見出し画像

はじめまして、めたりっくだいぶつです。

僕は生まれる。生まれたからって名前なんてないし、どこへ向かうかもわからない。薄暗い工場で僕は生まれたんだ。

僕は揺られる。人から人伝いに。店から店へ。僕はどこへ行くんだろうか?でもどこだっていい。明日は明日の風が吹き、僕はどこでだって生きて行ける気がするから。

僕は置かれていた。その他大勢と一緒に。僕は少しいびつなところがあり、どうやら周りとは少し違うようだ。そんな僕をわかってくれそうな人はそうそういないのだろう。それでもただひたすら待つ。それが僕の運命なんだ。



僕は選ばれた。たった一人の人に。今まで誰も僕のことを気にしたことなどなかったのに。ゲラゲラと笑いながら楽しそうにほほえむ人。そんな人の元へ僕は行くことになったらしい。

僕は海を渡る。僕よりも青い海。こんな景色見たことがない。僕はこれからどこへ行くんだろう?

僕を選んでくれた人は、僕のことをたくさん人に見せようとするんだ。そんなこと今までなかったからくすぐったい気分。みんな僕を見て笑顔になる。僕のことを気にしてくれる。なんでだろう。今までそんなことなかったのに。僕はどうやらたくさんの人に見られて喜んでもらっているらしい。



僕はまた違う人に選ばれた。あの最初に選んでくれた人とはさよならだ。僕を遠くへ、僕をたくさんの人の前に連れて出してくれた人。でもね、次の人も僕のことを楽しんでくれてるんだ。僕を選ぶ人はなんでこんなに僕を見て笑顔になるのだろう。

今や僕はたくさんの人に知られるようになった。なぜだかまったくよくわからない。僕はただの青い大仏の置物で、左脇は形成ミスでくり抜かれていなくて、クリスタルのように見えてその実プラスチックなんだ。ちっとも特別じゃない。なのにみんなそんな僕を見て笑顔になってくれる。いつのまにか名前もあったどうやら「メタリック大仏」というらしい。

どこへ行ってもぼくは全てを受け入れるつもりで置かれていた。だけどこんな風にたくさんの人に喜んでもらえるなんて。この喜びをたくさんの人に伝えたい。僕を見てたくさんの人に笑顔になってほしい。だから僕は今日も行く。僕を選んだ人と旅に出る。これからもたくさんの人との出会うことを楽しみにして。



#前田デザイン室
#僕らのメタリック大仏


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?