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蜘蛛の糸


銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。
芥川龍之介著/「蜘蛛の糸」

室内にいて蜘蛛と出くわす。捕まえて外に逃す。という一連の動作がここ最近、つづいた。

室内にいる者にとって蜘蛛は、いない方が望ましい。ところが蜘蛛からすれば、人間が後から建物を建てて何を言ってるんだ。と思っているかもしれない。もちろん、蜘蛛と会話する術はないから想像である。

ここに巣を作ってもキミの待っている獲物は、おそらくやって来ないだろうと、安易に再び想像する。しかし蜘蛛は、室内か室外かその差はよくわかっていない。いやもしかしたら、自他わけずに歩いているのかもしれない。だとしたら、一枚上手だ。

環境問題に関して昨今、考える機会がふえた。そのような折に執行草舟著「根源へ」に環境問題と生命倫理問題をわけて考えなくてはならない、とようなことが書いてあり驚いた(151頁以降参照)。普段、何気なく使っていた言葉にメスが入った瞬間だった。

より良くを求めることで文明は栄えた。その恩恵を受けて今がある。だから、文明を頭ごなしに否定することは出来ない。となると、何に注目すべきなのだろうか。

銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。
芥川龍之介著/「蜘蛛の糸」

蜘蛛の糸は垂れてくるのか。登り切れるのか。