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もう粉をこねるしかない2 〜手打ちうどん奮戦記・遥かなる道程〜

物事は一見単純明快に思えるものこそ難しい。そして人はその単純明快さゆえに侮り、誤り、道に迷う。今回、手打ちうどんに向き合ってそんな教訓を授かった。

まあ簡単に言うと、あれー手打ちうどんって思ったより難しいなあー、ってなった話です。正直めっちゃナメてた。

個人的にうどんが大好きで、とくにコシの強いさぬきうどんをこよなく愛している。うどん・そば・ラーメン・そうめん・パスタ 、いろんな麺のなかでいちばん好きだと断言できる。うどん県、香川にも何度か足を運び、うどんのはしごツアーをして回ったことがある(さぬきうどん偏愛についてはこの記事をご参照あれ)。

しだいに暑くなってきて、各地で今年初の真夏日なんてニュースを聞くようになり、ようしいよいよ一丁、この俺様が手打ちうどんでも打ってやるか、と決意した。

生地を寝かせる時間を考慮すると、お昼に食べるには朝のうちに打っておく必要がある。妻は私に手書きのレシピを渡し「朝やっといてくれてもええんやで」と言った。だいたい毎晩先に寝ちゃう私は翌朝先に起きる。そんなら打っとくわ。となった。

究極のシンプル、小麦粉・塩・水の三重奏。

手打ちうどん03

材料は上述のとおり、小麦粉・塩・水というこれ以上はないほどのシンプルさ。妻が渡してくれたレシピとは、関西ローカルの深夜放送で紹介されていたのを書き留めてくれていたもの。それを参考に進めることに。

<手打ちうどん 4人前>
中力粉・・・500g
塩・・・30g
水・・・220ml

手打ちうどん04

塩・中力粉を混ぜたところに少しずつ水をさしながら箸で混ぜてゆく(今回こんな感じでずっと生成色の画像が続きます)。

いきなりのっけから「あれこんなに水少なくていいの?」というパサつき感にうろたえつつ、大体まとまったら手でグイグイこねる。なんでも、加水率があまり高いとよくないらしく、生地の40%程度に留めるのがいいらしいので、これでいいんだろう。たぶん。

案外、力が要る。NHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」の菊練りの様子を思い出しつつこねてゆく。

手打ちうどん05

孤独の雨に負けるもんか。

手打ちなのに、足で踏む。うどんは全身運動。

手打ちうどん06

ある程度まとまり感が出たら密閉袋に入れ、タオルで包んで何度も踏む。ご存じのとおり、踏む=体重をかけることでグルテンが形成されて、強いコシが生まれるわけですね。うどん県には人間の足踏み工程を替わってくれる機械があるほど、手打ちうどんに欠かせない工程。

手打ちうどん07

たださー、これ、いつまで踏んでいればいいのかなー。妻がテレビを見て書き起こしてくれたメモにはそのへんが書かれていない。あいにく妻はまだお布団の中なので聞くわけにもいかない。やや不安になりつつ、まあこんなもんかと10分ぐらいでやめる。ここから3時間寝かせる、とのこと。

おいしいうどんになあれ。待つこと3時間。

妻も起きてきて、太陽は中点高く上り、いよいようどんを伸ばして切って、茹でてゆく段階に移行。手が粉だらけになってカメラを持てないことが事前に想像できる程度には歳を重ねてきたので、ここで妻に無理やりバトンタッチ。

手打ちうどん08

妻の製菓・パン用の麺棒の長さが限界。なかなか均等の厚みに伸ばせず苦戦する。苦戦しているのは妻だけど。

手打ちうどん16

包丁も包丁で長さが足りないけど、なんとか騙しだまし切ってゆく。

手打ちうどん10

やっぱり専用の包丁じゃないからか、切ったつもりでもうまく切れていない、なんてことが続出。グッと重みをかけて切るのではなく、ある程度(通常の野菜や肉を切るように)前後に刃を動かしたほうがいいみたい。

手打ちうどん11

けれどもさすがは手先の器用な我が奥さん。しだいに慣れてきて、いい感じに角ばった麺ができてきた!

これは期待が持てるんじゃないですか? 理想は、さぬきうどんでも西讃のほうのゴワゴワしたコシの男麺。そうなればいいなあ。

手打ちうどん13

寸胴で15分茹で、ザルに空けてゴシゴシ水洗い。

手打ちうどん14

冷水で締めることでコシを際立たせ、表面のヌメリを洗い落とす。

できあがり! 待望の手打ちうどん。

手打ちうどん02

うーん、じっくり見れば(いやじっくりじゃなくてパッと見るだけでも)不揃いでグネグネした面構え、ならぬ麺構え。色ツヤはすごくいいんだけどなあ。プリッとしたコシを期待させるけどなあ。

まずは今回の功労者、奥さんが一口すする。とほぼ同時に満面の笑顔。でも味わいに感動してこぼれる笑みというより、失笑に近いニュアンス。

「え、何その笑顔の意味は?」

「いや、難しいもんやなーと思って」

手打ちうどん15

続いてオレも一口。やっぱり笑ってしまう。

何これ?

コシは抜群にいい。過去にすすったことのあるうどんでも一二を争う強麺。味も悪くない。ちょうどいい塩加減。でも麺がぷちっぷちに切れていわゆる短麺になっており、景気よくすすることができない。結果、今おれマウスピース噛んでるの? みたいな瞬間がちらほらよぎる。

ちょっとWEBで調べると、どうやらまだ練りが足りない(足踏みの時間が短すぎた)ことが原因らしい。そうなのかあ。

でもいろんなところに書いてる情報がまちまちすぎて、今ひとつ核心に迫れない。どんなことでもいくつか前例を調べると「ふむふむつまり全体としてはこういうことね」という輪郭がおぼろげに見えてくるもんだけど、こと手打ちうどんに関してはそれがまだあまりに朦朧としてよく見えない。

敵はどうやら相当手強い。やはり物事は一見シンプルに思えるものこそ、実は難しいと痛感。

「何これー」そう叫びながら、ふたりで笑い合って食べました。

面白かったから、まあいいか。次回リベンジを強く誓う夫婦なのであった。

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