「短歌入れれます」一首評・3/8

きみがパスタを荒野で食べる ひとがパスタを荒野で食べるのはいいことだ /平出奔

初読の感想は「ち ょ っ と 待 て w」です。
名詞の取り合わせと、構文の妙によって〈いいことだ〉の実感が無責任ではあるが、ぐっと引き出された歌だと思います。
まず名詞の取り合わせとしては、ちょっとおしゃれな印象を感じさせる〈パスタ〉と西部劇感ただよう〈荒野〉のぶつかりが、きみが荒野でパスタを食べることの孤独さを弱めているように思います。西部劇感は、パスタが外国の食べ物であることに由来するかもしれません。
そして一字空けで飛躍、歌では「ひとが〜するのはいいことだ」という論理の一般化へとズラされていきます。主体が勝手に納得するロジックの着地点に「そこなんだ??」とつい突っ込まざるをえません。ただ、この歌がただのおかしみだけで落ちないのは、やはり最初に述べた実感の部分が、結句〈だ〉の言い切りにあるような、大真面目に納得している態度から立ち上がることによるように思います。またそれは〈きみが〉からの導入が、「きみがそうしていたからよく思えた」というような把握の構文を前提にしていることも考えられると思いました(ここはちょっと深入りしすぎかもしれません)。
もし「きみは」だとより距離を感じられ、論理の飛躍をやりきるだけのパワーが出なかったでしょう。

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