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ドレスデン①エルベ川の真珠

ベルリン以外で、ドイツ東部の街を目的地として訪れたのは、ドレスデンが初めてだった。
 
ドレスデンの美しさに、私は驚いてしまった。
20年以上も前になるだろうか、西ドイツから東ドイツ地域まで、電車に揺られて乗り継いだ時の事を思い出す。
こんなに美しい街だとは、その時には想像すらできなかった。
 
ドレスデンの繁栄は、アウグスト強王(ザクセンの選帝侯アウグスト1世Friedrich August I. かつ ポーランド王も兼ねたのでアウグスト2世モツヌィでもある。以下アウグスト強王として記載)なしには語れない。
 
アウグスト強王は、兄の死により、急遽ザクセン君主となった。
そして、彼がこの街を、バロック様式の建物が建ち並ぶ美しい街に変身させてしまった。
 
その中でも最も有名なものが、ツヴィンガー宮殿だろう。
アウグスト強王は、政治的にはあまりその手腕が評価されていないそうだが、芸術に詳しく、絵画や陶器を収集したという。
お隣の街、マイセンの歴史も、アウグスト強王なしでは語れない。
マイセンにも、日帰り旅行で訪れたので、後日まとめて記載したい。

聖母教会 Frauenkirche

街の中心に位置する聖母教会は、ドレスデンのシンボルと言えるだろう。
第二次世界大戦で爆撃され、そのまま長い間取り残されていたが、ようやく2005年に修復が完成した。
 
聖母教会は、その間ずっと瓦礫の山となっていたわけだが、残った瓦礫を使い修復がなされたと聞いている。
 
世界一難しいパズル
 
そんな異名を持つ聖母教会は、近くで見ると、所々黒い石を見つける事ができる。
その数、4000個近く。
これが残った瓦礫の一部だったのだろう。
気の遠くなるような作業を経て、この教会が再建されたのだ。

クーポラにも登ってみる。
朝一番でクーポラへ続く階段に並び、誰も人のいないクーポラを独り占めする。
 
正しく言えば、二人占め、だが。

エルベ川の真珠、エルベ川のフィレンツェとも言われるドレスデンの街を見下ろす。
ドレスデンを代表する全ての観光地が、ここから見渡せる。

オペラ座 ゼンパーオーパー Semperoper

 
設計者ゼンパー氏の名を冠するオペラ座。
ここは、ドレスデン市により、聖母教会よりも早く復興が始められたという、ドレスデンにとっては宝とも言える場所だ。

ゼンパー氏銅像 

ツヴィンガー宮殿

ゼンパーオーパーの隣に位置するのが、ツヴィンガー宮殿
アウグスト強王により宮殿として建築が始められ、今はアルテ・マイスター絵画館、陶器美術館などの美術館として主に使用されている。
中庭には噴水があり、大変美しい。
マイスター絵画館については、別記事に纏めたい。

ドレスデン城

数年前に、ここで驚く事件が起きた。
城内の宝物館「緑の円天井」に展示されていたダイヤを始めとする14点が、盗難にあったのだ。
その金額は、ダイヤだけでも日本円で14億円とも。。。

アルトマルクト広場 Altmatkt Platz

クリスマスマーケットが有名なこの広場。
その楽しいイメージとは裏腹に、ドレスデン空襲の際には、犠牲者たちがここに集められ、一斉に荼毘に付された場所でもある。
その数は、把握できているだけで7000人近い数だったという。
 
広場の片隅でそっとその歴史が伝えられているが、賑やかな雰囲気からは想像できない過去を持った広場だ。

君主の行列 Fürstenzug

ドレスデンに関わる重要人物が、約100mの壁にずらりと並んでいる。
その壁は、なんとマイセンの陶器2万枚以上で作られている。
一番左端が、アウグスト強王だ。
 
聖母教会から徒歩数分の場所にあるにも関わらず、ドレスデン爆撃の際にここが壊れなかったのは、奇跡としか言いようがない。

市庁舎

サッカースタジアム見学にも行ってみた。

ドレスデンの食べ物といえば、シュトーレン。
ここドレスデンが、シュトーレン発祥の地と言われている。
コロナの影響で開催が見送られているが、毎年12月の第1土曜日は、シュトーレン祭りが開催される。
3000Kgほどの巨大なシュトーレンが、山車に乗せられて街を周回する様子が、毎年のようにテレビで放送される。

また、ドレスデンで作られるRadebergerビールも、その名を知らない人はいない。
Radebergerグループのドイツ国内ビールマーケットシェアは、15%にも及ぶそうだ。
地ビールが多いドイツで、どこの街に行ってもスーパーで手に入るビールの一つで、万人受けするのだろう。

また、ドレスデンには、美術館と共に、東ドイツの歴史に触れる博物館が多く存在する。
美術館、博物館については、別ブログにて纏めたい。
 
ここは芸術の街であると同時に、ドレスデン、並びにザクセン州は、ミュンヘンと並ぶドイツの半導体製造の中心地でもある。
半導体メーカーと言えば、アメリカ、韓国勢が有名だが、欧州ではフランス、オランダ、ドイツ、ベルギー辺りが中心地だ。
そして、ドイツ国内だけを見ると、ミュンヘンとドレスデンに半導体メーカーが集中している。
インフィニオン・テクノロジーが、その中心的役割であるが、2021年にはRobert Boschもドレスデンに新工場を稼働させた。
 
さて、メルケル首相は物理学を専攻した、所謂リケジョだ。
コロナ対策の初期、通常は大晦日しか行わないテレビ演説を行った。
その際には、メルケル首相のリケジョとしての明確なコロナに対しての見解と、懸念事項が丁寧に説明された。
また同時に、国民に協力と忍耐を求めた。
国民のほとんどは、メルケル首相の演説に心を打たれただろう。
私もライブでこの映像を見ていたが、なぜか涙が出た。
 
そのメルケル首相が、半導体ウェーハーを手にしている写真を、博物館で見つけた。
メルケル首相は、ハンブルグで生まれたが、東ドイツで育ち、ドレスデン近郊の街、ライプツィヒ大学を卒業している。
 
コロナという前代未聞の時代、ドイツがメルケル首相を国のトップとして持つことができたのは、不幸中の幸いではないかと思う。

空港に到着する直前の上空から、Robert Boschの工場が見えた。
他にも、空港近くにはFraunhoferなど大規模な工場がいつくか確認できる。
 
アウグスト強王の栄華が色濃く残る街、ドレスデン。
そして、古い伝統を守りながら、欧州のシリコンバレーを目指すドレスデン。
 
そんなコントラストが面白い街だった。


モーゼル川の真珠バイルシュタイン

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