【超短小説】年雄、敬語には敬語

あんなおっさんにはなりたくない。

年雄は学生の頃、丁寧な対応をする店員に、タメ口で偉そうに返すおっさんを見てそう思った。

自分もおっさんになり、あの時の下品なおっさんになっていないか心配になる。

1番気をつけているのが、敬語には敬語で返す事。

年齢は関係ない。

コンビニの店員さんは大体が年下になった。

でも、敬語なら敬語で返す。

あの時見た下品なおっさんになりたくないから。

ある日、年雄の目の前でおっさんがタバコを捨てた。

"いい歳こいて・・・"年雄はそう思った。

年雄はおっさんに言った。

「そこ、灰皿じゃないですよ」

「チッ」

おっさんの舌打ち。

下品な奴。

年雄はおっさんのケツを蹴り上げる心の準備が整った。あとはキッカケ。

「拾えよ」

あえて命令口調。

おっさんはモゴモゴしなが、拾った。

年雄は「チッ」と舌打ちした。

拾わなかったら、ケツを蹴り上げる予定だったから。

下品なおっさんを見る度に思う。

お前のせいで、おっさんが嫌われる。

浜本年雄40歳。

同じおっさんからの内部告発。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?