角川俳句賞 2020 落選作 プランＢ 50句

　　　「明日を信じて」
寧楽と書けば唐天竺や春霞　ハードエッジ
本降りに暗みたりけり春の雪　ハードエッジ
耕して鍬ねつとりと重たけれ　ハードエッジ
ビル裏に配管の巣や燕来る　ハードエッジ
涅槃絵図涙ながらに褪せゆくも　ハードエッジ
仏生会桜餅など良からずや　ハードエッジ
目の玉は二つのままに蝌蚪蛙　ハードエッジ
ざくざくと浅蜊が浜と申さばや　ハードエッジ
土手ゆけば子猫の見ゆるバルコニー　ハードエッジ
生家跡には一面の春の草　ハードエッジ

ほのかなる匂ひの花の首飾り　ハードエッジ
古茶といふ音の響きも古茶らしく　ハードエッジ
電柱が出水の町に灯を点す　ハードエッジ
白玉の熱きを冷ます氷水　ハードエッジ
ポンと抜くビール家ではプシュと開け　ハードエッジ
ゆるゆると起きてシャワーを昼餉前　ハードエッジ
万緑の中に危ない橋かかる　ハードエッジ
秋冬の愁ひはなけれ蝉の声　ハードエッジ
割箸の先に毛虫がくねくねと　ハードエッジ
埒もなく旅の疲れの籐寝椅子　ハードエッジ

吾輩は西日に立てる赤い箱　ハードエッジ
明るさの明日を信じて火取虫　ハードエッジ
遠花火虫けらどもは闇の中　ハードエッジ
切株を囲む走り根露けしや　ハードエッジ
呪文の如くチヨコレイトや露地の秋　ハードエッジ
引かれ行く牛の貫禄秋桜　ハードエッジ
鵙鳴くや泣き出しさうな空の色　ハードエッジ
畦をゆく白き軽トラ雁渡る　ハードエッジ
秋の灯の赤き点滅塔高し　ハードエッジ
団栗を転がしてみる机かな　ハードエッジ

流星や奇跡はある日突然に　ハードエッジ
真つ暗な紅葉の宿に月もなし　ハードエッジ
行く秋や海に広がる河の果て　ハードエッジ
金賞の菊の余生と日向ぼこ　ハードエッジ
膝に来る冬の日差や猫も来て　ハードエッジ
おしやべりの子に耳貸して毛糸編み　ハードエッジ
山一つ氷つてゐたる昼の酒　ハードエッジ
みづからをなきものにする焚火かな　ハードエッジ
無残やな風邪の母から引き離され　ハードエッジ
白紙へと戻る術なき古日記　ハードエッジ

行く年のその足音を聞かんとす　ハードエッジ
友らみな老いて目出度し年賀状　ハードエッジ
初富士の大浴場を響かせて　ハードエッジ
歌留多取る水仕で冷えし手が早し　ハードエッジ
卓の水仙縁側の福寿草　ハードエッジ
結局は初案に戻る炬燵かな　ハードエッジ
木のあはれ草のあはれを雪に消す　ハードエッジ
火事跡の黒き柱や雪女郎　ハードエッジ
梅匂ふ医者の卵の徹夜明け　ハードエッジ
暖かくなればと思ふことばかり　ハードエッジ

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以上です