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火傷

裏切られたすぎた両手で捏ねた生地が
香ばしい匂いで絶望を教えてくれる
よだれを垂らして待ちわびていた
地獄が甘いなんて知らなかったから

冷めた一口分のコーヒーが
この人生のハイライトだとわかったのは
苦しみと虚しさの痛点が違うと気づいた
時計のない曇天の下

翼を伸ばした分だけ
高く飛べると思い上がる僕らなのに
必死に助走をしていて
死にかけのカエルみたい

手を入れればチリチリと焼けるほどの温度で
愛を信じていた
火傷だけがいつまでも残って
何か冷やすものを探しているうちに
自分の心臓が今この世界で一番冷たいのだと知る

祈るみたいに熱を移している
融けた血液が少しずつ目に溢れて
ぜんぶぜんぶ

陽炎になってしまえ

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