離婚とテックレジデンスと私

『あなたにできることはこの離婚届に判を押すことだけよ』

紺色のマンションの扉が締まり、前妻の姿が見えなくなり、「ガコン」と前妻は強く鍵を閉めた。

「どうしてこうなってしまったのだろう」

やり直したかった。働く彼女を尊敬していたし、支えたかった。

男の子供がいなかったからだろうか、僕にとても優しかった義両親に申し訳無かった。

 ー ・ ー ・ ー ・ ー

実家から出てきたばかりの僕は、一人暮らしが長く生活力の高い前妻に僕は怒られてばかりだった。

また新しい職場で充実感を感じれていなかった彼女の力に僕はなれなかった。

そしてなによりも日常の過ごし方 ー 個人の時間と共通の時間の割合 ー でズレがあった。

日に日に彼女から僕への愛情が冷めていくのを感じ取れて、辛かった。

 ー ・ ー ・ ー ・ ー

どれくらいの月日、実家で呆然としていただろうか。

世界が重たく、草葉の木漏れ日がスローモーションにみえた初夏だった。

僕はふとあたまの片隅に表参道にあるエンジニア専門のシェアハウスの記事を見たことを思い出した。

一人でアパートで孤独に暮らすよりも、半強制的に誰かと共同生活したいとただただ思った。

思えば私は新卒で入った会社に寮があったのだが、入れなかったのだ。

遅ればせながら、寮生活(?)を体験してみたいと思った。

部屋に空きがあるだろうか。

運営をしている不動産会社にメールを打ってみた。

なんとその表参道のシェアハウスは無くなってしまったが、新しいシェアハウスが恵比寿にOPEN間近だと言う。

 ー ・ ー ・ ー ・ ー

そのシェアハウスは一風変わっていて、運営している不動産会社のシェアハウス担当者と面接が必要だった。

ただでさえローテンションな男なのに、意気消沈していた私はさぞかし暗い男にみえただろう。

しかし面接をしてくれた彼(不動産会社のシェアハウス担当者Wさん)はそんな私の入居を了承してくれた。

 ー ・ ー ・ ー ・ ー

シェアハウスでは、勢いのあるWeb系企業で働き、インフラエンジニアの私に良くインフラの質問を投げかけてくれたかわいい年下のエンジニアの方もいたし、甘いも酸いも経験したベテランエンジニア/デザイナーの方もいた。

彼女ら彼らの価値観やこれまでの人生を知り、自分がいかに狭い世界に囚われていたかを知った。

ありきたりな表現にはなるが、、彼女ら彼らと触れられたのは私の価値観を広げてくれたし、もっと自由に生きていい、生きられるのだと(なぜか)思わせてくれたのだ。

 ー ・ ー ・ ー ・ ー

そんな私はいまは同い年・同じ職業の妻と穏やかに幸せに暮らしている。

これも彼(不動産会社のシェアハウス担当者)が私をテックレジデンスに入居させてくれ、そしてそこで出会った人々が私を癒やして、気づきを与えてくれたからだ。

人生はこんなにも先がわからないのだ。

得たと思っても失う、失ってしまったと思っても、失ったもの以上のことが目の前に現れることがある。

Hold your head high, stick your chest out. You can make it. It gets dark sometimes, but morning comes. Keep hope alive.
(顔をあげて、胸を張って。あなたならできる。時に暗闇が訪れても、朝はやってくる。希望を持ち続けて。)

 ー ・ ー ・ ー ・ ー

私は20代で結婚したかった。

そう思ったのは、、見栄的なものもあるし、子供だって若いお父さんの方がかっこいいだろうし、張り合いがあるだろうなどと思っていたからだ。

何より売れ残ってしまうのが怖かった。
容姿と甲斐性でモテる30代を送れる自信など無かったから。
若さと可能性を買ってくれそうな方にアプローチした。

ただライフスタイルや、人生の歩み方の価値観や、お互いが相手に求めるものが合わなかったのだ。

もし、ここまで読んでくれた方がいて、あなたが結婚を考えているならば、一つ私からお伝えしたいこととして。

互いの価値観が大きくズレておらず、提供し合えるものに満足できたなら。

結婚は本当に素晴らしいものだと思います、そのことを最後にお伝えてしておく。

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