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いつもの冷しゃぶに飽きたら、雲白肉。

きょうはユンパイロー(雲白肉)にしようと思う、と告げると妻の表情があきらかにこわばった。妻は未知なる食に対する警戒心がとても強い。対する自分はわりと何でも興味を持って食べ漁るほうだ。いつもこちらの思いつきで見よう見まね料理を食べさせられているので、妻としてはそういう態度になるのも無理はない。

あわてて僕は言い直した。「中華風ピリ辛冷しゃぶにするよー」

妻はホッとしたようで「最初からそう言ってくれればいいのに」と口をとんがらせた。四川料理の涼拌菜(冷菜)のひとつ、雲白肉は以前にも作ったことがあるはずだが、彼女はすっかり忘れているらしかった。

たしかにユンパイローという料理名はあまり知名度がないから、いきなりだとうろたえるかもなあ。なんとなく語感がジム・ジャームッシュ監督の映画のタイトルみたいで好きだけど。

いつもの冷しゃぶとほぼ同じぐらいの準備・調理行程で作れるので、ぜひお試しを。

この記事は3年前の7月5日に公開したものです。
最近写真をキレイにするワザを勉強中なので、画像の一部を新たに修正したものに差し替えて再度アップします。当時「写真うつりがちょっとなー」と思っていたのです。
完全なる自己満足ですが、未読の方はもちろん、一度ご覧になった方もあらためて目を通していただけると幸いです。

2023.06.08追記

まずは中華風甘酢だれを調合。

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何はなくともたれを調合。ここで皆さんに覚えていただきたいのが、醤油ベースの甘酢だれの基本の比率。いいですか、メモ取ってください、ここテストに出ますよ。

<甘酢だれの基本の比率> 醤油・酢・・・大さじ1 砂糖・・・小さじ1

簡単でしょ。甘酢だれの要素を分解すると、塩味+酸味+甘味。だから醤油と酢と砂糖が必要。このうち、醤油と酢は同率でOK。砂糖だけ少なめ。そういう発想です。お好みでここから調整していってください。

これを雲白肉のたれにするには、以下を追加。

<雲白肉のたれ> 上記の甘酢醤油に追加して
豆板醤・・・ひとさじ
おろし生姜・ニンニク・・・ひとかけ弱
ごま油・・・ひと回し
あと炒りごまとか花椒とか五香粉とかはお好みで。

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妻が作った自家製ニラの醤油漬けが残っていたのでこれも入れた。最終的には炒りごまも入れた。要するにわりとフリーハンドでいいってことです。

豚肉は沸騰させずにゆで、冷水に落とす。

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どのぐらい化学的に正しいのかわからないけど、うちでは冷しゃぶをゆでるお湯は沸騰させません。そのほうが肉が急速に縮まないのでやわらかく、しっとり仕上がる気がする。

臭みを抜くため白ネギの上半分、生姜一片、紹興酒少々を加えたお湯で、弱火を保ってしゃぶしゃぶ。

ちなみに回鍋肉同様、本場四川では薄切り肉から作る場合は少なく、塊肉を茹でてからスライスすることの方が多い(あるいはそのほうが伝統的)ようです。こういう薄切り肉で作るのは台湾や日本ぐらいだとか。

そもそも「しゃぶしゃぶ」なる料理が日本で広まったのが戦後のこと。それがその後外食文化から家庭料理にまで普及したのはひとえに精肉店の加工技術が進歩したから。もともと世界中でそんなに薄切り肉は売っていないらしいです。

そうやって文化は周縁に伝播するにつれ変化していくものなんですねー。


大きい画像が差し替え後のものです。

火が通ったら冷水に放って余分な油を落とす。この豚肉がひらひら漂っているのを眺めるのが好き。

キュウリはスライサーで手っ取り早く。

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キュウリは長い場合縦半分に切って、スライサーで薄くしちゃいます。なぜなのかはわからないけど、雲白肉のそれっぽさを支えているのはこのキュウリのかたちなのです。


おそろしくヘルシーな見た目。

こうやってお花のようにキュウリを並べたうえに豚肉をトッピング。あるいは逆で、豚バラが均一のシルエットをしている場合にはそちらを周りに敷き詰め、キュウリを中心に、ということもあるみたいです。

なんか、ゆでた豚とスライスしたキュウリ、ってだけなのに、にわかに丁寧な仕事をした感が出る。

タレを回しかけてできあがり。

紫陽花みたい?

できたー。ほんとうは前菜ぐらいの扱いなのかもしれないけど、今夜、我が家では堂々の主菜。

うんまっ。

さっぱり甘酢だれとキュウリの青い香りで、食欲が減退しがちなこれからの季節にもバクバクいける味わい。見た目がいささか突飛なわりには、昔からなじみのあるような、万人受けする風味だと思う。パンチが足りない、っていう人はラー油を足すか、ごま油をもうひと回しかけてもいいかも。

雲のように白い肉、雲白肉。ユンパイロー。あいにくの空模様で辛い思いをされている地域があちこちにあるけど、少しでも明るい気分で食卓を囲めればなあと思います。心からお見舞い申し上げます。



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