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変身

ある日私が目覚めたら
クリームメロンソーダになっていた時の話だ

溶けてくるアイスが私を白く濁らせて不快だった
入れすぎた氷が私をどんどん薄くした
私を欲したはずのあなたは私に汗をかかせたままで
チーズケーキを頬張りながら下らない話で笑ったり
囁くようにして嘘をついたりしている

私はどんどん薄く濁って
夏のため池のような色で泣いているのに
あなたはストローをいじりながら夕焼けを見ている
私はオレンジジュースに生まれてくればよかったんだと
あなたの視線に焦がれている

アイスクリームの最後のひとかけらが
溶け切ったところで私は死んでしまって
あなたが慌てて飲んでいるものは
もう私でもなんでもないというのに。
甘すぎるといってしかめた顔を
私は未だに忘れないでいる

ある日私がクリームメロンソーダになっていた時の話だ

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