りてきて 虹の麓が現れた 裸足で駆ける光の子 わたしたちは 出来立ての畝に 玉葱の苗を植え 春、その膨らみを待つ 20 Dec

          老人

          爛れるような太陽の午後 肋の浮いた半身を熱風に晒して老人は おそらく私がいる間だけ クーラーをつけてくれたのだろう 二日後に少し硬くなって 自室で発見されたと聞いたとき 面識もない無自覚なマスクが 「残念でした」というのを ただ、黙れとおもう 移ろう季節が肌を掠める夕暮れ 振り向けば薄海原 秋の風 ※黙読のための作品 20aug

          夏至と新月

          海食窟の奥から 猫目石と子蟹が覗き込む 碧緑の渦に少女は消え 群れをなす海蛇の軌跡 それは新月の夜の出来事 億千年続く夏至の日の記憶 ※黙読のための作品 20jun

          夏至と新月

          かえるはかえらない

          かえるはかえらない かえるはかえらない 雨でもかえらない なぜってきらっと小川がひかって なぜってひらっと雲たなびいた かえるはかえらない まだまだかえれない かえるはかえらない でももうかえる ※童謡と朗読のための作品 20may

          かえるはかえらない