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よりみち通信

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毎月1回発行している『よりみち通信』。 紙媒体でも配布していますが、noteでも読めるように1年分をこちらのマガジンにまとめていきます。
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2021年3月の記事一覧

よりみち通信19ブック・カウンセリング「あれから10年」―私たちの秩序はどのように保たれているのか―

元東京オリパラ大会組織委員会会長の女性差蔑視発言に、まだ日本のジェンダー意識はこんなにも低いのかと、改めてがっかりさせられた人も多いことと思います。

しかし、10年前の東日本大震災の折に、すでにそのことは顕在化していたとはっきり描いている小説が、垣谷美雨『女たちの避難所』(新潮文庫)です。

津波にのまれ、帰る家を失った三人の女性たち。身を寄せた避難所では、高齢男性がリーダーとなり、段ボールの仕

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よりみち通信18 ブック・カウンセリング「医療」―日本の医療制度は、優れているか否か―

よりみち通信18 ブック・カウンセリング「医療」―日本の医療制度は、優れているか否か―

新型コロナウィルスが蔓延し、毎日のように「医療がひっ迫している」との報道を見ます。

しかし一方、この森田洋之『医療経済の嘘』(ポプラ新書)によれば、日本の病床数は世界一多いとのこと。え、日本の医療制度って一体どうなっているの?

実は「病床数≠死亡率」というのは、医療の世界では常識らしいのです。病床数が多いとそれだけ費用がかかるので、とにかくベッドを埋めなければいけない。そのためには、本来必要な

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よりみち通信17 ブック・カウンセリング「出版」―本を作るということ―

「本好き」を自認している人は多かれど、その「好き」が指すのは、書かれている内容に偏っていることが多いように思います。

しかし、モノとしての本を手にしてよく眺めてみれば、そこには内容だけでなく、多くの「仕事」が含まれていることに気づきます。

活字、紙、装幀、書体、校閲…。表舞台には出てこないけれど、それがなければ「本」が成立しない仕事の数々。稲泉連『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)は、そ

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