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突然の来訪者

時折、今の自分のしていることが、何になるんだろうと思う時がある。
先の見えないトンネルをもがきながら進んだ先に、何があるんだろうと不安になることがある。

私は、大学を卒業後、関西のとある場所で、4年間働いていた。

その時の先輩が、今日ふらりと私の住む家に訪ねてきた。
来訪の一時間前にいきなり電話があり、

先輩:「あと一時間くらいしたら着くから」

私の家から四時間以上離れた場所から来るとのことである。
そもそも先輩の今の住まいがどこなのかも、現在何をされているのかも知らない状況だったので、大変戸惑った。

会うのは二年振りくらいだろうか。

先輩:「おう!元気にしとったか!!」

挨拶もそこそこに、しばらく関西勤務時代の話で大いに盛り上がった。

先輩:「寿司作りたいから明日3時に起きて市場行ってそのまま勤務行こうぜ」
と言い出したり。
先輩:「ちょっと野戦やってみたいからメンバー揃えといて」
と言い出したり。
先輩:「ポケモンカードってめっちゃ面白そうじゃない?」
と言い出したり。
とにかく好奇心の尽きない先輩で大いに付き合わせてもらった。

飲み会なんてのは、地獄絵図になることが多々あり、トイレの便器に顔を突っ込んだまま寝ている先輩や、裸で蝋燭を垂らされて身悶えする同僚や、ここでは言えない方々などなど、大変豊富な人材が揃っていた。昔話に花が咲くとはまさにこのことである。

私:「今現在はどうしてるんですか?」
と聞くと、関西のとある天理教の教会を「復興してこい」と言われ、一人その教会で暮らしていると言う。
その教会の写真を見せてもらったが、吹けば飛びそうな年季の入ったぼろぼろの平家だった。

私:「…すごいっすね…」と半ば絶句しながら言うと、
先輩:「そうか?みんなそれぞれや。それぞれみんな大変や。俺からしたらみんなそれぞれすごいよ。
毎日毎日暇やぞー。やることないからな!だからこうしてお前に会いに来れたんや!」と豪快に言い放っていた。

縁もゆかりもない土地のぼろぼろの平家をいきなり任されて、いきなり「復興せよ」と言われながら、こんな豪快に笑える先輩が誇らしかった。
今の生活を苦に思っている様子はなく、むしろ楽しんでいるように見えた。

先輩の生活と比べて今の私の生活はマシだとかそんなことを言いたいのではない。

これがあれば豊かになる。
あれがあればいいのに。
あれがあればこんなことができるのに。

そういうことではないんだなと、先輩の屈託のない笑顔を見てそう思えた。
捉え所のない閉塞感を感じていた私の不安は、突然の嵐の様な来訪者を前にどこかに吹き飛んでいた。

苦しみは人それぞれ。
幸せも人それぞれ。
現状の捉え方も人それぞれ。

どのような状況にこれから陥ったとしても、どうしようもない状況に追い込まれたとしても、先輩の様に屈託のない笑顔を振りまける人間でありたいなと感じた今日この頃でした。

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