自宅でひと手間レシピ16 発明!? うどんスープで簡単カクテキ&オイキムチ
お米の水加減が難しい季節になってきましたね。
きょうはごはんの友として誉高いキムチのお話。コリッコリの大根キムチ、カクテキとキュウリのキムチ、オイキムチを「ひと手間かけつつ、チートなレシピ」で作ります。
妻が定期的に実家に顔を出すと、義母がいつも食べきれないほどの野菜を持たせてくれる。すごく助かっているしありがたいんだけど、お米の炊き加減同様、野菜をみずみずしいまま長持ちさせるのが大変な季節になってきた。先日もいろいろとお裾分けしてくれたので、どれから食べていけば傷ませずに効率よく献立にできるか、という贅沢な悩みを抱えていた。
そんな折にスーパーの催事でキムチ屋さんが出店していたのを見て、ふと気づいた。もはや天啓に近いひらめきであった(いやそこまでじゃないか)。
「キムチを漬けたらいいのか!」
じっくりキッチンに向かう時間がある今、挑戦したい手間ヒマ料理といえば塊肉と双璧をなす野菜大量消費メニューがあるじゃないか。そう、漬け物である。脳裏に生野コリアンタウンのにぎわいと色とりどりのキムチのオンパレードが思い浮かんだ。今こそ自家製キムチと向き合うときだ。
何はなくとも、ヤンニョム。
キムチを漬けるにあたって何よりも欠かせないものがヤンニョムだということはかつてキムチ作りを取材したときから知っていた。薬念と書いて、ヤンニョム。唐辛子のほかさまざまなものを組み合わせた朝鮮※の合わせ調味料である。インド料理でいうところのガラムマサラみたいなもので、内容的にこれといった決まりごとはなく、各家庭ごとにこだわりの味がある。
ちなみにヤンニョムハダ、というと「味付けする」というような意味で、本場では「ヤンニョムをうまく使っていますね」=「料理が上手ですね」みたいな成句になっているほど彼らの生活に根ざした、日々の調理に欠かせない調味料らしい。
幸いスーパーに出店していたキムチ屋さんでは生ヤンニョムも売っていた。店頭でご主人と思しきおっちゃんにヤンニョムを使ったキムチの作り方を訊くと、だいたいこういうことだった。
「コチュジャン(朝鮮の味噌)とヤンニョムを1:1の割合で漬けたらええだけ。白菜は塩水に半日漬けてから絞って、白い茎のところだけ塗るねん」
つまりは塩分であらかじめ野菜をしんなりさせ、水分をある程度抜いてから漬け込むといい、ということらしい。コチュジャンは常備しているのがまだ残っているはずだから、ヤンニョムさえ買えばいいということか。
じゃあ他の野菜でもできる? 大根やキュウリは? と訊くと、少し間を置いておっちゃんはこうアドバイスをくれた。
「うどんだしで3時間ぐらい漬けてからやったらええねん」
うどんだし?
「そうそう、市販のよくあるやつ」
ピンとこないまま、へー、と言いながら家に帰って少し頭をひねった。大根というのは煮物でもそうだけど、いかに芯まで味を入れるか、というところが意外に難しい。塩水でなく、うどんだしで漬け込む? めんつゆに漬ければいいということか? でもなぜただの塩水ではなくめんつゆを?
そこでハタと思い当たった。
「うどんスープの素か!」
ヒガシマルうどんスープで下味を。
きっつーね、天ぷーら♫ のCMソングでおなじみ、煮物などにも幅広く使える便利な粉末「ヒガシマルうどんスープ」。だいたいのご家庭に常備されていますね。これを生野菜にまぶしてもみ込み、3時間〜一晩程度漬け込むとカンタン浅漬けができることは公式HPでも紹介されている。
要は浸透圧を利用して大根の水気を抜き、そこに味を入れることができればいいのだ。同じ要領で角切り大根(1.5〜2cm角)も浅漬け状態にしてからヤンニョムとコチュジャンに漬ければいいのではないか。まずは大根から。
ヒガシマルさんのアドバイスによると、野菜300gに対してうどんスープ一袋がちょうどいい比率らしい。ちょっともみ込んだだけでさっそく水分がにじみ出てきた。いいぞ。
3時間後(忘れてて実際は4時間後ぐらい)、様子を見てみると……。
おおー、いい感じ。かなり大根の水分が出て締まってきている。試しに一個かじってみると、じゅうぶん中まで味がしみて、このまま一品として出せそうなくらい。
水気をサッと取り、コチュジャンとヤンニョムをまぶしてもみ込む(見えやすいようにボウルに空けたけど、実際は密閉パックに入れて行いました)。野菜300gだと各大さじ1も要らないぐらいかなあ。
ようし、ここから一晩冷蔵庫でお待ち申し上げるぞよ。
一晩寝かせれば、カクテキのできあがり!
一口味見。……むむむこりゃイケる!
コリッとした小気味よい歯応えとほどよく残ったみずみずしさ。プロの作ったヤンニョムならではのコクのある辛味。これからの季節に食の進む副菜になること間違いなし。うどんスープのおかげでしっかりと大根に塩味や旨味がしみ込んでいるけど、カツオ昆布の香りで和風になっちゃうということはない。本場のキムチもアミエビの塩辛など魚介ベースの発酵系のうまみを下味に入れているので、むしろ正しい方向性なんじゃないかと思う。
ヤンニョムにもよると思うけど、わりとピリッと本気の辛味なので、甘みがほしいという人はお好みで砂糖やハチミツを入れてもいいかも。
キュウリも同様に。簡単オイキムチのできあがり。
こちらも一晩寝かせるだけで、キュウリの芯まで味がしみて、最高のごはんのおともに昇格。いつも一本だけ余ったキュウリをやむなくちくわに刺したりマヨネーズかけたり、もろみで食べたりしてたけど、こうすれば立派な一品。
買って使ったことがないので自信はないけど、きっと桃屋のキムチの素みたいな市販のタレを使う場合もこの「うどんスープで下味&脱水」をしたらより深みのある味わいに仕上がるんじゃないかなあ。
うおー、これは楽しいぞ。おかずがもう一品ほしいとき、野菜をたくさん消費しなくてはいけないときにかなり重宝しそう。
楽しみがまたひとつ増えたなー。
※朝鮮という表記に身をこわばらせる方がいらっしゃるかもしれませんが、どちらかの国家ではなくひとつの民族・文化としての朝鮮という意味です。それを安易に「韓国」と置き換えるのは彼らの民族・文化をすべて言い表してはおらずかえって不適切だと思ったので、あえてリスペクトを込めて「朝鮮」と書いています。ご理解ください。
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