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キノコとカリカリ豚の〝全員プレー〟和風パスタ。

夏野菜たちにきちんと別れを告げることもないまま、気がつけば季節が過ぎ去っていた。

風は急に涼しく快適になり、ふとした瞬間に「あれ今季節ってどうなってるっけ」とカレンダーの感覚を失う。そして慌てて「そっかそっかこれから秋か」と思い直したりする。思えば、灼けるような暑さや凍てつく寒さに身体が抗っているうちはそんな感覚に陥ることはない。温度というストレスがするんと抜け落ちて、皮膚が戸惑っているんだろうなと思う。

ようやく仕事がまた一段落し、スーパーや市場に足を運ぶことができるようになったけれど、しばらく見ないうちにそこにいる野菜たちの顔ぶれがだいぶ入れ替わってしまっていることに気づいた。もうトウモロコシはいないし、トマトもキュウリも今や売り場の一大勢力ではない。

なんかちょっとさみしいな、と少し感傷的にもなったりしたけど、一方で正直そろそろ夏野菜のメニューにいささか食傷気味でもあったのはたしかだ。暦と食のサイクルはよくできたもので、さみしさよりもまたやってくる秋の食材を歓迎する気持ちのほうが勝って、気がつけばシメジとエノキをレジカゴに放り込んでいた。

久しぶりに予定の詰まっていない雨の週末。何の記念日でもない、ただの季節の変わりめの名もなき一日。名もなき家庭料理の定番、キノコの和風パスタを作ることにした。

スター選手不在の、全員プレー料理。

キノコの和風パスタ05

うまく言い表せないけど、キノコの和風パスタほどとらえどころの難しい料理もない気がする。いや、あるにはあるけど、何というか人で言えば似顔絵を描きにくいというか、住所番地をはっきり覚えられないというか、ここをこうやったらど真ん中の味ですよ、という勘どころがつかみにくいと思うのだ。そういう料理ってありませんか?

思うにこの料理、絶妙なチームプレーで成り立っていて、ひときわ目立って風味を決定する要員がいないせいだと思う。なんか全体に色彩が淡いというか、ビビッドさに欠ける気がする。

裏を返せばバランスこそが味の決め手なのだ。

きょう使った食材は二人前でだいたいこのとおり。

豚切り落とし・・・食べたいだけ
エノキ・・・3分の2〜1パック
シメジ・・・1パック
青ネギ・・・2〜3本
ピーマン(だと思う、青とうがらし)・・・2個
シイタケ・・・2枚(今回は冷凍のストック)

濃縮めんつゆ・・・2回し
塩・・・小さじ1強(様子を見て増やしてください)
コショウ・・・ちょっとだけ
醤油・・・ひとたらし

豚はカリッと、シメジはほんのり焼き色を。

キノコの和風パスタ06

脂身のおいしい和豚の切り落としが安く買えたので使う。分量は計ってないけど、こういうのは目分量でも大丈夫。というか、考え方としては一人前にどのぐらい乗ってたら嬉しいか考えて、その分量の人数倍用意する。当たり前のことだけどこうやって量を調整する習慣って、意外とみんな持ってなくて、せっせとレシピを見てマネてたりするんだけど、実際にこの後自分が食べることを想像すれば量は自ずと決まると思うのよね。

キノコの和風パスタ07

例によってパスタソースは、寸胴でパスタを茹でている間に隣の中華鍋で作っちゃう、が正義。制限時間はアルデンテの1分前が目安、今回は6分間。終始強火でGO。一口大に切り軽く塩コショウした豚肉を入れ、焼き色がつくまであまり返さずに焼いたらシメジを投入して、こちらもほんのり焼き色をつける。豚肉のクリスピー感は後々食感のアクセントになるし、この後味が入りやすくなる。シメジもほんのり焦げていたほうが香りが立ちます。

パスタのゆで汁で煮込む。

キノコの和風パスタ08

エノキと細切りピーマンを加え、お玉2杯分のパスタのゆで汁、塩小さじ1強(アイスクリームの付属のプラスチックスプーンで山盛り2杯ぐらい)、めんつゆ2周でグツグツ煮込む。ここでバターを加えると一層コクが出るけど、うちの奥さんはバターを使う料理が(一部例外を除き)あまり好きじゃないので省略。

さあ茹で上がりの1分前。パスタ投入。

キノコの和風パスタ09

アルデンテの一歩手前、アルアルデンテ(そんなんある?)ぐらいのタイミングでパスタを中華鍋に移し、お玉もう1杯ぐらいゆで汁を加えて煮汁を吸わせながら茹で上げる。このとき味見して、醤油ひとたらし、塩少々で味を調えればできあがり。

あ、そうそうパスタの後に青ネギも入れて、残り1分でクタッとさせてね。

できたー!

キノコの和風パスタ02

刻み海苔を天盛りにしてできあがり! 日本生まれの和風パスタ(※)。

キノコの和風パスタ03

うん、バランスよくまとまった! 音楽でいうと中音域ばっかり、テンポも終始モデラート、みたいな料理だから、うまく作らないとのべんだらりんとしがち。今回は豚のカリカリが効いたのか、食材の投入順と火入れの時間がよかったのか、全体にマイルドな中にも各食材の味の輪郭がはっきり感じ取れてよかったと思う。

これ逆にバター決めちゃうとバターに持ってかれてもっと大雑把な料理になってるな、というのが偽らざる感想。主役不在の全員プレー、なはずなのにバターが悪目立ちしちゃうんだろな。

妻曰く「期待してたとおりの味やった。キミが久しぶりに作るとはりきって空回りしちゃうときあるからな」だそうです。

※ちなみに和風パスタ発祥と言われるのは1953(昭和28)年、渋谷・道玄坂で開業した「壁の穴」。何を隠そう、子どもも大好き「たらこスパゲティ」はこの店の偉大なる発明です。

それにしても我ながら、食卓が単調になる季節、夏をよくぞ乗りきった。秋が深まれば、作りたい料理がいっぱい。また一定期間で目が三角になるほど仕事が積み重なるのは目に見えているけど、移ろいやすいこの季節、せいいっぱいおいしいものを食べて満喫したいなあ。

まずはアレか、新米か! うわー楽しみー!!



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